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恋物語の片隅で  作者: 那智
4月
5/64

部活設立しました

区切りが悪いなぁ・・・。

でも次のは長くなりそうだしいいか。

「初めまして・・・二年の青葉奏っていいます・・・」


午前の授業が終わり昼休みになると俺は早速青葉先輩を天文部のメンバーに紹介した。

紫苑たちは俺が連れてきたのが二年生であることに驚いたようだったが驚いた後は案外あっさりと受け入れられた。

紫苑などは完全に気にした様子もなく「よろしくお願いしますね!」なんて笑っている。

それを間近で見た青葉先輩は顔を真っ赤にして・・・ってフラグ立つの早くね!?

その様子に黄野は歯軋りをし、それを見た及川は苦笑している。どうやら及川は黄野が紫苑に気があることを察しているみたいだな。

一切気づかない我が幼馴染は見習って欲しいものだ。


「5人集まったし早速部活の申請に行こう!」


「そんなに急がなくても大丈夫だよ? まだ部活は仮入部期間だから今出しても正式に受理されるのはもう少し後だし」


まあ屋上の使用許可や夜間の外出許可とかも必要になるだろうしな。

一応全寮制なんだからその辺しっかりしないといろいろ問題になるのだろう。

それに顧問も必要だな。

そのことを考えると思った以上に時間が掛かりそうだ。

もしかしたら顧問も自分達で探さなければいけなくなるかもしれない。


「善は急げ! ちょうど全員揃ってるんだし申請しに行っちゃおうよ!」


「お前なぁ・・・」


「別にいいじゃないか。 まだ時間はあるんだし」


「あ・・・僕も構わないよ・・・」


結局多数決で申請しに行くことになった。

とはいっても事前に及川が書いておいた申請用紙を職員室にいる先生に出すだけだ。

書類を出すだけならすぐ終わるし、部活に関する説明を聞いたとしてもたいして変わらない。そう思っていたのだが――――


「はい、受理っと。 あ、そうそう。 今日からもう活動していいわ」


「はい?」


どういうことなのだろうか?1分も経たないうちに受理されてしまった。

うん、ちょっと待て。とりあえず今あったことを整理しよう。

まず俺たち5人は職員室に来た。

そしてたまたまそこにいた仙石先生に申請用紙を渡したんだよな。

そしたらその場で仙石先生が書類を受理して部活動も許可された。

・・・うん、整理する必要がなかった。

ついでに言うと屋上の使用許可や夜間の外出許可もその場で下りた。

さすがにどうかと思ったし顧問のこともあるのでその辺を仙石先生に尋ねたのだが―――

「別に問題さえ起こさなければいいわよ。 顧問も私がやれば問題ないでしょ?」

の一言で終わらせられた。正直唖然である。

これでいいのか?


「よ、予想よりもずっと早く受理されちゃったね」


「ほんとにな」


予想外だったのはみんな同じなようでみんな及川の言葉に同意している。

たしかにあんな勢いでやったようなのだと不安になるだろう。

それでも顧問に関しては『物語』と同じなのだからやはり見えざる手が働いているのではないかと思ってしまう。

まぁその場合は良くも悪くも原作どおりに進むということなので邪魔なものではない。だがやはり少しだけ薄気味悪さも感じる。

そんな中でいつもと変わらないのは紫苑である。


「いいじゃない! で、美羽! 最初の活動はいつにするの?」


「高倉さん、やけに行動が早くないか?」


「・・・いつものことだ。 新しいことをやるときは特にな」


なにせ小学校の頃、影で暴走機関車というあだ名を付けられるほどアクティブな奴だからな。


「そのことなんだけど、最初の活動は私の天体望遠鏡が届いてからにしようと思ってるの」


「天体望遠鏡? それはまた大層な物を持ってるんだな」


「昔からの趣味だから・・・。 それに何事も最初が肝心だと思うの」


「最初は盛大にってわけか! いいんじゃないか?」


「じゃあ、美羽の天体望遠鏡が届いたら活動開始ってことでいい?」


「うん・・・いいんじゃないかな・・・」


こうして一応天文部は発足した。いろいろツッコミ処も多かったがその辺は『物語』の都合なのだろう。

実際、本来『物語』で天文部が発足するのは4月中旬以降だ。

そもそもメンバーも大きく違う。ここにいるうちで本来の『物語』での天文部メンバーは紫苑、及川、黄野。

それとほぼモブと同じ扱いなので別に知り合わなくても問題ないと思ってスルーしたが『物語』では三人ほど天文部への入部者がいる。

名前は・・・実は知らない。しかたないじゃない、だって立ち絵もないしセリフもごく僅かな人たちだったみたいで妹も存在ほぼ忘れてたみたいだし。

それに生徒会ルートでは一切登場しないから問題も無いだろう。

たぶん。





それから数日後のことである。

その日最後の授業が終わった途端、紫苑が俺の机に飛んできた。

それ自体は割と日常茶飯事なのでもう諦めつつあるが最近はそれを利用して何とか黄野と絡ませようと奮闘中だ。

今の所成果はないけど。


「純! 図書館に行ってみない?」


「図書館? 何か用でもあるのか?」


「ううん、無いよ」


無いのかよ。じゃあ何故誘ったし。


「ここの図書館ってすっごく広いんだって! ねぇ見に行こうよ!」


「ま、そのうち利用することもあるだろうしどんな所か下見してくのもいいか」


「あら、図書館に行くの?」


「あ、美羽」


いつの間にか近くにいた及川も話に加わってきた。

何気に教室で彼女と会うのは初めてである。この狭い教室で面識無かったとかある意味驚きだ。


「図書館に行くんだったら私もついてっていい? ちょうど借りたい本があるの」


「もちろん! 断る訳無いじゃない」


「俺もかまわん」


あ、そうだ。せっかくだから天文部の交友を深めるために黄野も誘うか。


「なぁ黄野・・・って、あれ? 黄野は?」


「黄野君ならついさっき「よっしゃあ部活だー!」って叫びながら教室出てったけど・・・」


黄野ェ・・・。

何故にお前はこう、紫苑と仲良くなれるチャンスを逃すんだよ。

まだ紫苑の前だとガチガチなんだから早く慣れるべきだろ。

ほんと間が悪い・・・。

あと呼ぶとしたら青葉先輩だけど青葉先輩は今日生徒会の仕事があるって言ってたし・・・。


「しかたない。 三人で行くか」


「じゃあ早速行こっ!」


「そんな急がなくても図書館は逃げないよ? それに紫苑ったら教科書すら鞄に入れてない」


「あ・・・」


慌てて自分の机に戻る紫苑見て俺と及川は二人揃ってため息を吐くのだった。

つか紫苑、『物語』よりうっかり増えてないか?






「なんていうか・・・」


「・・・でかいな」


校舎から寮の反対方向に歩くことおよそ100m。

図書館を前にした俺と紫苑は驚きに包まれていた。


―――でかい。


ただその一言に尽きる。

星原学園には図書室はない。そのかわり、学内に図書館を立てそれを利用している。

図書館は三階建て。またフロアも公共図書館と変わらない広さを誇っている。

そのすべての階が図書館として利用されていることからも蔵書の豊富さが窺える。

なお、階によって扱う本の種類が違っている。

一階は娯楽小説。

二階が各種教材や資料。

そして三階には海外の学術書が取り揃えられている。


間違ってでも実質高校であるこの学園に建てる建物ではない。

第一海外の学術書なんて高校で使う機会などあるのだろうか。

いや普通は無いだろう。海外の大学を狙うならもしかして必要になるかもしれないがわざわざ図書館に用意するものではないだろう。

その疑問を二人に話すと及川はもしかして、と前置きした上で自分の予想を語った。


「そのうち大学も設立するつもりなんじゃないかしら。

 ほら、この学園ってまだ建物が建てられそうなスペースがたくさんあるじゃない」


「なるほど。 なら海外の学術書があるのにも頷けるな」


「どこまで行くつもりなんだろう、この学園」


「どうだろうね? でもきっと私達が在学中にはきっと変わらないと思うわ」


「んー、ちょっと残念かも」


「そうね」


喋りながら図書館へと入る。

図書館の内装は一般のそれと大差ない似たり寄ったりの内装である。

だが逆に言えばこの学園の図書館は学園――しいてはこの学園の理事長という個人によって運営されているにもかかわらず国立の図書館と同等の規模を誇っているのだ。

さすがゲームの世界。ある意味とんでも設定が闊歩してやがる。

しかしそれを言っちゃあ紫苑の異様なまでのフラグ体質とかもいろいろとアレなので口を噤むとしよう。


「へぇ、随分立派なとこじゃないか」


「ほんとすごいね。 どこから見ようかな? 美羽は?」


「私は借りたい本を探すわ。 たぶんこの辺にあると思うの」


「純は? 私はぐるって一回りしてみるつもりだけど一緒に行く?」


「遠慮しとく。 それよりも本の貸し出し方法の確認をしておきたいな」


「わかった! じゃあ用が済んだら入り口で待ってて!」


そう言うと紫苑はさっさと行ってしまった。紫苑のあの無駄な行動力は何なのだろうか?。


「行っちゃったね・・・」


「行っちまったな・・・」


正直少し――いやかなり気まずい。

今更ながら知り合ったばかりの女子と二人っきりになっていることに気づいたのだ。

今までは大抵紫苑が一緒だったため特に気にしている余裕がなかったがゲームの登場人物である及川はかなりの美人である。

はっきり言わせてもらえばなんでこんな子が登場人物紹介で地味といわれているのかさっぱりわからないほどにだ。

というか大抵ゲームやアニメのキャラって地味とか目立たないとかいう設定付いてても普通に他のキャラと同じぐらい顔面偏差値高いよね。

何が言いたいかっていうとめちゃくちゃ緊張する。


「ええと・・・黒田君は何か読みたい本とかある?」


「あー、それならせっかく天文部に入ったんだから天体関係の本を読んでみたいな。 なにか及川のお勧めはないか?」


「なら私の持ってる本を貸してあげる。 入門書みたいなものでどの時期にどんな星座が見れるかとか詳しく書いてあるの」


「それはありがたいな。 ぜひ貸してくれ」


緊張しつつも及川と並んで本を漁る。

今俺たちがいるのは天体に関する本のコーナーだ。そこに及川が探している本があるらしい。

探すのを手伝いながら俺は及川と話をしていた。


「黒田君も本が好きなんだ」


「ああ。 ジャンル問わずなんでも読む雑食だがな」


「でも何でも読めるのは羨ましいわ。 私は過激な描写がある小説は気分悪くなっちゃうから読めないの」


「そうゆう描写が軽いものから慣らしていくのはどうだ?」


「うーん、試してみようかな・・・」


今のところ特に失言もなく会話できている。だんだんと緊張が収まってくるのがわかった。

やはり共通の趣味があると気が楽になる。

緊張も完全に解けてきたとき不意に図書館に怒号が響いた。

黒田君とその他の攻略対象とは二人を除き接点がないので遭遇率が低いです。

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