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恋物語の片隅で  作者: 那智
番外編
45/64

黒田君IF ギャルゲー編 分岐

イベント発生ですよ。

一応それっぽく書けたとは思うんですが・・・うーん、どうだろ?

その日の放課後、私はうっかり忘れた『帝王学のすすめ』という本を取りに教室に戻っていた。

ただ自分の本を忘れただけならこうして取りに戻らず後で回収すればいい話だったがその本は貰い物なのだ。なるべく貰い物を放置というのは避けたい。

ふと思ったのだが何故小雛はこんな本を私に薦めたのだろうか?少し前に私に「おねぇさま、小雛のご主人様になってください」とか言ってたかどそれは冗談だろうし……冗談だよね?

なまじ可愛いだけに洒落にならないことを言う後輩への疑念を胸に抱きつつ教室前までたどり着いた私はそこで教室に人がいることに気がついた。はて、こんな時間に誰なのか?私と同じように忘れ物した奴か?

そう思って教室を覗こうとして


「私、シオン君が好きなの! だから……その、私と付き合ってくれませんか!」


教室の中からそんな声が聞こえると共に私は素早く物陰に隠れた。

え?告白シーン?なんで教室でやんだよ屋上のほうがそれっぽいだろ!つか教室なんかでやったら忘れ物して戻ってきた奴が気まずい思いしちゃうかもしれないじゃないか!てか私がそうだよ!現在進行形で気まずいよ!

というかシオンって言ったよね?なんでよりによってシオンがLIVEで告白されてる現場に来ちゃったの私。気まずさが当社比二倍なんだけど。

くそ、忘れ物取りに来てまさかこんなシーンに出くわすとは思ってもいなかった。だって普通ルート確定後って他のヒロイン蚊帳の外じゃないか。告白シーンで他のヒロイン登場とか空気読めてないにも程がある。

だというのに何故私はこのような事態に陥った?これは彼に想いを寄せていたヒロインの如く「そんな……」って感じのリアクションでもしろというのか?それとも幼馴染みとして見届けろという神のお達しなのだろうか?神様なんて嫌いだ。


気を取り直してそっと教室を覗く。軽くパニックになってしまったのでバレてないかちょっと心配になったのだ。

しかし心配は杞憂だった。どうやら完全に二人の世界が展開されているので私には気づいていない。よかった。

ちなみに位置を説明すると私が教室の扉のすぐそばにあて、その私から見て教室の窓際に二人が、右側にシオンがいて左側にヒロインであろう娘がいる。

あの人は前に会ったことがある。名前はたしか……覚えてない。一応先輩で委員長キャラだったことは覚えてるけど。あ、苗字は薙沢だったか?ぶっちゃけ接点ほとんどないから知らん。

まあ一つわかることはきっとシオンは薙沢先輩ルートに行くんだろう。たぶんゲーム的に考えて何かしらの障害があると思うけど頑張ってほしい。そしてなにか困ったことがあったら言ってくれ。全力で手伝おう。


「ごめん。 僕、伊月先輩の想いには答えられないんだ」


あー、そうだそうだ。思い出した薙沢伊月だあの子の名前。やー、一応前に名乗られたのにけっこうポロっと忘れちゃうもんだね。

って、あれ?シオンまさかのお断り?それギャルゲー的にいいの?

意外だなー、押しに弱いシオンのことだからギャルゲー云々差し引いても告白されたらオッケーすると思ったのに。

その返事を聞いた薙沢先輩は泣き出してしまった。まーショックだろうね。好きな人に勇気だして告白して断られるってのはとんでもなく辛いだろう。経験ないからわからんけど。

でも断られた理由を聞くのはどうかと思うよ?「どうして!?」じゃないだろ、理由聞いたってどうこうできるもんでもあるまいし。


さーて、なんか修羅場の予感もしてきたし、とりあえず見つかる前に撤収しますか。この状態で見つかったら薙沢先輩の傷口に塩塗るってレベルじゃ済まない。おそらくからし、わさび、トウガラシ、いやコチュジャン。そういうレベルだ。

失恋の傷は時間に癒してもらうのが一番だからね。それでは余計なこと聞く前にさっさと退散を―――。


「僕……純香のことが好きなんだと思う」


……………………ファッ!?


何が起きた?いや、というかあいつは、シオンはなんと言った?好き?誰が誰を?シオンが純香を?純香とは誰だ?―――私だ。

もはや頭は混乱の極みである。なんで律儀に答えてんだ?とか、ある意味追撃じゃね?とか、今日の夕飯なんだっけ?とかそういう疑問が浮かんでは消えていく。

薙沢先輩とシオンは引き続きなにか話しているようだが内容を理解する余裕は私にはなかった。


完全にパニックになる前に私にできたことは彼らに見つからないうちに脱兎の勢いでその場から逃げることだけだった。




どれくらい走っただろうか?気がつけば私は歩道橋の上にいた。どうやら階段の途中でバテて正気を取り戻したらしい。だらしねえな私。


「……混乱していたとはいえ暴走しすぎたな。 疲れた」


とりあえず疲れたのでその場でしゃがんで頭のクールダウンを試みる。が、全然クールダウンしない。ちくしょう。

ああ、クソ。あの程度のことでここまで動揺するなんて童貞でもあるまいし……って私童貞だ。経験ないし。いや、正確に言えば今の私は女なので男性特有のアレはないから童貞では無いかもしれんが。まあ、どちらにしろ経験はないので問題ないだろう。

思考が脱線した。

そう、問題はあくまでシオンが、その……私のことが好きと発言したことなのだ。

今まで私はシオンのことをそういう対象として見たことはない。それはアイツがポジション的に弟っぽいからというのも理由の一つだがもう一つ私の根本に関わる理由がある。

私は元男だ。たまに忘れたりするけど私は男として生きてきた記憶を持っているのだ。今まで散々女らしくとか言ってきたがその実男とそういう関係になることについては考えていなかった。

どうしてもそういうことについて想像できず「たぶん女らしくしてればいつかその辺の自覚とか生まれるだろ」と考えることから逃げていたせいだ。そして今日それを突き付けられた。

どうすればいいどうすればいいどうすればいい?もしあいつから告白されたらどうすればいいのか。告白をうければいいのか、それとも断るべきか。そもそも今の私に恋愛なんてできるのか?

………実際に告白されてから考えるか?

うん、そうしよう。結局問題の先送りでしかないがそうするしかない。よーし、この話終わり!帰る!


問題が何一つ解決していないことを誤魔化すために無駄に勢いをつけて立ち上がったのが不味かった。

いろいろぐだぐだ考え事して頭から抜け落ちていたのだがここは階段である。しかも一番上の広いスペースではなく階段の途中であるため当然足場は狭く後ろに支えなどもない。

故に足を踏み外してしまうのはある意味当然といえた。

足を踏み外した私の身体は後ろに向かって倒れていく。この場で倒れてしまえば階段を転がり落ちた挙げ句地面に叩きつけられることは必至でありこのままではグシャアな未来しか見えない。


だが甘く見てもらっては困る。これでも私は転びそうになった際のリカバリー能力には定評があるのだ。

なにせ生まれ変わったばかりの時はそれまでの大人の身体と現在の子供の身体の大きさの違いに私は苦しまされていたのだ。

身体の動かし方は大人のものを覚えているのに実際には子供の身体。その違いに困惑し混乱しバランスを崩すことは多々あった。だがそれも時間と共に現在の身体に慣れていくことによって転ぶことは少なくなりたとえ転んでも咄嗟に受け身をとったり近くのものに捕まってリカバリーできるようになった。その経験によってバランスを崩したときの復帰能力が鍛えられたのだ。


今こそその成果を見せるとき!


経験を活かし手すりの位置を素早く確認すると慌てずしかしそれでいて素早く手を伸ばし―――手すりを掴もうとした私の手は空を切った。


あれ?


私の体はそのままバランスを崩して倒れていく。不味いことにここは階段。それなりの高さがある。


―――あ、これ死んだかもしれない。


それが私が衝撃と共に意識を失う直前に考えたことだった。





僕は走っていた。今までの人生でこんなに必死になったことはないと断言できるほど必死で走っていた。

途中何度も病院の人に注意をされたがそんなこと構ってはいられない。一刻も早く彼女の無事を確認したかった。

純香のお母さんから部屋の場所は聞いてある。目当ての病室を見つけるとドアに手をかけ勢いよくドアを開けた。。


「純香っ!」


「騒がしいぞシオン」


そこにはいつもと変わらない様子で声をかけてくる純香の姿があった。

身体の所々に包帯を巻いている痛々しい姿だったがベッドの上で上半身を起こしのんびり本を読んでいるのを見て安心し、途端に力が抜けた。


「よかった…………」


「まあ、今回は心配をかけたな。 すまん」


そう言って頬を掻く彼女が無事だったことが嬉しくて目頭が熱くなる。それを気付かれる前にそっと拭うのだった。




「全治一ヶ月だそうだ。 派手に転んでこれなら幸運だろう」


医者の話では頭を強く打っていたらしいが検査の結果異常はないため安心していいとのことだった。

それを聞いて安心したのかシオンは笑みを浮かべた。随分と心配をかけてしまったらしい。


「そっか。 」


それから雑談をして過ごしていたが時が経つのは早いもので外を見ればすでに日が落ちかけていた。


「おいシオン、そろそろ帰らないとまずいんじゃないか?」


「あ、ほんとだ。 じゃ純香、お大事にね」


また来ると言ってシオンは帰っていった。

それを見送ると一つ息を吐いた。


「さって、と」


自分の異常を確かめておく必要があった。



まず目の前にあるコップに手を伸ばし掴む。うん、これは問題ない。

次に近くの棚の上にコップを置き、改めて手を伸ばす。今度は掴めなかった。伸ばした私の手はコップの前の空間を掴んでいた。


これは幼少期に苦しまされた症状と同じだ。

子供の頃よりはマシだがそれでも今の私は小柄な方なので成人男性と比べるとその差は大きい。

幸い注意すれば問題ない程度のズレであるが何事も慎重にならないといけない。今の自分では些細なミスが致命傷になりかねない。


何故突然こんなことになったのか。考えてもわからなかった。


「ま、考えてもしかたないか。 とりあえずリハビリだリハビリ」


その日はそう結論付けて考えるのをやめた。




入院から数日後、階段降りようとしたときのことだ。


「わっ!」


足を踏み外し階段から転げ落ちた。


「大丈夫!?」


「……つつ、だ、大丈夫です」


近くにいた看護師が慌てて駆け寄り立ち上がるのに手を貸してくれたがその時の私は転んだ時の痛みよりもショックで呆然としていた。

昨日までリハビリがてら何回か階段を上り下りしたが問題なく降りれた。感覚も掴めてきたはずだった。

なのに今日はどうもおかしい。なんとなくだがズレがひどくなった気がする。もしかしてこれはだんだん酷くなっているのだろうか?

もしズレがこれ以上酷くなれば自分はどうなってしまうのだろうか?それを想像して震えた。

ベッドで寝たきりなんて冗談じゃない。


そしてその日から悪夢を見るようになった。




純香が入院してから早一週間が過ぎた。

一週間の間に何回かお見舞いに行ったけど行く度に純香の顔色は悪くなっていた。彼女は「寝不足だ」と言っているがそれだけなのか。不安が募る。

だが純香はいつもの純香だった。淡々とした喋り方も気だるげな瞳も何も変わらない。

きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせようとしたときだった。


ふと、純香の顔に影が差した。


「なあシオン、しばらく来るのを控えてくれないか?」


「え!? なんでさ……」


「さっきはああ言ったが最近調子が悪くてな、弱った姿をお前に見られたくないんだ。 それにこれからリハビリも大変になるだろうしシオンが来たら私はお前に甘えてしまう。 だから……」


初めて見る純香の弱々しい態度に僕は―――。


―――《選択肢》―――


1、純香の提案に従う


2、断固として純香の側にいる


けっこー時間かかってますがそのおかげで本編の夏休み編の流れをどうするかが決まりました。

夏休み編は初心に返り、イベントだけでなく日常も書いていきたいです。

ポロリはないよ!



ちなみに選択肢はお遊びです。ちゃんと両方のルート書きます。

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