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恋物語の片隅で  作者: 那智
7月
37/64

いじめは駄目です

このイベントはそこまで長くならない・・・といいな!


「黒田さん、ちょっとよろしいかしら」


生徒会室で雑用をこなした帰りに小鳥遊先輩に呼び止められた。


「どうかしました?」


「ええ、少しお話が……」


む、これは厄介事の予感。でも逃げるわけにはいかんよね。

まったく何でこうも俺に厄介事が集まってくるのか。まあ半分ぐらいは自業自得だろうけど。

小鳥遊先輩はキョロキョロと周りに誰もいないことを確かめてから意を決した様子で切り出した。


「その……実はこんなものがわたくしの机の中に入っていましたの」


小鳥遊先輩は鞄の中から紙切れ―――いやよく見ると手紙っぽい―――を取りだし俺に見せた。

一瞬「ラブレター?」と思ったがそれなら俺に見せる意味がない。というか他人にラブレターを見られるとかそれなんて罰ゲーム?書いた人が可哀想だ。

しかしその心配は杞憂だった。どうやら話を聞く限り脅迫文の類らしい。いや脅迫文と言うにはおざなりな物だが。

その手紙には「緑川君に近づくな」という文字が殴り書かれたような筆跡で書かれていた。殴り書きなのは筆跡を隠すためかそれとも感情のままに書いたからか。……後者だろうな。

そして地味に気になるのは使用されてる紙が女の子が使うような可愛らしい装丁がされていることだ。可愛らしい装丁と手紙の内容がアンバランスすぎる。使う紙を適当に選んだとしてもさ……これもうちょっと考えようぜ。

でもまあこれで犯人が女性なんじゃね?という予想が出来た。

となると容疑者は緑川先輩のファンクラブの人間である可能性が高い。というか十中八九そうだろう。他にこんなことする人思いつかん。

問題はファンクラブの『誰が』やったことなのか。末端の暴走か、上の人間の独断か、それともファンクラブの総意なのか。まずはそれを確認する必要があった。


「えっと、わたくしはどうしたらいいのかしら? これおそらくファンクラブの人達の仕業ですわよね?」


「んー、とりあえずファンクラブの行動を警戒しときましょうか。 なるべく人気の無いところにいかない感じで。 でも生徒会に助力を求めるのは無理です」


「なんでですの?」


「この程度じゃ動きようがありませんから。 言いたくはないですが生徒会だって暇じゃありませんので」


いじめ等の生徒間の問題を解決するのも生徒会の仕事だがちょっと嫌がらせされた程度では動かないのだ。だってその程度でいちいち動いてたら忙しいってレベルじゃなくなるし。他にもやることあるんだよ。

そう言うと小鳥遊先輩は目に見えて落ち込んでしまった。まあ当然か。実際突き放したんだし。

―――でもこれで第三者から見ればこの問題に生徒会は関与しないと見えただろう。


「そんな落ち込まないでください。 ちょっと気分転換しましょう。 いい場所知ってるんですよ」


というわけで俺は半ば無理矢理小鳥遊先輩を連れてある場所へと向かった。




「ここがいい場所ですの?」


小鳥遊先輩をつれてきた場所は屋上だ。屋上は基本使用許可がないと入れないが俺は天文部なので無問題である。


「ええ、眺めは良いですし今日は風が吹いていて涼しい。 それになにより屋上の扉は厚くて盗み聞きされる危険がありませんから」


「どういうことなのかしら?」


なんのことかわからないらしく首を傾げる小鳥遊先輩に説明をする。


「あそこじゃ会話を盗み聞きされるかもしれませんからね。 そうでなくてもデリケートな話題ですし万全を期したかったんですよ」


「盗み聞き……ですの?」


「勉強会をした頃からちょくちょく知らない人がこちらの様子を窺っていたのには気づいてましたからね」


今思えばあの時に怪しい人影に気づけたのは幸運だった。あそこで気づけたからこそ『もしかして』と思うことができたし、その後の監視にも気づくことができたのだ。


「結論から言わせてもらえば生徒会や先生方に助けを求めるのは決定的な証拠を手に入れてからです。 でないとさっき言ったようにまともに生徒会は動けませんし、動いたとしても指示した人間にたどり着く前に蜥蜴の尻尾切りされる恐れがあります」


それじゃあ意味が無いのだ。やるならとことんやる。


「それではどうしたら?」


「なので紫苑と青葉先輩、それと赤海先輩に俺が“個人的に”協力を求めてみますよ」


「あら、その三人というと……」


「はい、勉強に参加していない人達です」


おそらくだが目を付けられたのは勉強会の時から。その時一緒にいた面子はマークされているだろう。俺もその中に含まれているだろうからちょっと動きにくそうなんだよな……。顔覚えられて無いと考えるのは楽観的過ぎるだろうし。

あ、顔覚えるといえば小鳥遊先輩に確かめたい事があったんだった。


「そういえばファンクラブに所属していた時にメンバーの顔とかは見てないんですか?」


「見たは見たのですけどあまり積極的に関わろうとはしてなかったのでうろ覚えなのですわ。 名前も知りませんし……」


むう、その辺が分かれば楽になるんだがそう簡単にはいかないか。世の中そんな甘くない。

とりあえず小鳥遊先輩にはしばらくは何事も無かったかのように振舞うことをお願いしその場で別れた。

さて、俺は犯人確保のための策を考えないと。まずは三人を呼ぶか。

え?その話し合いに小鳥遊先輩は呼ばないのかって?ははは、何をおっしゃる。あくまで三人は俺のお願いで動くのです。少し前に不良モドキのゴタゴタがあったからけっして小鳥遊先輩のためではない。

まあ建前だけど。そうしないと嗅ぎ付けられるかもしれんからねぇ……女性の情報収集能力はすごいから……。



それから生徒会室に三人を呼んで話をすることにした。ちなみに白波先輩はめずらしく今日はいなかった。


「それで俺様達を呼んだって訳か」


「その通りです。 協力してくれますか?」


「う、うん。 僕で良いのなら……」


「これも生徒会の仕事の内だろ。 それにテメェには借りがあるからな」


「ありがとうございます。 紫苑も協力してくれるか?」


「もちろん! 小鳥遊先輩とは私も友達だしね!」


よっしゃ。この三人が居れば心強いな。青葉先輩は慎重だし、赤海先輩は万が一の場合頼りになるし、紫苑は今回の場合は女の子ってだけで色々助かる。

しかし素直、引っ込み思案、ツンデレ。ほんと属性が多彩だなあ。流石乙女ゲームだぜ。いや紫苑は主人公だけど。


少し話し合ったが地道に見回るしかないのでは?という結論に落ち着きそうだ。

しかし決定打が足りない。これじゃ根本的な解決は厳しいだろう。どうしたものか。


「えっと、待ち伏せ……とかどうかな?」


「待ち伏せですか?」


「へぇー、青葉先輩もけっこう過激な意見言うんですね」


意外なことに意見を出したのは青葉先輩だった。

この時自分の子供が授業参観で頑張って手を上げたのを見た親の気持ちになったのは秘密だ。いや親になったことなんてないから親の気持ちなんてわからんけどね。


「うん。 僕も昔……その、いじめられてたからわかるんだけど嫌がらせする人って何回も同じことして反応を楽しもうとするんだよね……。 だから無視するっていうのが最善なんだけど」


「なるほど。 今回はそれを逆手にとってもう一度同じことをやらせるわけですね。 そしてそこを捕らえると」


「え、あ、うん。捕まえるとは言ってないんだけど……えっと、どうかな? 」


「ナイスアイディアです。 それなら背後に指示した人間がいても引きずり出せます」


苦手な赤海先輩のとなりでもちゃんと喋れた青葉先輩の健闘を称えグッとガッツポーズ。ちょっと青葉先輩が引いてるけど問題ない。赤海先輩は乗り気だし紫苑は苦笑しているが文句は無いっぽいから問題ない。

そして青葉先輩の案を元に計画を練った結果。


「じゃあ俺と青葉先輩で待ち伏せしますから赤海先輩は紫苑とバックアップお願いします」


「ああ、任せろ。 あとは軽く見回りしてればいいんだろ?」


「はい、お願いします。 じゃあ青葉先輩、がんばりましょうね」


「う、うん」


こんな感じの役割に分かれた。俺と青葉先輩が待ち伏せ。赤海先輩と紫苑が見回りとバックアップだ。

ここで赤海先輩の悪評も利用するのもポイントだ。名付けて『まさか不良モドキの赤海先輩が他人のために尽力するはずがない作戦』。

ククク、一年生はともかく二、三年生の先輩方は今までのやんちゃなイメージ的に考えて綺麗な赤海先輩なんて想像もできないだろう。その固定概念が命取りよ。

しかしゲームとかでありがちだけどなんでチンピラとか不良が改心して味方になると地味に頼りになるんだろうね?


「では行動は明日の放課後からです。 解散!」





「ふぅ……」


「どうしたの純?」


作戦会議が終わったあと少々黄昏ていると紫苑が声かけてきた。


「いや、赤海先輩の時もそうだったけどこういうのは後手に回らざる得ないのがな……もどかしくてしょうがない」


やっぱり理想は事が起こる前になんとかすることだけど現実はそうはいかない。知識だけあっても証拠、動くだけの理由がなければなんの意味もないのだ。

いや、なんの意味もないと言うのは言い過ぎか。少なくともその知識のお陰で対策を練れてるんだからな。


「あーあ、なんで嫌がらせとかするのかね? ほんとめんどくせえ」


「ふふふっ」


「ん? どうした?」


「純ってさー、けっこう頭良いのに絶対使いどころ間違ってるよね」


「いきなり失礼だな」


何故か楽しげに笑いながら紫苑が喧嘩売ってきた。

というか何が間違ってるというのか。こんなにも先輩を救おうと頑張っているのに。


「だってさ、普通はイタズラした犯人を捕まえようとは思ってもそこから黒幕を引きずり出そうなんて思わないよ。 せめて実行犯を捕まえるくらいでしょ」


甘い。甘すぎるぞ。恋は戦争だと言うだろう。相手が手段を選ばんのならこちらも選んではおれんのだ。

それにこういうのは根本から断たんと再発の恐れがあるのだよ。逆恨みされる可能性もないわけじゃないしな。というか現状小鳥遊先輩は逆恨みされてるようなもんだしな。「自分を差し置いて緑川先輩と仲良くなってんじゃないわよ」的な感じで。

しかしいじめに関しては前世の方がえげつなく発展してたっぽいからそういう知識はあるんだよな。どれくらいヤバイかというといじめが社会問題になるレベル。


「純って昔からいじめられてる人とか見ると助けてたよね。 仲の良いクラスメート巻き込んでまでね」


だってクラスでギスギスとか嫌じゃん。濃い高校生活になるのは目に見えてたから小、中ぐらいはのびのびしたかったんだよ。それにあれくらいの歳ならいじめる理由も大したことないしな。

つかお前も人のこと言えなかっただろうが。何も考えずに首突っ込んでは俺がなし崩し的に協力することになるのはお決まりのパターンだったし。


「ま、協力してあげるんだから感謝してよね!」


「というか今まではお前が周りを振り回す側だっただろ。 たまには俺に振り回されてみろ」


「ええっ!? 私そんなことしてないよ!? そ、そりゃまあ純にわがままは言ってるけどさ」


はっはっは、ぬかしおるわ。乙女ゲー主人公的に考えて攻略対象共を散々弄んでいるくせによく言うわ。まあ、無自覚なんだろうけど。

計算でやってたらなんか腹黒いイメージがね……。つかそんなヒロイン嫌だ。

ま、それはともかくうまい具合に引っ掛かってくれるといいんだけどね。


あ、次の話でサブキャラ出します。今いる登場人物だけでぶんまわそうと思ったけどさすがに無理。

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