黒田君IF ギャルゲー編 BADエンド
フリーダムウォーズしてたら遅れた。あと他の小説に浮気したり説明会行ったりしてた。
※この小説にはTS成分が多量に含まれております。嫌な人はバックホームしてください。
☆更なる注意事項☆
BADエンドなのでたぶん欝です。そういうの駄目な人もバックホームしてください。
――――ここはどこだ?
辺りは炎に包まれていた。火事ではない。燃えているのは車だ。どうやら事故があったらしい。
私の状態だが背中の感触から察するに地面に直接横たわっているようだ。
なぜ私はこんなところにいる?
考えるが思考が定まらない。頭の回転があまりにも遅いことから察するに強く頭を打ったらしい。
そのせいかぼんやりと燃えさかる炎を眺めていることしかできない。
「お兄! しっかりして!」
妹が私を呼ぶ声が聞こえた。大丈夫だと言おうとして違和感に気づく。
あれ?“私”に妹なんていたっけ?
ふと、腹部に湿り気を感じた。何気なく手を添えるとグチャと音がした。
手を見る。あかい。赤いのがポタリと垂れる。
垂れた先に視線を向ければ腹からは真っ赤な血が滴っていた。そしてその傷を必死で押さえている誰かの腕。
そこでようやく何があったかを思い出した。
ああ、自分は――――――
そこで目が覚めた。
すでに見慣れた病院の天井を見上げながら頬をつねりここが夢でないことを確かめる。いたい。
「はぁ…」
寝間着は汗でびっしょり濡れ、心臓は落ち着きを忘れたかのように荒ぶっていた。
とりあえずまずは水分補給するために枕元のペットボトルに手を伸ばす。が、ミス!私の手はペットボトルの前の空間を掴んだ。
苦労しながらペットボトルを取ると中身を口の中に流し込んだ。
勢いよく流し込んだせいかいくらか口から漏れてベッドを濡らす。
「また……あの夢か」
相変わらず私は毎晩のように悪夢に苛まれていた。いやあの夢が完全に悪夢というわけではない。
あれは俺だったころの私が死んだときの夢だ。事故だった。
私はその時妹を庇って深い傷を負い、その傷が元で死んだ。だが死んだことについては後悔はない。延々と兄に向かって乙女ゲームの魅力を語るような少々変わり者の妹であったが兄として妹を守れたのは誇るべきことだからだ。
だがそんな誇るべき夢でも毎晩のように見せられれば悪夢のように思えてくる。おかげでここしばらくの睡眠時間はがっつり減り睡眠不足な毎日だ。
「純香、あなた最近ちゃんと寝てる?」
お見舞いに来た母からそんなことを言われた。
「寝てることは寝てる」
「その言い方だと寝れてないんでしょ」
ぐ、流石母だ。この程度の誤魔化しは意味をなさない。父なら結構簡単に騙されてくれるのに。
そうしている間に母は私の顔に手を添えてきた。
「肌も少し荒れてるし……ちゃんと寝ないと駄目よ?」
それは気付かなかった。それだけ余裕がなくなってきているのだろうか。
「少し夢見が悪くてな」
「そう、辛いならお医者さんに頼んで睡眠薬を処方してもらったら?」
「薬に頼るのは嫌いだ」
正確に言えば薬を飲んだあとの眠りに落ちるときの感覚が嫌いだった。昔一度飲んだことがあったがどうもあの感覚は好きになれない。
そんな私の苦笑する母を見て気が緩んだのだろう。
「私は……ずっとこのままなのか?」
不意に弱気になり思わず弱音を吐いてしまった。しまったと思った。
母は……何も言わなかった。
母が帰ったあとベッドで寝転がりながら私はこれからのことについて考えていた。
私の体調は悪くなっていた。感覚のズレだけでなく寝不足、不安感なども手伝って
そのせいもあってここ数日で私の心が弱っていくのを感じている。
もし私が弱音を吐けばシオンや家族は私を支えてくれるだろう。
だが私はだからこそこみ上げてくる弱音を口の中で噛み潰した。
それは駄目だ。自分勝手な感情だと理解しているが私は家族にこれ以上迷惑をかけたくなかった。
何よりあいつの、シオンの枷になってしまう。
それだけは嫌だった。あいつはアホみたいなお人好しで幸せになるべき人間だ。私なんかにかまけて青春を棒に降るべきではない。そんなことがあってはならないのだ。
それに冷静に考えてみれば私があいつの想いに応えることは出来ない。それは私に前世の記憶がある以上覆せないこと。私の心は男のままで、私がシオンに向けている好意は友情であり弟に向けるようなある種の家族愛なのだから。
それだったら私はあいつが前を向いて歩けるように消えるべきだろう。ゲーム的にも主人公から好意を向けられるくせに攻略不可なキャラクターなど必要ない。それはもはやバクなのだ。
そして私は決意した。
「よし、死ぬか」
その日の夜、私は病院のベッドを抜け出した。
この時私の感覚のズレはまともに歩けないほどまで悪化していた。ベッドから出るだけで一苦労ってどういうことだ。
それでも壁を伝って一歩一歩慎重にいけば歩けないこともない。毎日欠かさずやらされたリハビリの成果が出ている。
「歩くって……大変なことだったんだな……」
それでも今の私にとっては歩くというのは重労働だ。長いことベッドで生活していたせいか筋力も落ちているようで足取りは頼りない。
それでも一歩一歩進んでいく。
そんな私の前に最大の難関が立ち塞がる。
「……階段」
そう、私が悪化を自覚した場所だった。
一度転げ落ちているので微妙に恐怖感が残っている。なので出来れば避けたかったのだがエレベーターを使えば病院の人にバレる。よって階段を突破するしかない。辛い試練になりそうだった。
だが私とてただあの日からベッドで寝転がっていたわけではない。対策ぐらい考案しているのだ。
「よいっしょ、と」
私は床に伏せるとそのまま這いずる体勢になった。とても人には見せられない姿だ。だがその代わり私は確実に安全に階段を登ることができた。思わずどや顔。
しかしほんと誰もいなくてよかった。もし階段を這い上がる姿を見られたら病院の怖い話がひとつ増えていたことだろう。
そんなことを考え、息を切らせながら残りの階段を這い上がる。
そしてたくさんの時間をかけてようやく屋上の扉に手をかけることができた。めっちゃ疲れた。
病院の屋上の柵は低い。乗り越えようと思えば乗り越えられる高さだ。
階段に比べれば難なく(簡単だったわけではない)柵を乗り越えた私は屋上の淵に立った。そこでようやくこれから自分は死ぬのだと実感が沸いた。
まず最初に両親の顔が浮かんだ。
私は最悪の親不孝者だろう。こうして親よりも早く死ぬのだから。それも自殺という形で。
ああ、ごめんなさい。悪い娘でごめんなさい。でもそれでも――――。
私はそっと脳裏に浮かんだ両親の顔を消した。
次に友人たちの顔が浮かんだ。
摩耶、静枝、小雛、クラスメートのみんな。
次々と浮かんでは消えていき、最後にシオンの顔が浮かんだ。
私が死んだらシオンは悲しむだろうか。
きっと悲しむだろう。酷く傷つくかもしれない。
だけど、きっとあいつは立ち上がれる。また前に進める。
だってあいつは私の大切な親友で『主人公』なのだから。
柵に寄りかかり空を見上げた。
空には満点の星が、真ん丸のお月様が浮かんでいてやさしく夜の街を照らしていた。
都会のように夜もギラギラ明るいのではなく夜にはちゃんと暗くなるのはこの街の良いところのひとつだと思う。
「死ぬにはいい日だな」
こんな日に死ねるのならそう悪くはない。そんな錯覚を抱いてしまう。……今はその錯覚に身を委ねるとしよう。
覚悟は決めてある。行くか。
だがいざ跳ぼうとしたその時まるでそれを阻止するかのように強い目眩に襲われた。思わず柵に寄り掛かる。
頭の中がスパークしたみたいにチカチカして意識が遠退く。が唇を噛み締めなんとか踏みとどまった。
そんな突然の事態に私は嗤う。
「登場人物がシナリオ通りに動かなくてご立腹か? 案外みみっちいんだな」
長い間こうしてはいられない。どんどん頭痛は激しくなってきているし、このままではフェンスに掴まったまま気を失ってしまうだろう。
そしたらどうなる?きっと私は生き残るだろう。そうすれば自殺未遂者として監視され、もう二度と自殺などできない。
そして私の命は『シナリオ』のために使い潰されるのだ。少なくとも感動という名の花を咲かせるための材料にされるに違いない。
そうはさせない。この命は私のものだ。世界であろうと好き勝手させてたまるか。というか感動とかそういうのキャラじゃない。
最悪感動の材料にされるとしてもシオンを私に縛り付けてしまうのだけは我慢ならない。だから私を、『黒田純香』というキャラクターをここで退場させるのだ。
力が抜けそうになる体に無理矢理渇をいれて立ち上がる。噛み締めた唇が裂け血が流れた。
「俺はっ、――私はっ! 悲劇のヒロインなる気も! 誰かを縛る鎖になる気もっ! さらさら無いっ!」
そうして私は踏み出した。始めるための一歩ではなく、終わらせるための一歩を。
落ちていく。
見上げた空が遠くなっていく。
あと数秒もすれば私は地面に叩きつけられるだろう。痛いだろうか?それともそんなもの感じる前に終わるだろうか?
できれば後者がいい。
だけどどちらだったとしても後悔はない。
口を歪め世界を嗤う。
ざまーみろ世界。
それと……私のことは忘れろよ?
シオン。
どうしようもなく残酷で、どうしようもなく自分勝手な願い事。
それが私の最後の思考だった。
――――○○市の○○病院の敷地内で入院患者の少女(17)が倒れているのを――――
――――警察は飛び降り自殺として調査を――――
『ED2 自分勝手な思いやり』
自分の幸せより他人の幸せを望んだ故の結末。
黒田さんの余裕の無さを表現しきれただろうか?正直あまり自信がない。
でも死という逃げたのは黒田さんもいろいろ限界だったから。そういうことにしといて。
さーて、次はHAPPYエンドだ。TS小説ならではのエンドにできるようにがんばりたいです。




