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恋物語の片隅で  作者: 那智
6月
24/64

お菓子作りを教えましょう

そろそろノリと勢いだけじゃ辛くなってきたからプロット作ってたら遅くなってしまった。

後、遅くなった原因といえば風邪引いたり地球を防衛したりお盆で親戚の家行ったり地球を防衛したり・・・うん、大体地球防衛軍4のせいだ。

お菓子を食べ終わったとはいえはい、それでおしまいということにはならない。

ちゃんと使った後は片付けをしなければいけないのだ。お片付けまでがお料理です。

そんなわけで手分けして掃除を始める。

洗い物は及川と小鳥遊先輩に任せて俺と紫苑は調理台を拭くことにした。

拭いている間、紫苑はなんだかやけに機嫌が良さげで少し気になったが別に害はなさそうなので気にしないことにする。

まああれだけ甘いもの食べれば機嫌も良くなるよね。


さて、そんなわけでお菓子作りに使って汚れた台と調理器具を洗い終わった。

これにて退散準備は万端。

食材の余りもまとめたし、それの管理は紫苑がするので俺があれこれする必要はない。


というわけで本日解散。お疲れさまでした。

さあ、いざ部屋に帰還せん。


「あの、黒田さん・・・少々よろしいかしら?」


というところで小鳥遊先輩に呼び止められた。ちくしょう。

なんですか?俺の本日の業務は終わりましたよ?そろそろ本が読みたいのですが。

読書中毒者から読書を奪うなんて許されざりますよ。

だがしかし小鳥遊先輩とは(勢いに負けた結果)相談に乗るという約束をしてしまっている。

その約束を破るのは申し訳ないので話を聞くことにする。


「なんですか?」


「ええと・・・その・・・」


小鳥遊先輩がチラリと視線を横に向ける。

視線の先には紫苑と及川が帰ろうとした足を止め、立ち止まってこちらを見ていた。

突然俺が呼び止められたことが気になったのだろう。

ていうか気になるならもう少し時間置いてから呼び止めましょうよ。

いやそうしたら俺、真っ先に帰る勢いでしたね。ごめんなさい。

それはともかくだ。


「紫苑」


名前を呼び、あとは視線で帰還を促す。

いわゆるアイコンタクトというやつだ。

割と便利だが若干意志疎通が完璧ではないのが問題といえば問題か。

なにせ今のアイコンタクト、紫苑は「先に戻ってろ」と認識したと予想されるが実際には俺は「ゴーホーム」って感じのアイコンタクトを送っている。

まあ、概ね間違っていないので問題はないな。


紫苑は少し躊躇ったのちに及川を促して家庭科室から出ていった。これは後で軽く説明をせにゃならんかもね。

それはそうと今の議題は小鳥遊先輩の相談である。

さあ、外野はいなくなりましたので存分に話してください。

なるべく早く簡潔に。


「・・・あの、変に思われることなく優様とお話する方法はないかしら?」


うわ、長くなりそう。


「えーと、それは話すきっかけがほしいってことですか?」


「ええ、そうなりますわね」


ふむ、俺からしてみればそういうのいいからとっとと話せよ、って感じだけど恋する乙女としてはいろいろ考えることもあるのだろう。

しかし普通に話しかけるのが駄目となると選択肢はかなり狭まってしまう。めんどくせえ。

いや、だがこれまでの小鳥遊先輩を見るにきっかけさえ与えてしまえば一気にいけると思うのでちゃんと考えてアドバイスせねばな。


「つまりきっかけがあればいいんですよね?」


「ええ、簡潔に言えばそうなりますわね」


いやそれってさ・・・。


「お菓子を渡すときじゃ駄目なんですか?」


なんていうかそれが一番自然に思えるし話すきっかけとしても十分だと思うのだが。


「それはそうですけど・・・一つ問題がありますの」


「それは?」


「まだわたくし一人ではまともなお菓子なんて作れませんから。 やっぱり独学では限界がありますわね」


あ、独学なんだ。

お菓子作るの提案してから一ヶ月ぐらい経ってるけど独学っぽいから上達にも時間がかかるだろうな。

その割には基本的なところは手際よかったけど。


「あー、それなら俺が教えましょうか?」


「よろしいんですの?」


「はい。 なんでも作れるわけじゃないですけど多少なら教えることができると思いますから」


まあ、お手本がある状態で回数こなせばある程度は上達するだろ。


「よろしいんですの?」


「乗り掛かった船ですから。 材料費を考えるとそう何度もってわけにはいきませんが」


平凡な学生のおこづかいなんてそんなに多い訳じゃないのだ。

必要以上に出費を重ねていてはあっという間にすかんぴんになってしまう。


「そういうことなら材料費はわたくしが出しますわ」


「え? いやそれはさすがに悪いですよ」


「そんなことありませんわ。 わたくし、こう見えてもそこそこの家の産まれですのよ」


いやあなたはどう見てもお嬢様って感じですけど。


「それにわたくしは教えを乞う立場ですのよ? より多く教えていただくためにもわたくしが出すのが当然でしょう」


さ、さすがお嬢様・・・。

この程度の出費なんてなんともないということか。パネェ。

しかしそういうことなら甘えさせてもらおう。

練習の時間に関しては生徒会の仕事も学校行事が終わって少なくなって暇も増えたから問題はない。

本音を言えばできればその時間は読書に当てたかったけど、まあしょうがないか。

それに食べきれなかった分は包んで誰か(主に紫苑)に試食してもらうのも手だな。


「そこまでしてくれるのなら俺もそれに応えなきゃいけませんね。 誠心誠意ご指導しますよ」


「ふふ、よろしくおねがいしますわ」


そういうわけで俺の予定に小鳥遊先輩対象のお菓子作り教室が加わったのだった。

流されるままに始まった小鳥遊先輩との付き合いだがまさかここまで深く踏み込むことになろうとは思っていなかった。

まあ、ある程度親しくなってしまったのだから小鳥遊先輩も幸せになってほしい。

てか『物語』は少々小鳥遊先輩に厳しすぎる気がするし。

「『物語』以上のハッピーエンドを目指す」なんて口が裂けても言う気はないし、目指すつもりもないが小鳥遊先輩が少しぐらい良い目を見るぐらいはいいだろう。


・・・なんていうか思い直すと改めて自分がいい加減であることを自覚してしまう。

つまるところ俺はわがままなのだ。

自分の友人たちが幸せになってくれなければ嫌という類いの救いようのないわがままで自分勝手。とんでもないな。

まあ、『物語』通りになれば大体の人は不幸になることもないからそれができるならそれでいいんだがな。




その後、ようやく念願の読書を終えた俺は早速及川に感想を伝えるべく、そして次の本を物色すべく及川を誘って二人で図書館に来ていた。

相変わらず図書館は人が少なく、ガランとしており微妙な気分になる。お前らもっと読書しろよ。

静かに読書する、という観点では最高の環境であるがやはりそれよりも読書する人が増えてほしいと願ってしまう。

つか図書館に来たことすらないのに読書が趣味と言っているような奴は極刑に処する。

そんなことを考えながら及川と読書スペースに座った。


「では第二回読書中毒者の集いを始めようか」


「そ、そんな名前だったの?」


ご不満か。


「いや名前はどうでもいいんだ。 大事なのは活動内容だからな」


そう、名前など些細なことだ。

なので俺のネーミングセンスの無さも問題にはならない。

そんな些細なことは置いといて前回借りた本の感想を言い合うことにする。

ぶっちゃけるといろいろ忙しくてあまり本を読み返すことができなかったために不満ありありだがしかたないか。

今度は穴が開くほど読むことを心に誓いつつ良かったところや微妙だったところを言う。

ここで相手を気遣ってお世辞を言うのは失礼に当たるので気をつけなければならない。うそです。

とりあえず俺が及川にお勧めした本も好評なようでよかった。

思いっきり王道なの選んだからなあ。いやそれが悪いわけじゃないんだが。

感想も言い終わりさて、次の本を選ぼうかというときにふとあることを思いついた。


「第二回なので紹介する本に方向性を付けてみようと思う」


「それって条件をつけるってこと?」


「ああ。 そうだな、例えば・・・有名な本しか駄目とかどうだ?」


「夏目漱石とか?」


「そんな感じ。 ・・・でもその辺はもう読んじゃってるんだよな」


「うん、やっぱり有名だから・・・」


うーむ、それじゃあ読んだことのない本を読むというこの集会の趣旨に反するな。


「やっぱり下手に制約を設けないで自分の好きな本を紹介すればいいか」


「そうね。 前と同じでいいと」


そういうわけで不毛だった話し合いも終わったのでお互いにおすすめの本を探すために席を立ったのだった。



「うーむ」


俺は前回と同じようにライトノベルのコーナーに立っていた。

実は俺が人にお勧めできるようなジャンルはライトノベル以外はなかったりする。

それ以外だと割とグロかったり生々しい描写が多かったりする本が多い。

俺は割とグロい描写があっても平気だが及川は苦手だったはずなのでそういう描写の少ないライトノベルから選ぶことにしたのだ。


そして現在候補に挙がっているのは二つ。

ひとつはいわゆる『能力者バトル』的な本。そしてもうひとつはファンタジー小説ながら先の展開がよめないと評判の本である。

能力者バトル物は展開自体は王道、少し悪く言えばありきたりな話である。

少しパンチが弱いだろうか?それならもうひとつのほうにすべきか。

そういうわけでもう一つのファンタジー小説のほうに手を伸ばしかけて―――やめた。

確かにこっちの小説は予想のつかない展開が続くがその代わり少々展開についていけなくなることがある。

必ずしも意表をつくような展開が面白い展開であるとは限らないのだ。


迷った結果、能力者バトル物の方にすることにした。

なんだかんだ言って王道展開のほうが安定して楽しめるし、地雷も少ない。うん、王道万歳だ。

ちなみに今回及川から渡されたのはファンタジーな恋愛物である。

軽く内容を確認してみると貴族の娘と平民上がりの騎士の話のようだった。

また恋愛物か。まあ、結構面白いからいいんだけどね。


「ねえ、ちょっといいかな?」


ぱらぱらと本を捲っていると不意に及川が話しかけてきた。


「なんだ?」


「お菓子作りの後、小鳥遊先輩とは何の話をしてたの?」


「ん? 及川も気になるのか?」


「うん。 ちょっとだけね」


ふむ、しかし俺が勝手に情報を流出させても良いものか?

いや、こういうのは本人に了承を得るべきだろう。


「知りたいなら小鳥遊先輩本人に聞いてくれ」


「聞いたわ。 そしたら黒田君から聞いてくれって」


え?おい、当事者なにやってんすか。


「丸投げか・・・」


そういうことならもう知らん。

拡散されても恨まないでくださいよ、小鳥遊先輩。

半分ヤケになった俺は小鳥遊先輩が緑川先輩に恋慕していること、そして俺はその相談を受けていることを及川に話した。


「私も手伝いしていいかな?」


話を聞いた及川の第一声である。


「そりゃ助かるけど・・・」


「あ、迷惑ならいいよ。 興味半分みたいなものだし」


いやだが乙女心などわからない俺にとって心強い援軍である。

むむむ、


「いや頼む。 俺だけじゃいろいろわからないことも多いからな」


「私もそこまで役に立てるとは思わないけどやると決めたからには全力でお手伝いするからね」


そんな感じでなんとも奇妙な約束を及川としたのだった。

しかし及川から手伝うと言われるのは少々予想外だったな。

いやこれから関わることが予想されるファンクラブとのなんやかんやでは味方が多いほうがいいので後でそれとなく手伝いを要請するつもりだったのだが。

まあ、手間が省けたと考えればいいだろう。



明日からちょいと旅行に行くので更新が遅くなるかと思われます。

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