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恋物語の片隅で  作者: 那智
夏休み
50/64

携帯を買いに行きましょう

また一ヶ月以上かかってしまった・・・。

でも就活もほぼ終わったしこれからは時間取れるはず・・・あ、卒業研究・・・。

翌日、俺は外出するための身支度を整えていた。

と、言っても用意するのは財布とお金だけでいい。あとは夏らしい涼しげな格好をして帽子被るぐらいだ。

着替えが終わって時計を見れば時間は9時ちょっと過ぎ。携帯ショップが開くのが10時なので出掛けるには早い時間だ。携帯ショップまではどれだけゆっくり行っても20分程しかかからないのだ。

だけども紫苑が「現地集合ね! 先に行ってて!」とか言うので仕方なく先に行って待たねばならない。

集合時間は9時40分とか言ってたからそろそろ家を出ることにした。念のために早めに出るのは万が一遅れるようなことがあっても女性を待たせることのないようにとの配慮だ。

まあ相手が紫苑だからそこまで気を使う必要ないと思うけど一応な。

玄関で靴を履いていると母が台所から顔を出した。ちなみに父は会社だ。毎日お疲れさまである。


「あら! 紫苑ちゃんとお出かけ?」


「そのはずなんだがなんか知らんが先行けって言われた」


「待ち合わせね。 女の子なら一度はやってみたいことなのよ」


「ふーん、よくわからんなそういうのは」


確かに小説なんかじゃそういうシチュエーション多いけどな。及川に薦められた本なんかでは現代ものならほぼ確実に出てくる。

もっともほとんどの場合気が急きすぎて一時間ぐらい前に待ち合わせ場所にいたり、逆に遅刻して大慌てなんてシーンばっかりなのだが。普通の時間に来れないのかお前らは。

ま、先に行って待ってることに不満はないけど。別に不利益を被るわけでもないしな。

むしろのんびり散歩気分で行くか。



そう思って家を出た三十分後、俺は後悔していた。


「暑い……」


絶え間ない蝉の声がどこまでも続く青い空の下に響く。

今日の気温は三十三度。ふざけた気温である。朝の天気予報ではそこまで暑くならないと言っていたのにとんだ裏切りだ。

雲で太陽が隠れれば多少はマシなんだろうがこんなときに限って空は雲ひとつ無い快晴。忌々しい。帽子を被ってきていなければ危なかったかもしれない。

夏真っ盛り。そんな言葉を体現したような日だ。


「ごめーん、待った?」


「待った」


素直な気持ちを伝えると紫苑の顔が少しひきつった。


「……もしかしてちょっと怒ってる?」


「……この暑さのなか待たされる身にもなってみろ」


それに加えて今の時刻は九時四十五分。そう、こいつ遅れてきやがったのだ。そら怒りますわ。

紫苑のおごりで買ったジュースを飲みながら忌々しい太陽を見つめる。


「ったく、ほんと嫌になるな。 この暑さは」


「そうだよねー。でも純は暑いか寒いかなら暑いほうがいいんでしょ?」


「まあ……そうだな。 だからって好きではないし平気なわけでもないからな」


あくまで寒いよりかはって話だ。選べるなら俺はあったかいを選ぶ。ちょうどいいのが一番いいんだ。



それはともかくである。紫苑と合流したので早速携帯ショップに向かった。

とはいっても時間が時間なので十分ぐらい待ちぼうけするはめになってしまったが、まあ紫苑いわく「携帯ショップは混雑するから早めに行った方がいいの」とのことなので問題はないのだろう。


紫苑の言うとおり早めに待機していたおかげで店に入ってすぐに店員さんに話を聞くことになったのだが……。

さて、ここで一つ話をしよう。

実をいうと俺は携帯電話というものを買うのは初めてだったりする。前世ではいろいろ事情があって持ってなかったのだ。

そんなわけで「ついに俺も携帯電話を!」とちょっとしみじみしていたのだが現在俺は携帯電話ではなくスマートフォンの説明を受けている。いつの間にか時代は移り変わり携帯電話ではなくなっていた。悲しい。

というかこのスマートフォンとやらの画面でかくね?ボタンどこ?え、タッチパネル?タッチパネルってなにさ?画面にタッチなんかして画面が汚れたりしないのか。というか俺の知ってる携帯電話と違いすぎてなにがなんだかわからない。

くそ、これも「携帯電話とかまだいらないよな」とか思って情報収集を怠った結果か!抜かったわ!

不安しかない未来に絶望しているとぽん、と肩に手を置かれた。

振り向けばそこにはなんか任せろ的な表情の紫苑。いわゆるどや顔である。とりあえずその顔やめろ。

だがまあ自信満々なのでここは紫苑に任せることにする。


「えーと、まずどんなのが人気なのか教えてくれませんか?」


「そうですね、当店でのおすすめは―――」


さすがと言うべきか、少なくともどや顔するだけのことはあるらしい。紫苑はてきぱきと店員さんと話を進めていく。

それをもうちょっと私生活で発揮してはくれないだろうか。

そんなこんなで店員さんがいろいろ丁寧に説明してくれるのを紫苑と並んで聞く。

……正直言うと機種がどうこう会社がどこそこだのプランはこんなのとか言われてもさっぱりわからん。初心者なめんな。

もう通話とメールが出来ればそれで……って気分になりつつあるがそれじゃあご老人と変わらない。それどころか一部のおじいちゃんおばあちゃんには負け越しだ。

それに慣れてから他の機能が使いたくなって買いなおすのも面倒なので普通のを買いたい。その普通ってのがわからんけど。……たぶん携帯ショップにとって俺みたいな客がカモなんだろうなぁ……。


「じゃあそのプランは―――」


「それはこちらと組み合わせると更にお得に―――」


結論から言えば紫苑がいなければ即死だった。俺一人だったら説明をほとんど理解できず携帯ショップの店員に弄ばれ骨の髄までしゃぶり尽くされていただろう。まあこれは大袈裟に言いすぎである。店員さんはそんな恐ろしい存在ではないので勘違いしないように。


俺たちが携帯ショップを出たのはそれから一時間くらいあとのことだった。手続きやらなんやらでこんなに時間がかかるとは思わなかった。

しかしその甲斐あって俺と紫苑の手には新品のスマートフォンの入った袋があった。

俺が買ったのはスマートフォンの春モデルとかいうやつだ。今はもう夏モデルとやらが出ているのでだいふ安くなっていたのだ。

それでいて性能は最新型とさして変わりないのだ。凄まじく得した気分。


しかしあれだ、人生初スマホである。携帯すら持ってなかったのにいきなりスマホなので「LVが足りない」と表示されないか不安でいっぱいである。まあそういうゲームじゃないから大丈夫だろう。

それにわくわくする気持ちも強い。なので家に帰るとその衝動に突き動かされるように最低限の充電をすると早速どんなもんか実際に触ってみることにしたのだが……。


「うーむ」


さっきからいじっているがいまいちよくわからない。最早これは未知との遭遇である。SF映画とかで未知の文明のテクノロジーを調べるシーンとかあるけどきっとその時の科学者の気持ちもこんな感じに違いない。


「だいじょーぶだいじょーぶ。 毎日使ってるうちに慣れるって」


顔に出ていたのか俺の思考を的確に読んだ紫苑が言う。ちなみにここは俺の部屋である。何故いると思ったがよく考えたらいつものことだったので気にしな

なお紫苑はすでに使いこなしつつある。だって画面を弄る指の動きがすごい滑らかだもの。


「そんなもんか」


「そんなものそんなもの」


経験者が言うならそうなのだろう。


「なら頑張って数こなして慣れるかね」


「今夜私とメールする?」


「無駄以外の何物でもないな」


そんなことしなくても窓から直通である。ケータイいらずとはこの事だ。




夜、練習がてらちょっと紫苑とメールしたあと俺はベッドで寝転がっていた。

今夜は紫苑との窓越しの夜会話はない。


とりあえずは生徒会と知り合い全員のアドレスをゲットするか。紫苑のは教えてもらったからあと最低でも白波先輩……それと黄野のアドレスは確保せねば。

そ、それと……及川のアドレスも。

そう考えた途端に顔が熱くなる。枕に顔を埋める。じたばたもしたくなったがそれは堪える。男がやったって誰得だよ。

いやしかしここが部屋で心底良かった。こんなところを誰かに見られたら死ぬ。刺し違える。


ぶんぶんと頭を振って思考を切り換える。別のこと考えよう。恥ずかしい。

そういえばみんな携帯電話って持っているのだろうか?

紫苑は持ってる。というか今日一緒に買いに行ったのだから当然だ。まああいつは買い換えだが。

及川も紫苑がメールしたりしているので持っているのだろう。

黄野は持ってる。前に紫苑に連絡する時に借りたから確実だ。

青葉先輩はわからん。だけどもあの人が携帯電話を持っているイメージが想像できない。ごめんなさい。

緑川先輩は知らないけど持ってそう。ほらイメージ的に。

小鳥遊先輩は持ってなかったはず。

白波先輩は持ってる。いろいろと纏めたり連絡を受けたりする立場だから必要なんだと前に言っていた。

赤海先輩は……持ってそうだけど同時に没収とかされてそう。実際仲良くなってから携帯電話いじってるとこ見たことないし。

うーん、わからない人がほとんどか。ま、直接聞いてみるしかないか。

とりあえず今度黄野と青葉先輩とは遊ぶ約束をしてるから二人からはその時聞くとして……あとは白波先輩の別荘にお呼ばれしてからだな。

その時に及川のアドレスも……ってまた思考がそっちに!

くそ、俺はどんだけ及川のこと気にしてんだよ!すっごくだよちくしょう!


流石にこれ以上及川のことを考えると思春期が爆発して死にそうなので別のことを考えることにする。

そうだな……攻略対象共の髪の毛の色の謎についてとかどうだろうか。

最近はすっかり馴れてしまって気にしなくなっていたのだが感性を前世に切り換えると

黄野と白波先輩の髪はそこまでおかしくない。金髪と白髪だからまああり得るし。

というか白波先輩のは白髪っていうか限りなく白に近い灰色って感じなんだよね。かっこよく言うと銀髪。色素薄いのかな?白波先輩は健康そのものだけど。

黄野に関してはなんかヨーロッパとかその辺の外国人の血が混じってるなら完全に納得できる。いや家系に外国人が組み込まれてるかどうかは知らんけど。

それらの些細な疑問を吹き飛ばしてしまうのが青葉先輩、緑川先輩、赤海先輩である。

なんだ青と赤って。確かに赤毛ってあるけど赤海先輩のは茶色っぽい赤じゃなくて本気で真っ赤なんだよな。まあそこまで色が濃いわけではなくて明るい感じの赤なんだがどちらにしろあそこまで真っ赤なのはありえん。

青葉先輩も青みがかってるとかじゃなくてほんまもんの青だ。ちなみに漫画とかでよくあるライトブルーじゃなくて濃い目の青。ダークブルーってほど濃くはなくてなんとも中途半端な色だ。あえて名称をつけるならネガティブブルーとかだろう。青葉先輩の性格を考えるとぴったりである。ぴったりすぎて違う意味に聞こえてくる。

そして緑川先輩、緑である。光合成でもしてんのかと言いたくなる色だ。濃い緑ではなくてどっちかっていうと黄緑なのが。そんな草食系っていうか草系の見た目なのに中身は肉食系。擬態も甚だしい。あれか、食虫植物か。


そう考えると紫苑やら俺と親しい女性陣が至って普通の色でよかった。いやこの世界の常識で言えば男性陣のあれも一応普通っちゃ普通なのだが。クラスメートとかにも青とか緑とかいるし、比較的身近なとこでは小鳥遊先輩関係のごたごたで知り合った田辺先輩とか髪の毛灰色だし。

更に言えば乙女ゲーの女性キャラも主人公に限っては奇抜な髪の色になるというのも聞いたことがある。

……それに関しては紫苑がそれに適用されなくてよかった。桃色の髪の幼馴染みとか正直どう接すればいいのかわからない。


とまあここまでぐだぐだどうでもいいこと考えてたおかげで落ち着いた。

時計を見れば針は一時を指していた。


「……寝るか」


いい加減寝ないと明日起きれない。

そう思い目を閉じるが―――寝る直前にふと思う。


俺は黒髪でよかった。自分の髪の毛が奇抜な色だったら絶望してたかもしれん。

いやマジで。

次の話は男どもの話にしたい。そのあとは恋愛小説らしい話でも書いてみようと思ふ。

あと自分の中のイメージを固めるために小説のキャラ大まかに描いてみたんだけど・・・画力ェ・・・。

だれか代わりに描いて!あ、いや冗談です。

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