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恋物語の片隅で  作者: 那智
5月
20/64

参加種目を決めましょう

予定では及川さんそんなでないはずだったんだけどな・・・。

みんなが及川さん好きすぎるからいけないんや!

親睦会を十日後に控えた日のホームルーム。

その日は林先生から親睦会に関する連絡があった。


「今月末にある学年合同親睦会についてのプリントを配るぞ」


林先生はプリントの束を取り出し配り始める。

余談だが一番後ろの席の良いところはプリントが配られる際、特になにもしなくていいところだと思う。

すげえ些細なことだけれどもなんとなく得した気分になるのだ。不思議。


思考が脱線してる間にまわってきたプリントを受け取り目を通す。

お前生徒会メンバーなんだからプリント内容知ってるんじゃね?と思われるかもしれないが親睦会関連のプリントは一年が生徒会に入る前に作ってしまっていたらしく今まで見る機会がなかったのだ。白波先輩仕事早いなおい。

それはともかくプリントの内容を要約するとこのようになる。


『今度学年合同の親睦会をします。 内容は球技大会です。

 各生徒はどの種目に参加するか決めてください。

 また、参加したい種目の項にはチェックをいれてください』


うむ、テンプレートな内容である。わかりやすくて良い。

ちなみに選べる種目はサッカー、野球、バスケ、バレーの四種目。

このラインナップ・・・経験者の独壇場になったりしないか激しく不安である。

しかもまともな種目ばかりなので運動苦手な人がとことん苦しみそうだ。

逃げ場ぐらい用意してあげようよ。今からでもドッチボールとか追加できんのかね?


そんなことを心の中でブツブツ言っているのには理由がある。

実をいうと俺は球技全般が苦手なのだ。

正直やりたくない。サボりたい。

だがこの学園の生徒である以上は学校行事には参加しなければならない。

それに一応とはいえ生徒会の一員なんだからサボるなんて論外だ。ちくしょうめんどくさい。

しかし嫌がっていても何も始まらない。むしろどうあがいても避けられない現実に絶望が加速するだけである。

なのでさっさと参加する種目を決めようと思う。消去法で。


―――消去法。それは示された選択肢すべてに自信が持てない人にとっての最終兵器。

一番無難な道を指し示す羅針盤のようなものである。


まずは野球だ。

これははっきり無理だと胸を張って言える。

理由をあげるならばまず俺は野球をやったことがない。

その上、ルールすらもうろ覚え。正直正しいのかどうか怪しいレベルなのだ。

こんな有り様では数合わせにすらなれないだろう。


次にバレーボール。

これはやったことがあるがあの時は開始五分で戦力外通告を受けたのでやらないほうが賢明だろう。

なにせサーブ、レシーブ問わず、ボールにさわる度にボールがあらぬ方向に飛んでいくわ、スパイクを打てば何故か真横に飛んでいくわで散々だった。

こんな感じでボールにさわる度に失点確実なので却下。


続いてバスケットボール。

これはまだマシな方である。

ボールにさわる度にボールがコートの外に飛んでいくのはもはやデフォルトであるがディフェンスとして考えればなんとかならなくもない。

だが問題は狭いコートの中でディフェンスだけで済むのかということだ。

俺が攻めにまわればたちまち阿鼻叫喚の事態となってしまうのでそれだけは避けたい。

よってバスケットボールは保留である。


最後にサッカーだが・・・これが一番望みありかもしれない。

確かに俺がボールに触れた途端にボールがあらぬ方向に飛んでいくのはお約束だがサッカーのフィールドは広いのでカバーが可能だろう。

それにディフェンスにずっといても怒られないだろうし。ゴール前にいるお邪魔キャラと考えればかなりいける気がする。


これらの審議の結果、一番被害が少ないと考えられるのはサッカーだろう。

ここはサッカーに参加する人たちに貧乏クジを引いてもらうことにするか。

そんな感じでネガティブな決定をしていると黄野がこちらを向いて話しかけてきた。


「なあ、黒田はどの種目にするつもりなんだ?」


「・・・サッカーだな」


「おっ、黒田もか! へへっ、だよな。 やっぱ時代はサッカーだよな」


消去法の賜物です。

別にサッカーが好きというわけではないのでそこんとこ間違わないように。いや観戦するのは好きだけどさ。

黄野のように得意なスポーツがあれば迷いなく選べるだろうが俺のようにどちらかというとインドア派にとっては迷いに迷った末の選択なのである意味重みが違う。

そういえば本格的なインドアである青葉先輩はどれを選んだのだろうか?

緑川先輩はバスケとか似合いそう。イケメンだし。

赤海先輩もバスケっぽいけどチームプレー出来るのかな?いや今の綺麗な赤海先輩なら大丈夫か。

白波先輩は・・・なんやかんやで何でもそつなくこなしそうだなぁ・・・。


クラスメートたちを見ると皆大体種目を決めたらしく周りの友人たちとの雑談をし始めている。

紫苑も同様に席の周りの友達とお喋りをしている。

そういえば詳しい内容は覚えていないが『物語』でも親睦会での選択肢によって好感度が上がる対象が変わったはず。

果たして紫苑は誰の好感度を上げるのだろうか。

そしてこの中のいったい何人の生徒が参加種目を消去法で選んでいるのだろうか?

興味は尽きない。


そろそろプリントが回収されるのでサッカーの項にチェックをいれておく。

このプリントの集計とか俺達がやるんだろうか。すげえめんどくさい。

球技大会前に心が折れそうだ。


「高倉さんはどの種目に出るのかな?」


「知らん」


俺と同じくプリントにチェックを入れ終わった黄野がそんなことを聞いてくるがそういうことを俺に聞かれても困る。

俺が紫苑のことを何でも知っていると思ったら大間違いだ。その認識を改めてもらおうか。


「気になるならこの後天文部で集まるか」


次の天体観測についての話もしたいからちょうどいいだろう。


「それいいな! ナイスアイディア!」


「俺も青葉先輩がどの種目選んだのか気になるからな」


「た、確かに気になる・・・」


そういうことになったので黄野が紫苑と及川に声をかけてから場所を取りに行き、俺が青葉先輩を呼びにいくことにした。

そういえばすっかり青葉先輩を呼びにいくのに慣れたな。

近頃は教室の前にいくだけで青葉先輩のクラスメートたちが青葉先輩のこと呼んでくれるようになったし。

おかげで青葉先輩を呼ぶためにほかの先輩方に頼む必要がなくとても楽だ。

というか最近気づいたんだけどどうも青葉先輩のクラスの人の青葉先輩を見る目がやけに生暖かい。

俺といっしょに天文部の集まりへと向かう青葉先輩を見送る瞳がまるで保護者のようだ。

青葉先輩がクラスでどんな目で見られているかが手にとるようにわかる。わかってしまう。わかりたくはなかった。

だって一応先輩だし青葉先輩にも面子があるだろうからね・・・。本人はクラスメートからどんな目で見られているか気づいてないようだけど。

知らないほうが幸せだよね・・・。


さて、それはともかく天文部の集合場所に向かわなくては。

ぶっちゃけ集まる場所は知らないけどただ集まるだけならともかくそこで話をするとなると場所は限られている。探すのは簡単だろう。

そして予想通り黄野と紫苑、及川は食堂にいた。

今の時間帯なら利用者もいないので話をするにはちょうどいい場所なのだ。

各々自販機で適当に飲み物を買ってくると紫苑が真っ先に切り出した。


「ねえ、みんなは今度の親睦会の種目、どれに出ることにした?」


やはりそこはみんなが気になっていたらしい。

黄野など座って待っていた時からそわそわしぱなっしであり、落ち着きがない。

いいから落ち着け。

その想いは当然届かず黄野は紫苑の質問に真っ先に答えた。


「俺はもちろんサッカーだ!」


「やっぱり! 黄野君はサッカーだろうなーって思ってたよ。 じゃあ次は・・・青葉先輩はどの種目にしたんですか?」


「僕? えっと、僕は野球にしたよ」


野球とは・・・正直意外だ。

インドア派筆頭格である青葉先輩のイメージからは想像もできんかった。


「へぇ、なんか意外ですね」


紫苑め、みんな思っても言わなかったことをあっさり口にしおったわ。


「あはは・・・やっばりそう思う? ・・・でも僕、野球好きだから。 やるほうはさっぱりだけど・・・どうせなら自分のやりたいことやろうって思ったんだ」


おお、青葉先輩ったら随分と成長して・・・なんだか感激。

間違っても先輩に対して言うことじゃないけど。


「わぁ、かっこいいですよ先輩!」


「か、かっこいいって・・・」


きゃあきゃあと騒ぐ紫苑と紫苑が言ったかっこいいという言葉に必要以上に顔を赤くする青葉先輩。そしてその光景に若干嫉妬する黄野を眺めているとこのままでは話が進まないと思ったのか今度は及川が話を振ってきた。


「じゃあ次は黒田君ね」


「俺も黄野と同じでサッカーだな。 少し不安だが」


「不安?」


「そういえば純って球技壊滅的に駄目だったはずだけど・・・大丈夫なの?」 


「サッカーならそこまで酷くはならないだろ」


そう信じていればきっと大丈夫なはず・・・たぶん。


「へぇ、なんか意外だな」


「うん、黒田くんってスポーツ出来そうなのに」


買いかぶりすぎです。

俺、どっちかって言うとインドアですよ?

本がお友達。本に囲まれて暮らしたい。


「そういう及川はどうなんだ?」


「バレーボールにしたの。 唯一経験あるからこれなら足手まといにはならないかなって思って」


「私もバレーボール! 大の得意だから頑張るよ!」


えーと、俺と黄野がサッカーで、青葉先輩が野球、たぶんだけど緑川先輩と赤海先輩はバスケットボール、白波先輩はこの流れで行くと野球かバレーボールか?

ふむ、誰とも好感度は上がらないかもしれないな。まあ、必ずしも『物語』通りにいくとは限らないだろうからなんともいえないが。

っと、そうだ。天体観測の話もしなければ。忘れるところだった。

貴重な回復ポイントを逃すわけにはいかんのだ。


「そういえば及川、この前に天体観測したいって言ってたよな」


「うん。 もうすぐ六月だからその前にしたいなって思って」


「あ、そろそろ梅雨だもんね」


「うん。 だから曇っちゃう前に天体観測したいの」


イベント前の休息ですね。大歓迎です。


「いいかもしれないな! 最近生徒会の仕事で忙しかったし」


「星を見ながらリラックスってなんかいいよね! 癒されそう!」


いかにもたくさん仕事したって顔してるけどお前らの仕事量って俺の半分なの知ってるか?

プリントの集計全部押し付けるぞこのやろう。


「ま、もうすぐ親睦会もあるんだ。 やるんだったら早めがいい」


「えっと・・・じゃあ明後日はどうかな。 天気予報だと一日中晴れって言ってたよ」


「うん、じゃあその日にしましょ」


「平日だけど大丈夫か?」


「大丈夫大丈夫! じゃ、けってーい!」


とりあえず大丈夫じゃなかった人には見せしめとして罰ゲームでもやらせてみようか。


「あれ? なんか悪寒が・・・」


鋭いですね、青葉先輩。

そんな青葉先輩の様子に首を傾げながらも、天体観測の日程を決めた俺たちは思い思いに雑談をして過ごしたのだった。

あ、そういえばそろそろ及川に本の感想を伝えなければな。

実はサブタイトル考えるのが地味にめんどくさい。

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