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5-1 ドキドキ、大人の男性

 ①


 皆さんおまたせしました。ついにやってきました『魔界大舞踏会』。・・・・・・ではなく、先祖を降臨させちゃうぞ『魂帰りの儀式』。

もう、腹をくくったとかそういう問題ではない。魔王さまもトウドウさんも今さら断らないよね?みたいな雰囲気出してるし。

魔王さまの方はばっちり断ることができるが、問題は後ろだ。魔王さまの後ろにいるもう一人の魔王さまような人が、ものすごいオーラを出して凝視してくるのだ。あのダンスの後からは、よくゲンコツも落としてくるようになった。はっきり言ってかなり怖い。

普通に接することも会話もできるが、恐怖の方が少し勝っている。完全にトラウマを植え付けられてしまっていた。

そんな私の心情も知らずに、魔王さまの使い魔であるペン子は今パーティ用のドレスを見繕っている。

あのダンスの後、ペン子から一日みっちりスパルタ教育を受け、更には儀式の内容を話してしまった魔王さまと共に何故か私までトウドウさんのお叱りという名の罰ゲームをやらされ、散々だった。


「ペン子よ。私にはそのコルなんとかは無理だ。苦しいし、それが無くても生きていけるよ」

『コルセットでございますのばな様。無理でも淑女は皆これをつけてドレスを着るものですよ。だいたいその幼児体型を隠してくださる素晴らしい道具を貶すなど、なんと失礼な』

「お前のが失礼だから」

私は今試練を迎えていた。儀式よりもうんとつらい体罰という名の試練を。

―――そう、コルなんとかをつけるという試練を!

「いーやーだー!だいたいそんなきっついものつけてたらご飯が食べられないよ!ダンスを踊った瞬間に胃の中の物全部リバースしちゃうよ!」

『その前にのばな様は生贄なのですから、ディナーを召し上がることはできませんよ?』

『うっそ!?』

ペン子は当然のように頷き、答えた。

『本当でごさいます。器が満腹で動けないなど、降臨されるご先祖様が困るでしょう。我慢です』

「がーーん」

頭の上に雷が落ちた、ような衝撃を受けた。私の、私の儀式とかいうおかしなことに付き合う代わりの唯一の光がっ。

「うぐぅっ」

放心状態の私に対し、ペン子は無情にもコルなんとかを締めた。もう贅肉とか余分なものを一切外に出さないぜ、安心しな!という感じのたよりがいのあるコルなんとかを。

「ひっひっふー、ひっひっふーー」

『のばな様、何を産む気なのですか?』

「こうでもしないと気を失っちゃう!コルなんとかが頼りがいあり過ぎてヤバい!」

『コルセットです、のばな様』


ペン子と漫才まがいのことをしつつ、自分のドレス姿を鏡で見てみた。薄紫色のフリルたっぷりドレスだ。うん、いけるじゃないか私。いつもの数倍は可愛いだろう!

「ね!ペン子、私の女子力も結構上がってない?」

『そうでごさいますね。がさつで女らしさの欠片もないのばな様でも、ペンギンの次くらいには可愛いと思いますよ。』

「それ褒め言葉じゃないから。ペンギンの次ってことは動物以下ってことじゃん!もういいよ、魔王さまに聞いてくるからっ」

とりあえず優しい優しい魔王さまなら褒めてくれるだろう。背後にラスボスが控えているだろうけど、気にしないでいよう。

後、後ろから聞こえてくる忠告の声も無視をすることにしよう。


「魔王さまチャオーー」

バーンと大きな音が出たが、気にせずに魔王さまの執務室のドアを開けた。

この間行った時にいつでも来ていいと許可ももらっているため、トウドウさんに叱られる心配もない。

「あ、やあのばなちゃん。いらっしゃい~」

「自分ノックもできへんのか」

ひらひらと手を振って出迎えてくれた魔王さま。そしてやはり背後に控えていたトウドウさんはいつも通り表情も分からぬまま怒りのゲンコツをお見舞いしてきた。かなり痛い・・。

「で、用件はなんや?」

「いつつ~、あそうそう!魔王さま見て見て!ペン子がドレスを選んでくれたの!」

「わあ可愛いよ、のばなちゃん!お姫様みたいだね~」

「!」

満面の笑みで褒めてくれた。確かに褒めて欲しかったのだが、無防備な笑顔でこちらを見られると、何故か心臓がバクバクしている。

魔王さまなのに、あのヘタレですぐ泣くペンギン愛好家なのに、笑顔なんていつも見てるはずなのに、ものすごく顔が熱い・・気がする。

完全に自滅しにきてしまった。

「なんや自分。褒めて欲しくて来たクセに照れとるんか?」

「う、うるさいよ!!照れてないし!・・・・魔王さまに褒められたってちっとも嬉しくなんて、ないんだからね!!」

「がーん」

「キモイわ。柄にもないツンデレすんなや」

トウドウさんに図星を指され、ついツンデレ化してしまった。とばっちりを受けた魔王さまは、やはり泣いていた。

「それより自分、ホンマに胸ないなー。可哀想過ぎて涙出てくるわ」

上から下までしっかりと眺めたトウドウさんは感心するように言った。

「余計なお世話だよ!!わーん、トウドウさんがいやらしい目で見てくるー!」

すぐさま変態トウドウさんの元から離れ、良心の魔王さまの後ろに隠れた。

「ダメだよトウドウ。女の子には優しくしなきゃ」

いつもの如く、ヘタレなのに立ち直りの早い魔王さまは眉根を下げながら、諭すように言った。しかし、

「せやかて陛下もそう思っとるんやろ?断崖絶壁やて」

「さっきよりひどくなった!!」

「そこまでじゃないけど・・・まあ少し通常より小さいってだけで」

心の良心である魔王さまにまで暴言を吐かれた。

「魔王さままでひどい!?わーん女は胸じゃないもん、性格とか中身だし!!」

やっぱり私室でペン子と漫才まがいなことをして戯れていればよかった。あ、ペン子が来た。

『見つけましたよ!時間がないというのに遊ばないでくださいまし!魔王さまもです。さっさと執務に取り掛かりませんと、パーティに遅れが出てしまいます!』




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