表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

序2-1

おへそ分はありません

「お父さん、始業テストなんだけど……」

「ふむ」

「2位でした。羽幡さんがまた満点で1位でした」

「ふむ。……それで?」

「もちろん春休みはしっかり、1日平均10時間は勉強していました。でも羽幡さんに負けました。次は頑張ります」

「……それから?」

「……以上です」


気の重い報告を一通り終えて、父の前から立ち去ろうとした。

「待て」

父の声はそんなに低くない。それなのに、深く重く僕の胸に沈み込む。

「お前はまだ、父さんの言ってることがわかってないようだな」

「え、えーっと、……」

「お前はちゃんと勉強したと言ったのに試験で負けたんだぞ。負けたということは、親の顔に泥を塗ったということだろう?」

「……はい」

「だったらまず、ごめんなさいだろうが」

「……はい。ごめんなさい」

「親の顔に泥を塗って、親を裏切って、それなのにごめんなさいの一言も言えない」

「……」

「父さん、そんなに難しいことは言ってないと思うがな」

「……え?」

「まだわからんか。だからお前は馬鹿者だといつも言っているんだ」

「……はい」

「馬鹿者は自分が馬鹿者だと認めろ。親が説教してくれているなら、どうしたら自分が馬鹿者じゃなくなるのか教えてもらうこと。こうやって人間は成長していくんじゃないのか?」

「……はい。親不孝で、馬鹿者の僕が、どうしたら成長できるのか教えてください」

「簡単なことよ。父さんはいい子になれなんて一言も言ってないんだからな」

「はい」

「親を裏切るような悪い子になるな。親との約束は守れ。万一そんなことをしてしまったら親に謝れ。たったこれだけのことだぞ」

「はい。……僕は今回のテストでも、羽幡さんに負けて、お父さんとの約束を破ってしまいました。ごめんなさい」

「それで?次はどうするんだ?」

「羽幡さんに負けません。満点を目指して勉強します」


「信用できると思うか?」

「え、えーっと……」

「これで何回目だ?何回、『羽幡さんに負けません』と言った?」

「……」


これが、今日家に帰りたくなかった理由だ。

お父さんのお説教は、今日もまだまだ終わりそうにない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ