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1-1 お礼という名の生贄

 ①


 今日も平々凡々な一日が過ぎようとしていた。私、草間のばなの一日はこうだ。

朝起きて学校に行き、退屈な(苦手な)授業を受け、友人とお昼を食べてまた、午後の授業を受けて帰宅する。

そんな普通な日常の中で今日は一つだけ些細な変化があった。


―――――道端でペンギンがカラスに襲われているのだ。


ピンクという珍しい色をしたペンギンは、必死にカラスを遠ざけようと短い羽をばたつかせていた。

ツッコミ体質の私としてはものすごくツッコミたいところだが、今日はどうしても見たいドラマの再放送があるのだ。早く帰らねば見逃してしまう。

私はツッコミの一つスルーを発動し、遠回りをして帰ろうとくるりとUターンをして一歩踏み出そうとした。その時―――

『ま、待ってぇ~』

ソプラノ調の可愛らしい声が聞こえてきた。くるりと後ろを振り返るも、そこには先ほどと同じくペンギンとカラスの格闘大会しか繰り広げられていなかった。

どうやら気のせいのようだ。

『ちょ、ま、待ちなさい。助けを求めているのに、いてっ、や・・やめっ、助けないなんて!』

またしても聞こえた。しかも、耳がおかしくなければあのピンクペンギンから聞こえてくるような、気がする・・。

「いやいや、ないない」

きっと疲れているのだ。

午後の体育で無理やり跳び箱7段も飛んだから体が疲れているのだ(もちろん飛べなかったが)。

さっさと帰って再放送を見なければ。


『現実を見てくださいー!話しているのはわたくしですっ!』


仕方なくまた後ろを振り返ると、ペンギンはカラスに頭突きを食らわせて勝利すると、こちらに向かって歩き出していた。話しながら。

『まったく、近頃の若者は・・。ペンギンが困っていたら助けるのが情けというものですよ!はあ、頭にコブが出来たではありませんか・・』

「・・ひぃーペンギンがしゃべってるーーー」

棒読みでも思考が停止しかけていてもツッコめたのはすごいと思う。さすが私。ちなみにコブができたのは自業自得だ。

「・・ああ、変声機か何か付けてるのか。なるほど納得」

『そんな変な物は付けていませんよ?人語を話すなど天才のわたくしには容易いことです。』

えっへんと言わんばかりに胸を張るピンクペンギン。

いや、ペンギン様と呼ぶべきか。崇めないと・・

「っていやいや、普通のペンギンはいかに天才でも人語なんて操れないよ!」

ペンギンに様をつけるぐらいに動揺していた私の思考を正常に戻すため、伝家の宝刀ツッコミを使った。

「だいたいピンクってだけでも気持ち悪いのに、なんで話してるわけ!?キモイ!」

『ようやく饒舌になったと思えば失礼ですね!わたくしは普通のペンギンではないのですよ。ある方にお仕えしている優秀な部下ペンギン。名をホロケリィゴデスと申します。』

「・・ホロ、なに?その人ペンギンを部下にってどういう思考の人なの。動物園の人なの?」

というかいつの間に私はペンギンと普通に話しているのだろうか。

現実逃避もここまでくれば痛々しいことこの上ない。さっさと離れよう。

「さ・・さよなり!!」

『あっ』

一瞬の隙(?)を付いて全速力でペンギンの横をすり抜けて行った。

ミッションコンプリート!!



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