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6-1 前王は美形がお好き

 ①


 魔王さまとの羞恥と痛みのダンスの後すぐに、トウドウさんがやってきて会場の裏側へと連れていかれた。なんでも、もう儀式の準備をするらしい。

裏についてすぐ先ほどのダンスを見ていたらしいトウドウさんは、人間に跪くなと魔王さまを叱っていた。そしてまたしてもとばっちりで私までげんこつを落とされた。なんで・・・。

 儀式の準備で連れて来られた私だが、実際やることもなく久しぶりに見る人間の生贄の方々と共に、ただ椅子に座っているだけでいいらしい。椅子もものすごく簡素だ。 

久しぶりに会う人間にテンションが上がり色々と話かけようとしたが、そうすると魔王さまと話しているはずのトウドウさんが手をバキバキと鳴らす音が聞こえてきたため大人しく座っていることにした。他も同様らしく皆静かに座っている。

他の生贄の方々をちらりと盗み見てみる。年齢はバラバラだけど、性別は統一して男だった。女は私だけだったなんて・・・・まあ気にしないけど。


「それじゃあのばなちゃん準備はいいかい?」

「準備って言われても何もしてないんですけど。ああ、心の準備ならまったく出来ていないので後1時間は待ってください」

「長いわ」

ふてぶてしくそう言うと、トウドウさんに頭を叩かれてしまった。だって本当に心の準備などまったく出来ていない。

私とは違い、他の4人は準備が出来ているのか恐怖で声が出ないだけなのか、あっさりと頷いて肯定していた。なんと潔い。

「陛下ーほな始めよか」

「無視した!せめてもう少し待とうよ!」

「アホか。嬢ちゃんの準備なんや待っとったら1日経ってまうわ。ああ、せや儀式の前にええこと教えたろか」

「・・・・・トウドウさんの良いことなんてまったく期待してないんで結構です」

「遠慮すんなや」

「いだだだだっ」

丁重にお断りしたが、ものすごい力で頭をわし掴みにされた。頭がミシミシいってる。

「ぜひ聞かせてください」

「おう最初からそう言えや。実はな嬢ちゃんに降ろす魔王の魂なんやけど女の魂なんや。せやから気楽にしといてええと思うで?」

「えっそうなんだ。なら安心・・・・なのか?」

女と聞いて有難いような、さしてそうでもないような。

「ああ女ならまあ安心やろ。性格は難あり過ぎて俺は好きやないけどな。嬢ちゃんに降臨したら一切話掛けんようにするわ」

「逆に安心できなくなったよ!?」

性格に難がある方が嫌だ。それなら男で性格の良い魂を迎え入れた方がマシだ。話を聞いて怖気づいていると、魔王さまが頭を撫でてきた。

「大丈夫だよ。僕も少しだけ苦手だけど話してみたら結構、ほんの少し、思っていたよりかは大丈夫だったよ?」

「慰めにもなってないよ!不安要素が増えた!!」

不安になってきた私は、つい出来心で逃げ出そうと椅子から転がり落ちた。這いつくばって逃げようとしたが、不穏な空気を漂わせたトウドウさんにヘッドロックをかけられ、痛みに悶えるだけの結果となった。

嫌々言う私を強制的に座らせトウドウさんが抑え込み、無情にも儀式が開始されてしまった。


魔王さまの下手な説明によると、魂帰りをした後は私は会場に、他4人は城の周辺に設置している魔法陣の中に入って待機するらしい。

その魔法陣で外に死神の力が漏れないようにするんだって。ということは実質私(前王)一人で封印するってことになる。最悪だ。

どんどん青ざめていく私に苦笑しつつも、魔王さまは青い小さなビー玉のようなものに髪の毛を1本吸い込ませた。

そしてその玉を私の目の前に差し出し笑顔でこう言った。


「さ、これを飲んでくれる?」


「はっ!?」

さすがに食いしん坊の私でも髪の毛の入った得体のしれない玉を飲むのは気が引ける。というか遠慮したい。

しかし、私を抑え込んでいたトウドウさんにより無理矢理口を開かされて玉を入れられてしまった。そして鼻と口を塞がれた。

数秒抵抗していたが、結局苦しさに耐えきれずに玉を飲み込んでしまった。

「ぶはっ!の、飲んじゃった・・」

「大丈夫だよ人体に影響はないからね」

「そういう問題じゃないよ!魔王さまの変態!!」

「へ、変態・・・」

変態発言に泣き崩れた魔王さま。そしてそれを見て爆笑しているトウドウさん。しかし私はそれどころではない。他4人も同様に毛入りの玉を飲まされ青ざめていた。

それから数分待っても何の変化も起こらず首を傾げて魔王さまを見た。その瞬間、体に電流が走り一気に胸が苦しくなった。

「かはっ!!」

ものすごく苦しい。息もロクにできないため目から涙まで出てきた。

数分苦しみに悶えていると体に変化が起こった。痛みが無くなり、なんと私の意志とは無関係に体が勝手に動いているのだ。おまけに口まで動いている。


『ん~もう儀式の時期なの~?いい加減この儀式も面倒になってきたわね~』




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