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恋物語の片隅で  作者: 那智
7月
36/64

案内をしましょう

最近バイトが多くて書く時間が確保できない。

それにほかに書きたいのとかもあるからなかなかね・・・。

ある日の休日、俺はパラパラと本を捲りながら校門の前で立っていた。

そんなところで何で本を読んでいるのかというと待ち合わせをしているのである。誰と待ち合わせだって?……うん、その話は後にしよう。

そんなことを考えるよりも優先されるのは本である。今俺は待ち人が来るまでにキリの良いところまで読み終わるか否か試しているのだ。

キリの良いところまで読み終われば俺の勝ち、その前に待ち人が来れば俺の負け。なお、俺が勝っても負けても誰にも俺にも影響はない。端的に言えばただの暇潰しだ。

また、ラノベならどこで切っても大して変わらないと言われるかもしれんが問題ない。今俺が読んでいるのは「中間管理職のすすめ」という本だ。ラノベとはほど遠い。

ちなみに何故こんなものを読んでいるかというと前々から自分の生徒会での立ち位置が中間管理職っぽくね?と思っていたからだ。

だがよくよく考えてみれば真の中間管理職は白波先輩ではないかと思えてきた。先生方という名の上司もいることだし。

そうすると俺の立ち位置はどこになるのだろうか?係長?あれ、係長も中間管理職じゃね?


そんなことを考えている間にどうやら待ち人が来たようだ。

今読んでるところは……キリが悪いな。俺の負けか。少々へこみつつ待ち人を出迎えることにした。


「少々遅くなりました。 待ちましたか?」


「当たり前だろうが。 ったく、ギリギリまで仕事しやがって。 って、どうした黒田。 なんか落ち込んでるみてえだが」


「あ、いえ何でもないです」


おっとうっかり。へこみ具合が顔に出てたらしい。

しかし「待ったか?」と聞かれた場合「今来たところ」と返すべきなのだろうか?いやこれは恐らくだが恋人専用の挨拶だろう。第一本を読んでいたからそこまで気にならなかったとはいえそれなりに待ったのだからそう言っては虚偽報告になってしまう。


「そうか? ならいいが。 ならとっとと行くぞ」


「そうですね。 予定より少し遅れてしまいましたし急ぎましょうか。 黒田、これは大まかな予定です」


「あ、はい。 って白波先輩? この予定表、分単位で予定が詰め込まれているんですが」


渡された予定表にはびっちり予定が書かれている。なんで移動時間まで指定されてるんですかね?これ大まかなの?

とりあえず白波先輩は「大まか」という言葉を辞書で調べてくるのをおすすめします。もし万が一白波先輩が正しく意味を理解していた場合ちゃんと書いた予定表はびっちりじゃなくてみっちりレベルなんだろうなぁ。

呆れ混じりに予定表を眺めていると突然紙をひょいと取られてしまった。赤海先輩だ。


「なんだこりゃ?」


どうやら白波先輩の予定表(大まか)はそれなりに付き合いが長いはずの赤海先輩でも引くものらしい。

そのまま赤海先輩はその予定表をぐしゃぐしゃに丸めて捨て―――ようとしてポケットの中に押し込んでしまった。

うん、ポイ捨てはいけないことですもんね。最近ほんと赤海先輩キレイになったな。

人が成長するのを見るのは感慨深いものがある。年下が年上の成長にしみじみするってかなり変な感じするけど。


「ちょっと、何をするんですか太陽」


「うっせーな。 機械じゃねーんだからこんな細かく動けるわけないだろうが。 こんなもんどこ行くか決めるだけでいいんだよ」


もっともである。

というか動けたとしてもそんな余裕のない予定は嫌だ。できればぐだぐだしたい。


「まあまあ。 とりあえず行きましょう。 予定なんて向こうついてから考えたって問題ないですから」


赤海先輩に味方する形でその場をてきとーに諌めショッピングモールに向かうのだった。




「しかし突然ショッピングモールを案内してくれだなんて驚きましたよ」


ショッピングモールに向かう途中白波先輩と赤海先輩にそう話を振ってみた。なお、別に移動中の沈黙が気まずかったからではない。


「そんなに驚くことですか?」


「ええ、まあどっちかというと白波先輩が今までショッピングモール行ったことないことに驚きましたけど」


「だろうよ。 俺様だって驚いたんだからな。 ま、こいつは箱入りだから納得できるがよ」


今回二人にショッピングモールを案内することになったきっかけは白波先輩が俺にショッピングモールを案内してくれないかと頼んできたからだった。

なんでも白波先輩は今までショッピングモールに行ったことがないらしい。今までは行く必要がなかったからだろう。

しかし白波先輩はそれではいけないと思ったらしく一度ぐらいは行ってみるべきだと思ったらしい。とりあえず赤海先輩を誘ったものの赤海先輩も特に詳しくないとのこと。これでは案内を頼む意味がない。

そこで何度かショッピングモールに行ったことがある俺にお声がかかったわけだ。


なんで俺なの?青葉先輩は……まああの性格だから仕方ないとはいえ緑川先輩でもよかったんじゃないですかねぇ?

それに俺は前に黄野や青葉先輩、そして紫苑と来てからも何度かショッピングモールに足を運んだが色んな場所を巡った訳ではない。

いつも行くファミレスや本屋、そしてスーパーの場所とかはバッチリだが緑川先輩に教えて貰った女性向けの店の場所なんかは覚えちゃいない。もう一度行きたいとも思わない。

というかよく考えたら案内板とかあるんだから案内必要なくね?

いやいやもしかしたらお二人は地図を見ても迷うタイプの人間かもしれないし案内は必要た。それに案内して貰った方が記憶に残るしね。

そんな感じで自分に言い聞かせていると欲しい本があったことを思い出した。


「本屋に寄っていいですか? ほしい本があるんですよ」


「ええ、いいですよ」


「俺様もかまわないぜ。 もう買うもの決まっているならそんな時間もかからないだろ?」


お許しが出たので本屋に突貫する。この瞬間はいつも胸が高まるものだ。

店に入り思わず新刊のコーナーに行きそうな足を必死に止める。行きたいのは確かだがその前に来た目的を果たしてからにしよう。確かこの辺に……。


「お、あったあった」


と、そこでようやくお目当ての本を 見つけた。早速レジに持っていき購入する。

カバーをかけられた本を片手に白波先輩達のもとに戻ると白波先輩が興味深げに買った本について聞いてきた。


「どんな本を買ったんですか?」


「『実録!本当にあったいじめ大全』って本です」


ちなみに税込みで745円である。想定よりも安くてよかった。

でも何故か白波先輩と赤海先輩にはちょっと引かれた。小鳥遊先輩のいじめ対策の件で小説の描写だけじゃ物足りないので買ったのだがなにか不味かっただろうか?


そのあとは白波先輩の予定表に書いてあった場所を優先的に案内した。場所が知りたかっただけで今は用がないらしいのですいすいと案内は進む。

なんか白波先輩は見るものすべてが新鮮とでも言うかのように興味深げにしているので案内している方もなんか楽しい。この人どんだけ箱入りやねん。小鳥遊先輩といい勝負か?

無論それだけじゃつまらないので予定表に書いてあった場所以外も案内した。主にゲーセンとかゲーセンとかゲーセンとか。人生には遊びが必要なのだよ。

だが白波先輩はゲーセンには興味が無いようだった。明らかに浮いていたししょうがないけど。

まあなんでもそつなくこなす白波先輩がゲーセンに手を出したらなんやかんやで黄野のお株が奪われていたかもしれんしこれでよかったと思う。よかったね、黄野!


そうこうしている間に時刻はお昼時に。お腹がすいたのでショッピングモール内のファミレスで昼飯を食べることにした。前に黄野と青葉先輩と来たところだ。

ちなみに今回はみんな無難にランチセットを頼んだ。ランチセットって値段の割に豪華だからね。ハズレがないって素晴らしい。


「黒田、今日はありがとうございました」


料理が運ばれてきてから赤海先輩と白波先輩が話している。その間に密かに赤海先輩の皿にサラダのトマトを移住させていると白波先輩が話しかけてきた。

おい危ねえな。移住計画がバレるだろうが。


「お礼言うにはまだ早くないですか? まだお昼ですよ?」


「いえ、ここまでだけで私の視野が狭かったことは十分理解できましたから。 どうも私は人の心の機微についてまだまだ理解できてないことが多いようです」


「お前はなんでもそつなくこなすからな。 できねえやつのこととかわからねえだろ?」


「ええ、ですからこれからはもう少し歩調を合わす努力をしたいと思っているのですよ」


何この人、覚醒でもするの?これ以上パワーアップしてどうするというの?というか完璧超人はそれゆえに凡人の気持ちが理解できないことが持ち味なのに理解できてしまったらそれもう完全体じゃないですか。


「私もまだまだ世間を知りませんからね。 これからはもっと外に目を向けなくては」


というかショッピングモールに来た感想がこれって……同じ感想を抱く人何人ぐらいいるんだろ?


「だったら何度でも外に出たらいいじゃないですか。 ショッピングモール来るだけでもかなり違うと思いますよ。 あ、今度は紫苑でも誘ってみたらどうですか? その方が白波先輩にとっても色々都合がいいのでしょうし」


「な、なぜそこで高倉が出てくるのですか!」


珍しい白波先輩の狼狽についニヤニヤ。こういう話題に年齢なんて関係ないよね!

白波先輩にも頑張ってほしい。黄野や青葉先輩はなかなかアプローチしないからぐだぐだだしいい刺激になればいいんだが。

え?お前は誰の味方なんだって?

いやいや俺は誰の味方でもないよ?とりあえず後押しはするけど基本は応援するだけだからな。まあ一番タチの悪いタイプである。

でもこれならもし万が一三人が紫苑をめぐってギスギスしても俺は蚊帳の外から傍観できる。そしてそのギスギスをどうにかする手伝いぐらいはできるかもしれないのだ。ふふん、完璧な計画だ。思わずどや顔。



その後白波先輩は一人で考えたいことがあるらしく帰っていった。そして残される俺と赤海先輩。

さて、これからどうするか。帰るには早い時間だし、かといって特に行きたい場所もない。


「おい、黒田」


そう頭を悩ませていると赤海先輩が話しかけてきた。なんじゃらほい。


「お前気づいてたのか? 泰斗が紫苑のこと気にしてることをよ」


「ええまあ、あいつに恋心抱くやつはごまんといましたからね。 なんとなくわかるようになりました」


転生してから一番磨かれたスキルが他人の恋心を見抜くことって正直どうなんだろうね?将来の役にたたねえ。


「そうか。 で、お前はどうなんだ?」


「どう、とは?」


はっきり言えよ。じゃないと言いたいことなんて伝わらないんだよ?


「紫苑のことだ。 てめえはあいつとは長い付き合いだろ? なんか思うところはねえのか?」


むう、思うところねえ……。


「うーん、そりゃ紫苑のことはそれなりに好きですし幸せになって欲しいですけど……まあ、その程度なんですよ俺の想いは」


「? どういうことだよ」


「まあ、簡単に言えば幸せになって欲しいだけで特に自分で幸せにしたいとは思ってないんですよ。 その時点で本気であいつのこと好きな人には及びませんし、誰かの恨みを買ってまで結ばれたいとも思ってないということです」


まあ、なんやかんやで俺も結局今の関係が壊れるのが怖いだけなんだよな。あいつがどう思ってるかもわからないし、関係を壊してまで確かめようとも思えない。

そう、いわゆるあれだ。幼馴染である期間が長すぎて恋愛対象としてみれないってやつた。

そういう意味では前に言った妹みたいな存在っていうのはなかなか的を射た表現だったな。

及川におすすめされた本でもこうなった主人公とヒロインが結ばれるには大きなイベントとか必要だったしこの認識を変えるのは難しいんじゃないだろうか?

しかしこれから先、意識を変えるような出来事なんてあるのかねえ?

黒田君の紫苑さんへの好感度はイベント発生条件にちょっと届かないぐらい。

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