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恋物語の片隅で  作者: 那智
合宿
62/64

たまには夜更かししましょう

時間がかかると思った!?

ごめん。半月もかかった。

ただいまの時刻PM10:40。

すでに夜もふけて良い子はそろそろ寝る時間だけど高校生なのでまだ寝ることはない。

というか用事があるので眠れない。なにせ呼び出しをくらっているのだ。力になると決めた手前スルーはありえない。というか月宮さん絶対もう待ってるやつだからスルーしたら外道かなにかになってしまう。


夜ということもあり所々に明かりがついているだけの薄暗い廊下を足音を潜めて歩く。

しかしあれだね。洋館で真夜中の呼び出しとかミステリーだったら翌日死体になってるやつだわ。

物語の舞台として洋館というのは便利なものでもしこの状況に懐中電灯を加えればホラーになるし更に拳銃を加えればゾンビサバイバルになる。洋館とはそんな可能性に満ち溢れている素敵物件であるのだ。


まあそんなどうでもいい妄想は置いといて、だ。

今回の月宮さんからの呼び出し。これは渡りに船である。ちょうど白波先輩の件とかで話したいことがあったのだ。

というかもう合宿の日程の半分以上を消化してしまっているので白波先輩と月宮さんの間にある問題を解決するならあまり時間に余裕はなかったりする。当人たちも慌てろ。


「黒田さん! わるいなあ、こんな時間に呼び出して」

「いえ構いませんよ。 ここまで来たら最後まで関わるつもりですので」


不完全燃焼のまま終わったら嫌だし、それが一番駄目なパターンな気がするからね。

たぶん今終了したら互いに前に進もうとしてる分お互いの動きが中途半端に噛み合った結果こじれに拗れて悲惨な末路、とかになりかねない。

心配のしすぎと笑うことなかれ。誰かの後押しがあるまで一歩も進めなかった人たちのことをどうして信用できようか。白波先輩に至っては未だ足踏みしてる。


「ふふ、頼もしいなあ。 じゃけん今回呼んだのは相談するためじゃないんよ」

「そうなんですか? ではなぜ?」

「うーん、なんというかな、宣誓みたいなものじゃきん」

「宣誓、ですか?」


スポーツマンシップにのっとったりするアレ?それしか知らない。


「そ、宣誓。 うちも今までは逃げてた口やけん。 逃げ道塞いどかないと逃げちゃいそうで」


なるほど背水之陣か。気持ちはわかる。


「ほんで本題やけどね、うち明日思いきって泰斗さん連れて本家の方行こかと思うのん」

「それは・・・突然ですね」


月宮さんの家って武家屋敷だったよね?え、こわ。白波先輩なにされるの?


「そこで・・・うちらの今後について話そと思うのん」

「しかしわざわざそこまで行って話すというのは・・・いや、まさかそういうことですか?」

「そやの! ほんなら泰斗さんもいろいろ考えんで正直に話すと思うけん」


そうですね、お屋敷には武器とかありますものね。誰でも正直になるやつ。

それを差し引いても言い訳やらそれっぽい理由やらを考える暇を与えないというのはいい方法かもしれない。真面目な白波先輩の性格から考えてもさすがに婚約者のご両親を前にして誤魔化したりはしないだろうし。


「なるほど、それならさすがの白波先輩も本音で話さざるをえないですね」

「そやろ!」


月宮さんは悪戯を企む子供のように笑う。


「そんでどうなるのかはわからんけど、黒田さんすごい頑張ってくれたきん。 じゃけんうちも勇気出していこと思ってな」


そう言って頬をかき笑う月宮さんは最初に会った時よりも強い人に見えた。会ったの数日前だけど。

この分なら俺があれこれ言う必要もなかったかもしれない。月宮さんならなにかきっかけがあればそれだけで・・・いやこの場合俺がそのきっかけになったのか。なんともはや。

俺に頼りっきりの白波先輩は見習ってください。

明日への意気込みを語る月宮さんを生暖かく見守りながら夜は更けていくのであった。


それじゃ月宮さんとの話も終わったし自分の部屋に戻るか、とか思っていたら帰り道で白波先輩とエンカウントしてしまった。噂をすればなんとやら、だ。


「良い夜だと思いませんか?」


そんな小説のセリフみたいなこと言う人現実で初めて見た。


「そうですね。 こんな夜を楽しめるのも白波先輩のおかげですよ」

「楽しんでくれているのなら誘った甲斐があるというものです」


白波先輩の隣に並んで窓の外を見る。そこからは自然豊かな森と海が一望できる。夜だからよく見えないけど。昼間また見よう。

視線を上に向ければ満天の星空がとても綺麗だ。


「黒田には苦労をかけましたね」


ほんまにな。結果的にとはいえほぼ丸投げとは思わなかった。


「覚悟はしていたはずなのですがね、情けないことにいざ楓さんと向き合うとつい誤魔化してしまったりするんです。 ・・・こんな男で幻滅しましたか?」

「いえ、むしろ完璧超人っぽかった白波先輩の弱点を知れてちょっと親近感ですね」

「ふふ、優しいですね黒田は」


まあそれを吹っ飛ばすほどの金持ちムーブで親近感プラマイゼロですけれども。


「楓さんにも心のどこかで甘えてしまっている気がするのです。 きっと私は気づかないうちに彼女にたくさんの苦労をかけてしまっているのでしょう」

「・・・なら今度は白波先輩が頑張る番ですよ」


それだけ自覚しているなら十分だと思う。

でもここはあえて更に畳み掛ける。そうやって逃げ道を塞いでいくという寸法よ。


「白波先輩、逃げないでください。 そりゃ気まずいやらなに話せばいいかわからないやらでツラいとは思います。 でも今度ばかりは月宮さんと真っ正面から向き合ってください」

「・・・・・・」

「ま、これが俺にできる精一杯のアドバイスですよ。 あとは当人同士で解決してください」

「・・・ありがとうございます黒田。 私は良い後輩を、いえ、良い友人を持ちました」


なんかデレた。どうしてこう俺は本命以外ばかりに。

デレたところ悪いけれども実際これ以上はどうすることもできない。こちらとら神でも親でもない身なのだ。お前何様だという話になる。

というか今の時点でも頼まれたからとはいえ過干渉染みているからね。しかも最後はぶん投げだし。

いやまあ本人たちがそれでいいってんならいいんだけども。


というか疲れたしもう遅い時間だしでとても眠い。

そういうわけで話もそこそこに白波先輩と別れいい加減寝ることにした。けっこう夜更かししてしまったし今日はぐっすり眠れそうだ。


あとは三話ぐらいで合宿編終われたらいいなあと思います。


それとなんで昔の俺は月宮さんの口調をこんなんにしたんでしょうね?書きづらい。でもこういう方言割と好きだったりする。

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