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恋物語の片隅で  作者: 那智
6月
30/64

約束しましょう

「再誕世界の黙示録」を先に投稿するといったな。あれは嘘だ。

(訳 黙示録より先に書き終わったので投稿しますね)

夜、自室に戻った俺は英語の教科書を読んでいた。

学力というものは日々の勉強の積み重ねである。毎日少しでもいいから欠かさず勉強を続ければきっと身に付くと先生方も言っている。

そして前世で英語の成績が散々だったためにそれを信じて毎日英語の勉強をしている俺が英語を理解しているのかというと


「うん、さっぱりわからん」


答えは否である。

わかるか、わからないかで言うと圧倒的にわからない。誰だ日々の積み重ねが大事だとか言ったの。びっくりするほど理解できんわ。

これは俺の脳が英語を受け付けない仕様なのか、それとも賽の河原よろしく積み上げたものを誰かに崩されているのか。誰だ崩してるのは。ぶち殺すぞ。

というか英語と日本語を客観的に比較すると日本語のほうが複雑だと思う。英語で使われているのはアルファベットだけだが対して日本語はひらがな、カタカナ、漢字の三種類の文字で構成されている。何も知らんなら「なにこの暗号」ってレベルのはずだ。

そんな日本語を理解できているのに何故英語が理解できんのか。やはり幼少期の頭の柔らかさは尋常じゃないのか。くそ、勉強しときゃよかった。

でもその場合周りから変な目で見られた可能性があるのでやれたかどうかは別である。英語の本を読みふける幼児とかなんか怖いし。こちらとら普通の人生を送りたいのだ。めんどうな事はゴメンだ。


しばらく英語の教科書で授業の復習をしていたが結局あまり成果はなかった。ちくしょう。

むう、しかしこれでは海外の本を読むことなど夢のまた夢か。おとなしく翻訳されるのを待つとしよう。まあ、本のことはいい。今問題なのはテストである。

しばらく自習をして実感したのだがやはり一人では限界がある。理解できないもんを一人で理解しようとしてもそれは非常に厳しいのだ。

ここは誰かに教えを乞うべきだろう。できればマンツーマンで。でなければ理解できない。そうでなくても出来るだけ少人数が望ましい。

そうなるとまず教師は除外される。勉強を教えるのが本職なのでこれ以上ない適任ではあるがマンツーマンは不可能だからだ。頼めばやってくれるかもしれないが他にも教師を頼る生徒はいるのだ。独占はできない。

なのでやるなら青葉先輩と紫苑は除くとして赤海先輩、緑川先輩、白波先輩、小鳥遊先輩の誰かに助けを求めるか、もしくは黄野や及川と勉強会するしかない。

そしてここで問題になるのは誰とやるべきかということである。

とりあえず白波先輩は忙しいと言っていたので除外。まだ先日のゴタゴタの後処理があるらしいのでこれ以上負担を増やすのは駄目だと思うのだ。

赤海先輩は……そもそも勉強できるのかね?できたとしてもサボりが多かったみたいだししばらくは自分の勉強で手一杯だろうな。

緑川先輩……競争率高過ぎ無理。『物語』でもファンクラブの人たちに囲まれてたはずだからな。恋する乙女を押し退けて勉強教わるとかないわー。

小鳥遊先輩は勉強できるっぽいから教えてもらえるだろうけど……それより緑川先輩に突貫して接点作ってほしい。信じられる?あの二人の関係って未だに一切進展してないんだぜ。でも後押しされない限り進展しないんだろうな……。そんなわけで保留。

むう、先輩方はほぼ全滅か。なら同級生を頼るしかあるまい。

そうなると黄野か及川となるのだが黄野の成績は『お察しください』だった気が……。むしろ何度か俺が勉強教えてるし。

となると及川か。及川がどれくらい勉強できるかは知らないけど黄野よりはできるだろう。まあ、まずは誘ってみるかね。話はそれからだ。

ていうか男性陣全滅か。理由があるとはいえこれはひどい。でも紫苑だったら誰でも選べたんだろうな。『物語』じゃテストはあまり描写されてなかったけど主人公たる紫苑なら余裕だろう。

そんなことを考えながら勉強を切り上げベッドに潜り込んだ。そういえば寝る前に勉強すると良く覚えられるって聞いたことあるけど実際のとこどうなんだろうなー、と考えているうちに眠りに落ちた。




「勉強会? 」


「ああ。 ま、勉強会ってほど大層なものじゃなくてわかんないところ教え合おうってだけなんだけどな」


「うん、いいよ。 やろっか」


翌日、教室で及川に英語を教えてほしいと頼んだ。幸い及川は英語ができるみたいなので一安心だ。もしできなかったのなら本末転倒だったからな。


「助かった。 もし駄目だったら赤点覚悟だったからな」


「ふふふ、大袈裟だよ。 あ、私がわからないところは黒田君が教えてね」


「もちろんだ」


英語以外ならば教えるのは問題ない。世の中大事なのは助け合いの心である。もっとも紫苑に教える時は助け合いどころではなくがっかり教えなくてはならないのだが。

ちなみに勘違いしないように言っておくが紫苑は別に勉強ができない訳じゃない。むしろ平均以上にできると言っていいだろう。なのに何故勉強を教える必要があるのかというと紫苑はできるところとできないところの差が激しいからだ。

できるところなら余裕で平均より遥かに高い点数をとるのだが、できないところは平均より遥かに低い点数しか取れない。中学の頃、同じ教科なのに前期と後期で取った点数の差が六十点近くあったときは本気で驚いた。アップダウンが激しすぎるだろ。


「それじゃ何時やるの?」


「そうだな……やっぱり土曜か日曜だな。 やるならやるでしっかり時間をかけてやりたい」


「そうだね。 あとほかの人も呼ぶ?」


「そうするか。 あとで何人かに声をかけておこう」


とりあえず黄野と小鳥遊先輩と……一応緑川先輩にも。

無理だったら諦める。特に緑川先輩はね……地雷みたいなもんだから……。でもうまくいけば小鳥遊先輩との接点を作ってあげられるんだよな。うーむ、悩みどころ。

そんなことを考えていると何か思い出したらしい及川が「あっ」と声を上げた。何ですかいな。


「そういえば天文部の活動の話なんだけどね」


ああ、もうそんな時期か。なんかもう暗黙の了解で月の終わりごろにやることになってるんだよな。特に括ってるわけじゃないのだが。


「今月はまだだったな。 いつする予定なんだ?」


「それなんだけど今月はテストが近いから無しにしようかなって」


おぅ、殺生な……俺からくつろぎポイントを奪ってどうするつもりなんですかい?ただでさえ先日のあれこれで消耗しているというのに。


「あ、でもね、そのかわりに七月になったら二回天体観測しようと思うの。 一回目は七月入ってすぐにやって、二回目は夏休み入ってからって感じでね」


夏休みはともかく七月入ってすぐっていうと……ああ、そういえばテストの最終日は七日だったな。その日はお馴染みのあの日である。


「テスト終わったらちょうど七夕でしょう。 だからその日に天体観測したいの」


おお、七夕か。ある意味ちょうどいい時期だな。でも七夕といえばあれだよなぁ。曇ることに定評のある日なんだが……。


「なあ、ところで天気は大丈夫なのか?」


「微妙……かな」


「微妙か」


「天気予報では曇り時々晴れだって言ってたけど……」


そりゃまた微妙だな。いやまあ晴れる可能性があるだけいいんだろうけど。


「ま、晴れることを祈るか」


実際それぐらいしか俺たちにできることはない。

しかしテスト終了直後か……何人来るだろうか。少なくも紫苑はダウンしてるだろうな。あおつテスト終了直後だとチョコレートでも回復しないし。まあ、晴れるかどうかもわかんないんだしそこんとこはしょうがないか。

はたして七夕は晴れるのだろうか。というかそれ以前にテストを無事終えられるのか。そんな不安はあるもののまあなるようにしかならないよね、とため息を吐いた。

次は小鳥遊先輩との話にしようかな。イベント前の前日譚的な感じで。

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