9-1 一時休戦
①
前回までのあらすじ。
封印されていた死神がなんと魔王さまの補佐官トウドウさんのお父さんだと判明。そして私はそのトウドウさんのお母さんの生まれ変わりだそうだ。はっきり言っていまいちよくわからない状態である、以上。
「で、どういうことなんですか?」
「あはは・・そうなるよね」
苦笑する魔王さま。そりゃそうなるよ。いきなり魔界の人の生まれ変わりだとか言われて納得できる人の方が少ないと思う。
「まあ簡単に言うと、トウドウの母親が亡くなって転生したのがのばなちゃんだったってことだね。でも魂の色以外は普通の人間と変わりないから安心していいよ」
「いやどこも安心できる要素がないよ!魔王さまのバカ!」
「がーん」
八つ当たりの対象になった魔王さまはお約束の懺悔ポーズでうなだれてしまった。やはり魔王さまをいじるのは楽しい。が、今はそれどころではない。
「生まれ変わりゆうたかてただ魂の色がオフクロと一緒なだけや。能力もないし、容姿もまったく似てへん。まあ容姿は似た方が幸せやったやろな、はっ」
「鼻で笑われたよ!!」
顔面が見えているだけにバカにしているのが丸わかりでむかつくことこの上ない。どんだけ美人だったのだろうか、いやトウドウさんの顔をみれば整っていたのは間違いないだろうけど。
「ふん、今の自分に満足しているからいいんですよ!・・・・それより疑問なんですけど、トウドウさんのお母さんは悪魔だったんですか?」
自分で聞いといてなんだけど、悪魔の生まれ変わりなんて言われたら少しぞっとしてしまう。
「悪魔ゆーか、夢魔やサキュバスゆうたらわかるんちゃうか?」
「サキュバス?」
「知らんのかい。嬢ちゃん少しは勉強した方がええで」
「う、うるさいですよ。別に悪魔の名前なんて知らなくても生きていけますもん」
私がものすごく無知のように言うが、普通の人間は悪魔の名前なんていちいち覚えてないと思う。
とりあえず簡単に教えてもらうと精気を吸い取る悪魔のことらしいよ。怖いわー。
リアルに怖すぎて顔をひきつらせていると真顔のトウドウさんに「嬢ちゃんは絶対に襲われたりせえへんから安心しい」と頼もしいお言葉を頂いた。トウドウさんにしてはものすごく珍しいなと感動していると可哀想な者を見る目で「悪魔にも選ぶ権利があんねん」と続いた。・・・・殺意が湧いた瞬間でした。
「今ものすごく張り手をかましたくなりました」
「なんやゆうたか?」
「いえなんでもないです」
殺意は湧いたが逆にやられそうなため、速攻で答えるとこれ以上トウドウさんのいじめに合わないように話を無理矢理終わらせることにした。
「しょうがないので私がトウドウさんのお母さんの生まれ変わりだというのは認めましょう。話も進まないし。で、結局のところ私はどうすればいいんですか?前王さまはペン子の中だし、私帰ってもいいの?」
「いや帰らないで!?封印の儀式もまだ終わってないから!」
「えーだってもうやることもないよ?ペン子(仮)がこちらのイケメン死神さんを封印し直したらそれでいいんじゃないの?」
それよりも先ほどまで若干敵対関係にあったはずなのにこの死神さん、逃げるどころか馴染んじゃってるんですけど。魔王さまと一緒になってうんうん唸ってるんですけど。
「あの死神さん馴染んでますよ?」
「せやな。基本アホなんやろ」
お父さん相手にひどい言いぐさだ。まあ私も同意見だが。
言われている本人は私たちが見つめているのに気付くと、淡い笑みを浮かべてこちらにやってきた。
「どうしたのだ?」
「えーと・・・・死神さんはここにいると封印されてしまうんじゃないですか?」
「ふむ、そうだな」
焦る様子もなく大きく頷いて答えられた。え?
「そうだなって・・・え?いいんですか?」
「自分が悪いということは理解しているからな。先ほどはプレジルの気配を感じて抜け出してしまったが、通常であれば大人しく儀式が終わるのを待っている」
つまり私の中のプレジルさんの気配を感じとってフィーバーしてしまったと。いつもならさっさと終わっている儀式だそうで・・・・。
「ま、マジでか」
「運が悪かったな嬢ちゃん」
一気に脱力してしまいその場にへたり込んでしまった。私の苦労っていったい・・・。