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6-2 前王は美形がお好き

 ②


「お久しぶりです。前王」

自由が利かなくなった私の体は、丁寧にお辞儀をして挨拶をする魔王さまを見ると嬉しそうに飛びついた。

『あらあスィエロじゃないの!いや~ん良い男に育っちゃって~!昔はまだ子供だったクセにっ。は~あ、あたしがもう少し長生きしてたら絶対にゲットしてたのにぃ!!』

「あ、あははー。ありがとうございます前王」

『前王なんて堅苦しい呼び方はやめて頂戴!ファーレよファーレ。貴方だけ特別にあたしの名を呼ぶ権利を与えてあげるわ』

前魔王さまと思われる女性は(私の)体をこれでもかというほどに魔王さまに密着させ、口が当たりそうな距離にまで顔を寄せていた。

(にゃーーー!?何しているの私の体っ。って声が出ない!?)

『あらそれはそうよ。今はあたしが支配している体だもの』

(ま、マジか・・・)

さりげなく会話が成立していたことに驚く暇もない。そして前王さまはふと私の体を眺めペタペタと触った後、驚愕の顔でトウドウさんに詰め寄った。

『ちょっとぉ!この貧相な体の生贄どういうことなの!?あたしは綺麗でプロポーション抜群の女かイケメンの男しか認めないって昔言ったわよね?』

「はあ、陛下が選んだ女ですんで自分にはどうしようも・・・」

面倒くさそうにトウドウさんが答えた。その答え方が癪に触ったのか前王さまはさらに詰め寄って行った。

『あんたのその態度どうにかならないわけ!?昔っからその態度じゃない!後、いい加減にその包帯取りなさいよっ』

「お断りしますわ」

『はあっ!?あんた魔王の言うことが聞けないっての!?』

「今は魔王やのうて前がつく、魔王ですよ。前王様」

嫌味たらしくそう返したトウドウさん。顔は見えないが確実にドヤ顔をしているだろう。

その態度に目に見えて苛立ちを見せる前王に恐怖を抱いたのか、魔王さまが一歩ずつ後ろに下がっている気がする。

「せやから文句があるなら陛下に言って下さい」

いきなり矛先が魔王さまに向いたため、後ろに後退していた体がわかりやすくびくついた。

『も~・・スィエロなら仕方ないわね。でもこんな貧相な体に長くいるなんて耐えられないわ、早く片付けましょう』

(この人ものすごく失礼だよ!!)

『うるさいわね!このショボイ体に傷をつけられたくなかったら黙ってなさい!』

(ショボイって・・・)

「ファーレ様?どうかされましたか?」

『うふふん!何でもないわっ』

二重人格のような性格の前王さまは何事もなかったかのように魔王さまに腕を絡ませてパーティ会場に歩き出した。

どうしよう、この人ものすごく面倒臭い。


先ほどまで煌びやかだったパーティ会場は、それと打って変わって薄暗くなっていた。客人である悪魔たちの姿も見当たらない。

(もういなくなってる。パーティとかってする必要あったのかな)

『アイツを封印した日がちょうどパーティの日だったのよね~。あたしもパーティを楽しみにしていたのに少しも楽しめなかったし!せっかくいい男を選びたい放題だったのにっ』

「あはは・・・・ホロ準備はいいかい?」

『はい。魔法陣も従者の方々も配置についております』

「ありがとう、ではファーレ様」

会場の中央まで二人で寄り添っていたが、位置についたのか魔王さまはそこから一礼して一歩後ろに下がった。

『ええわかっているわ。そういえばあたしの部下たちは挨拶もせずに出て行ったわけ?』

「あはは、降臨されてすぐに魔法陣の元に向かうようお願いしましたので・・」

『まったく。帰ってきたらお仕置きが必要ね』

腰に手を当て、顔は不機嫌そのもので突っ立ている。

(さすがに魔王さまも前王さまには敬語で話すんだなあ。魔王さまよりも偉いってこと?)

『当たり前でしょう。いくら可愛いスィエロだからといってあたしにため口で話すなんてありえないわ。それよりあんたも敬語を使いなさいよ、後さりげなく話しかけてこないでうっとおしいから』

相変わらず私への当たりが冷たい前王さまはイラついた様子でそう答えた。

『さーて久しぶりにアイツの顔を見るチャンスね~。顔だけはいいのよ、顔だけは』

小さく呟きつつ、前王さまは手を前に出し何語かわからない呪文らしきものを唱えだした。


すると地響きと共に会場一帯を強い光が包み込んだ。



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