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恋物語の片隅で  作者: 那智
5月
21/64

自分らしくいきましょう

テスト勉強の合間に書いてたからちょっと出来が微妙。

心に余裕ができたらあとで手直しします。

天体観測の日。

及川が先月のように一人で天体望遠鏡を運ぼうとしないように紫苑に見張りと手伝いを頼んだ俺は二人に合流するために校舎に向かっていた。

何度か言ったと思うがやはり男として女性には重い物を持たせるわけにはいけないのだ。

ちなみに黄野と青葉先輩にも荷物運びをすることは伝えてあるので特に緊急の用事が無い限りは二人とも校舎入口で合流する手筈となっている。

でも黄野は今日の分の仕事終わってなかったから遅れてくるかもしれんな。

そしたら先にみんなで屋上に行ってよう。ふふふ、遅れるほうが悪いのさ。



待ち合わせ場所である校舎の入口に着いた時ちょうど校舎から出てきた赤海先輩と鉢合わせしてしまった。


「あ、どうも」


「あん? ああ、黒田か・・・」


あれ?なんか違和感。

なんていうか覇気が無い感じ?どうしたんだろか?

もしかして赤潮って言われたことまだ気にしてる?


「どうしました? なんだか元気ないみたいですけど」


「・・・なんでもねえよ」


なんでもあるだろ。ネガティブオーラ全開でなに言ってんだ。

よーし、ならちょいと活をいれてやるかね。


「俺をぶん殴るぐらいですから赤海先輩も紫苑のこと気になってるんでしょう? そんなんじゃまともに会話すらできないんじゃありませんか?」


「・・・ねえよ」


「え?」


「今の俺様にそんな資格なんてねえよ・・・」


それだけ言うと赤海先輩は歩き去ってしまった。

明らかに赤海先輩の様子がおかしかったが追うことが出来ずにしばし呆然。

てかネガティブでも俺様なんですね。


いやそれはともかく今のって・・・。

資格がないってことは紫苑のことを諦めるってこと?

もしそうだと・・・なんとかしなくてはいけない。

別に赤海先輩が紫苑のことを諦めようがなにしようがぶっちゃけどうでもいい。

だがあの調子でいられるのは俺の精神的安定の多大なる阻害が予想される。

正直今までの俺様系KYの赤海先輩も大概嫌だったけどあんなネガティブな赤海先輩を見るのはもっと嫌だ。気持ち悪い。

あーもー誰だよ赤海先輩のメンタルブレイクしたの。俺の胃に影響が出るじゃないか!

つか俺様系ネガティブとか新しすぎるんだよ。

青葉先輩とキャラ微被りしてるから。俺様取ったらほぼ完全に一致じゃないか。


まあ、冗談はおいといてほんとどうしたんだろうか?

『物語』じゃこの時期に赤海先輩がしょぼくれるようなイベントはなかったはずだ。

・・・もしかしたら赤海先輩の『物語』は完全に破綻しているのかもしれない。

それも当然だろう。赤海先輩には特に『物語』にないはずの出来事が何度も起こっている。『物語』の破綻は十分予想できるものだった。

だがあそこまでしょぼくれさせる出来事というと思い当たるものはない。

どうにかして立ち直らせるにしても明確な原因がわからないことにはどうすることもできない。

今は様子を見ることしかできないだろう。つまりヘタすればしばらく赤海先輩あのまま・・・。

どりあえずめんどくせえ。でもヘタにちょっかい出すとさらに厄介なことになる可能性も否定できない。

うむむ、どうするべきか。知り合いの様子がおかしいのに放置し続けるのは少々気が引けるのだが・・・。

結局みんなが集まってくるまで俺は悩み続けたのだった。





いざ天体観測が始まってからも先ほどの赤海先輩のことが地味に頭の隅に残っていて純粋に楽しめない。

なにこれ?呪いかなにか?


「どうしたの? 純ってばずっと考え事してる」


俺の様子に真っ先に気づいたのは紫苑だった。

この辺はさすが幼馴染というべきか。


「なあ紫苑、赤海先輩に会ったか?」


「ううん、ここ何日か会ってないけど」


「さっき会った時に驚くぐらい沈み込んでてな。 何があったか知ってるか?」


「ううん、知らないよ」


うーむ、紫苑ならなにか知ってるんじゃないかと思ったんだが。

世の中そううまくはいかないらしい。


「それでどうしたの?」


「なにか力になれないかって思ったんだがどうも例の事件が後を引いてるのか赤海先輩はなんかよそよそしいんだ」


ツンデレなセリフこそぶちかまされたがあれから何度か赤海先輩に会ってもそのたびに俺に遠慮しているような印象を受けてしまう。

ほんと遠慮とかやめてほしい。いつもの唯我独尊さはどこにいったんだ?行方不明?ならとっとと救助してこい。


「知り合いが落ち込んでいるのを見るのは好きじゃないが事情も知らないのに不用意に顔を突っ込んでもいいものかってな・・・」


「んー、いいんじゃない?」


「え?」


紫苑は俺の悩み具合に相反してあっさりと答えた。


「純はね、すごくいろいろ考えてるみたいだけど実は結構行き当たりばったりな行動が多くて・・・でも友達が落ち込んでるならほっとけない。 今まで私が見てきた純はそういう人だった。 

 だからあれこれ考える前に自分の思ったとおりに行動すればいいんじゃない? 純はそうやって今まで生きてきたんだから今更変える必要なんてないよ」


「紫苑・・・」


なんていうか思ってたよりも過大評価されてるな。なんか紫苑からこういうこと言われるのは変、というか奇妙な気分だ。


「な、なんかこういうこと面と向かって言うのって恥ずかしいね。 ちょっと風に当たってくる!」


紫苑は顔を真っ赤にすると及川のいるほうへ行ってしまった。

大丈夫だ、俺も恥ずかしい。多分だが俺の顔も僅かながら赤くなっているだろう。


「自分らしくか・・・」


何気なく言われた言葉だがなんだかとても心に残る言葉だった。

確かにうじうじ悩むのは自分らしくない。

行動する理由なんて「自分が気に入らないから何とかする」。それで十分じゃないか。

つか早々に青葉先輩でやらかしておいて何を躊躇うことがあったのか。

『物語』からズレた現状を『物語』通りに動かそうとするのはとても難しいだろう。

なら戻す必要なんてない。

『物語』が破綻したっていうのならそれでいいじゃないか。

破綻したのなら『物語』なんて気にせずに自分勝手好き勝手行動するだけだ。今までもけっこう好き勝手してた気もするけど。


今まで俺がいろいろ考えていたのはあくまで俺が『物語』の登場人物である『黒田純』であろうとしたからだ。

あくまで『黒田純』の立ち位置で『物語』を見守ろうとしていた。自分が第一なんて言いながら自分らしく生きれてなかったのだ。

でも俺は黒田純だが『黒田純』ではない。とっくのとうに『黒田純の物語』なんぞ破綻していたのだ。なんとも馬鹿馬鹿しい。

でもそれならもう気にすることはない。これから俺は『黒田純』や『物語』など気にせずに『自分だけの人生』を生きればいい。


ふむ、そう考えてみるとなんだか憑き物が落ちた気分だ。すがすがしい。

気の持ちようのひとつでここまで見える世界が変わるのか。

ならひとつ、俺も挑戦ってやつをしてみようかね。

そう決意すると黄野の所に行ってあるお願いをした。


「なあ黄野、サッカーの特訓に付き合ってくれないか?」


「いいけど・・・どうしたんだよ急に?」


「本当になにかを楽しみたいなら少しは自分を変えないといけないって思ったからだな。 まずはその第一歩だ」


「そういうことならとことん付き合うぜ!」


「ああ、よろしく頼む」


そうと決まれば今は天体観測を楽しむのが先決だな。

こうして俺は気持ちを新たにして天体観測を思いっきり楽しむのだった。

あ、及川に本の感想言うの忘れてた。






そして親睦会の日。


思いっきり蹴られたサッカーボールが勢いよく飛んでいく。

敵陣の奥深くまでとんでいったそれを受け取ったのは黄野。

それからは水を得た魚のように動き始める。さすがサッカー部と言うべきだろう。

ゴール前にいたディフェンスの連中を黄野は同学年、先輩問わず見事なドリブルで抜いていき、さらにゴールに向かって肉薄していく。

ゴールの前には既にゴールキーパーただ一人。ほかのディフェンスたちは黄野に追いつくことができないため必然的に一対一の勝負となる。

そして黄野のシュート。ゴールキーパーは反応が間に合わずボールはゴールネットに吸い込まれていった。


「よっしゃあ!」


歓声が上がる。

俺も黄野に届かないとわかっていても拍手を送る。こういうのは気持ちの問題なのだ。

頑張れ黄野、負けるな黄野。この試合の行方は君にかかっている。

なお、そんな感じで明らかに応援側の声援を送る俺も黄野と同じチームで試合中だったりする。

いや、だって俺ディフェンスだけど仕事ほとんどないし。

チームは黄野を中心にしてどんどん攻めていっているのであまりこっちにボールは飛んでこないのだ。楽でいい。

出来ればこのまま俺が暇人のままで試合が終わってほしいのだがさすがに敵チームもやられっぱなしというわけではない。

珍しくボールを奪うことが出来ずにディフェンス(前衛)を抜かれてしまった。

しかもボールを持っているのは二年のサッカー部員だ。マネージャーした時に見たことある。

こちらのゴールとボールを持ったサッカー部員の間にはゴールキーパーを除けば俺しかいない。

クソ、サッカー部員は化け物か。なんでさっきと同じような状況に陥ってるんだよ。


抜かれる寸前、咄嗟に足を伸ばす。

僅かに俺の足がボールにかするがたいした効果は得られず、ボールは微かにその軌道を変えただけで後ろに抜けていった。

ボールがちょうどゴールが狙いやすい位置に転がっていく。マズイ、ピンチだ。

その好機を見逃すはずもなく、すかさず敵サッカー部員はゴール目掛けてボールを蹴る。


―――そして蹴られた瞬間、ボールは真横に飛んでいった。


敵サッカー部員から驚愕の声があがる。

まあ当然だろう。正面に向けて蹴ったはずのボールが真横に飛んでいったのだ。誰でも驚く。

ククク、まんまとかかったな。

俺が触れた瞬間、そのボールは誰にも制御することが不可能になっていたのだ。


これは先日黄野と特訓をした時に発見した技である。

発端はボールに足をかすらせるように蹴ることによってある程度飛んでいく方向を制御しようと試みたことだった。

その試みは一応成功したのだがその副産物として次にボールを蹴る時には誰が蹴っても必ず摩訶不思議な方向に飛んでいくというかなり謎な仕様になってしまった。

ちなみに理論は不明。また、相変わらずボールがどこに飛んでいくかもわからないので安定して使えないという困った技である。

なにこれゴミみたい。


そんなバグ技のおかげでフリーになったボールを味方が回収し前に向けて蹴り飛ばす。

あとは黄野の独壇場だった。

さすがサッカー部員、すごいすごい。俺そろそろ休んでいいかな?


結局試合は黄野の活躍によって見事勝利することができた。

あの二年のサッカー部員はどうにかして俺のバグ技を攻略したかったらしく何度も向かってきたがついぞ攻略は叶わなかった。

まあ使ってる本人にすらどうなってんだかわかんないんだからしかたないね。


「じゅーん! おつかれー!」


「黒田君、おつかれさま」


試合終了後チームメンバーと健闘を称えあったりしてると紫苑と及川がこちらに歩いてきた。

どうやら二人のほうの試合も終わったらしい。えーと、黄野は・・・あ、先輩方に連れて行かれた。

まったく、本当に間が悪いな。


「ああ、お疲れだ。 それと二人もお疲れ様」


「そうでもないよ? こっちに飛んで来たボールを打ち返すぐらいしかしてないもん」


「私はそんなにボールに触れなかったけど、それでも疲れたってよりは楽しかったって感じかな?」


まあなんにせよ二人とも楽しんできたみたいだ。


「純も楽しめた?」


「ああ」


そう言ってニッと笑うと二人は少し驚いたような顔をした。

え?俺の笑顔ってそんな驚くようなものなの?


「どうした?」


「あ、いや! ちょっとね!」


「ほ、ほら、黒田君って今みたいにはっきり笑うことってあんまりなかったから・・・」


そういえば基本無表情だったな。今みたいに笑ったのは久しぶりかもしれない。


「なにかあったの?」


「ちょっとな。 悩み事が解決したら予想以上にすっきりしたんだ」


「それって天体観測のときの悩み?」


「ああ、紫苑のおかげだ」


「私? 私は別になにもしてないよ?」


あれって俺の後押しをするために言ったんじゃなくて素の発言だったんだ・・・。


「わかんないならわかんないでいい」


言ったってわかんないだろうしな。

まったく、素であんな事言うなんてほんとわが幼馴染は恐ろしいな。

最近紫苑の影が薄かったからがんばってみた。

あとちょっとシリアスいれようとしたけど失敗した。

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