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恋物語の片隅で  作者: 那智
5月
18/64

みんなでお仕事です

日間恋愛ランキング3位になりました。え?夢?

現在パニック中ですがとりあえず感謝を。

ここまでこれたのは皆様の応援のおかげです。これからも頑張ります。

今日も今日とて黄野を捕縛してから生徒会室に来ると珍しいことに生徒会メンバー全員が部屋に集まっていた。

紫苑は白波先輩に仕事を教わりながら自分の仕事をしていて、青葉先輩はその様子をチラチラ見ている。気になるなら突貫しろや。

緑川先輩はすでに仕事を終わらせているようで生徒会室に入ってきた俺達に軽く手を上げて挨拶してきた。


「珍しいなー、今日なんかあったっけ?」


「何もなかったと思うんだが」


全員集合する理由に思い当たるものはない。

あえて言うならば学校行事の準備がそろそろだとは思うけどそれにしてはまだ早い。

こんなに早く準備を始めてしまえば行事の数日前に準備が終わってしまい、しかも行事の前日だから何もしないわけにはいかず結局意味もなく何度も点検を繰り返すだけのなんともいたたまれない状態に陥ってしまう。

繰り返し点検を行うことが大事であるとわかってはいるが何事にも限度というものがあるのだ。


「そーゆー訳じゃないんだけどな」


笑いながら緑川先輩が俺達の予想を否定してきた。

そういえば最近視線を感じること少なくなりましたか?もし少なくなったなら小鳥遊先輩関連の苦労も報われます。


「ならどういうわけなんですか?」


「そんな身構えなくてもそんな大層なわけはないぜ? 単なる偶然だな」


いやこちらとしてはその偶然が怖いんですが。

『偶然、生徒会室に全員が集まる』なんてまるでイベントの前振りじゃないですか。

割と洒落にならないからやめろ。


「でも・・・ちょうどいいかもしれないね」


そんなことを考えながら近い未来に不安を抱いていると青葉先輩が会話に加わってきた。


「ちょうどいいってどういうことっすか?」


「ほら・・・今までちゃんとみんなで集まる機会がなかったから・・・」


そういえばそうだった。

この時期生徒会の仕事がそこまで多くないこともあって三日に一回来るだけで仕事は片付く。

なので基本白波先輩以外はあまり生徒会室にいることは少なかったりする。

あれ?でも俺最低でも二日に一回のペースで来てるんだけど・・・ああ、黄野の分、時々紫苑の分の仕事もやってたからか。ちくしょうめ。


だが集まったからといってなにをするのだろうか?

自己紹介とか?今更だけどまだ全員にはしてない・・・。

あ、でもなんやかんやで俺、紫苑、黄野、青葉先輩は同じ部活で、緑川先輩だって一度はいっしょにショッピングモールを見て回った仲だからな。

白波先輩は生徒会の中心人物だからみんな知ってる。

赤海先輩は・・・お察しください。

結論、自己紹介必要ない。


「でも集まっても別にすること無いですよ?」


「そうなんだけどね・・・」


「そんなことはありませんよ」


おっと、続いては白波先輩まで会話に入ってきた。

ちなみに白波先輩がさっきまでいたところでは紫苑が机に突っ伏していた。

どうやら仕事を終わらせると同時に力尽きたらしい。まあ、チョコレート口に突っ込めば回復するだろ。


「そろそろ学校行事の準備がありますからね。 その時期になる前に一度生徒会員の顔合わせを済ませておくつもりだったんですよ」


なるほど。全員知り合いとはいえちゃんと集まったことがなかったから初仕事を前に集める気だったのか。



「本来なら前日に招集をかけるつもりでしたがせっかくですし今のうちに連絡事項を伝えておきましょうか」


その言葉で全員が白波先輩に注目する。

あ、紫苑は持ってた一口チョコレートを口の中に放り込んで復活させました。


「まずひとつ目の連絡ですが近いうちに生徒会長の赤海太陽が戻ってきます」


おお、赤海先輩戻って来るのか。予想より随分早い。

あんなことがあったからなんか気まずくなりそうだが仕事は楽になりそうだ。

って、おい黄野あからさまに嫌そうな顔すんな。そういうのは心の中だけにしておけ。

てかお前は赤海先輩が戻ってこないほうがいいんだろうがそれはお前が自分の仕事を半分以上俺に押し付けてるからだろうが。

そろそろ俺過労死するわ。ストライキ起こすぞコラ。


ちなみに他の面々はというと紫苑は嫌そうというわけではないようだが少し表情が固い。

青葉先輩は少し困ったような顔をしていてたぶんまた問題が起こらないか心配しているんだろう。

緑川先輩は意外にも平然としている。いやこれはどっちかっていうと無関心なのか?

とりあえず言えることは赤海先輩人望ねえな、ということだ。

俺としては正直言って仕事さえしてくれれば構わない。多少の気まずさはあるがそれはそれ、という感じで。

それにもう殴られたことに関しては怒ってはいないし、何かするにしてもせいぜい心の中で密かに赤海先輩のこと赤潮先輩って呼んだりするぐらいだ。

びっくりするほど地味って言うか些細な報復である。別に素で間違ったことがあるわけではない。


「もうひとつの連絡はさっき言ったように学校行事である学年合同親睦会の準備が近いことです」


「学年合同・・・」


「親睦会?」


規模でかいな。新入生の親睦会ならよく聞くけどそれを全学年でやるとか聞いたことない。


「この学園は全寮制ですから少しでも学年の違う人と打ち解けられられるようにこのような形にしているんですよ」


「へぇ~、そうなんですか」


紫苑が感心したように言った。

というかさっきまで力尽きてたのにもうすっかり元気になってやがるな。甘党恐るべし。

それはともかく全寮制っていうのは普通の学校より遥かに上級生と関わる機会が多い。

部活に入ってるなら部活での付き合いがあるので問題はないだろうがそうでない人にとっては上級生に遠慮してしまって少し過ごしづらい場合もあるだろう。

同じ場所にいるのに無関心でいるよりは学年関係なく仲良くできたほうがいい。

つまりそういうことなのだろう。


「それで今年の学年合同親睦会では球技大会をすることになりました」


「今年の? 毎年親睦会の内容って違うんすか?」


「その通りですよ。 毎年生徒会の二、三年生が決めるんです。 もっともある程度ローテーションのようになっていますが」


なるほど。毎年同じ内容だと飽きるからな。ローテーションって言っても三年間で同じ内容になることはないだろうから問題ないし良い考えだ。


「さて、せっかく人手があるのですから今日のうちにめんどくさい仕事を片付けてしまいましょう」


「めんどくさい仕事? なんですかそれ?」


「ポスター貼りですよ」





ポスター貼りは二手に分かれて行うことになった。

四階まである校舎の一、二階は、俺こと黒田純、青葉先輩、そして高倉紫苑。

三、四階は黄野大介、緑川先輩、白波先輩となっている。

ポスターは各階に五枚ずつ貼る。なのでそれぞれの担当は十枚ほどになる。

うん、確かに地味にめんどくさい。

そんな風に俺は気分を萎えさせているというのに紫苑は元気いっぱいである。


「がんばろうね! 純、青葉先輩!」


「う、うん。 僕は背が低いからあんまり役にたたないと思うけど・・・」


「とりあえず青葉先輩は画鋲を持つのをお願いします。 紫苑じゃ不安なので」


「ちょ、ちょっと! それひどくない!? 私ってそんなに信用無い!?」


「お前のことは信頼してるけどこの場合はお前のうっかりに対する信用度が優先されているだけだ」


紫苑にまかせると転んで廊下に画鋲をぶちまけるビジョンが浮かんだのだ。実際『物語』でもそんなシーンがあった気がするし。

悪いが廊下にそんなトラップを設置するわけにはいかないので安全策を取らせてもらうことにした。


「そ、その言い方は嬉しいような悲しいような・・・」


この場合は悲しんどけ。


「あはは・・・相変わらずだね」


あとは紫苑にまかせると青葉先輩の仕事が無くなるっていう理由もあるのだがこれは黙っていよう。

先輩なのに仕事がないとか悲しすぎる。


宣言通り画鋲の入った箱を青葉先輩に持ってもらい、早速ポスター貼りをすることにした。

どうでもいいことだが中学校時代は特に役職に付くこともせずのんびり過ごしていたのでこういう仕事をするのは実に小学生以来である。

あの頃は画鋲の管理が疎かだったせいでよく負傷者が出たものだ。今思うと恐ろしい。

そういえば画鋲って掲示物を壁に張り付けるのと嫌いなやつの上履きに流し込む以外でなにか用途あったっけ?


そんなアホなことを考えている間に最初のポスターを貼る場所に到着。

この面子の中では俺が一番背が高いので俺が画鋲をさすのを担当である。


「紫苑、ポスター支えてて」


「まかせて!」


「青葉先輩は画鋲を渡してください」


「うん、わかった」


紫苑がポスターを支えている間に俺が青葉先輩から受け取った画鋲をポスターの四隅にさす。

完璧なコンビネーションである。すごく地味だけど。

その調子で三枚目、四枚目と順調にこなしていったのだが途中で紫苑が自分もやりたいと言い出した。

一瞬嫌な予感がしたが一つ一つ画鋲を渡せば危険(ぶちまける的な意味で)は最小限に抑えられるのでまかせることにした。

つか童心に返り過ぎだろう。


「痛っ」


「紫苑? どうした?」


「画鋲で指刺しちゃって・・・」


「だ、大丈夫?」


予感的中。いやそんなことを言っている場合ではない。

すぐさま紫苑の手を取り、傷を確認する。

どうやら深めに刺してしまったらしく血が出ていた。


「まったく気をつけろって言っただろ。 ちょっと待ってろ」


ポケットに手を突っ込み常備している絆創膏を取り出した。


「ほら」


怪我をした指に絆創膏を貼ってやる。


「これでよし、と」


「あはは・・・いつもありがと」


「黒田くんって・・・いつも絆創膏持ち歩いてるの?」


「常備してます」


そう、こういう時の為に俺は常に絆創膏を三枚ほど持っているのだ。

何故なら昔から紫苑はそのうっかり故によく怪我をしていたので俺には紫苑の母親から週三枚の絆創膏を支給されていたのだ。

なお、週の終わりには支給された絆創膏は使いきっていることが多かった。

中学に入ってからはさすがの紫苑も怪我をすることも減ったのだがその頃には常に絆創膏を三枚持ち歩くのが癖になってしまっていたのだ。

おのれ紫苑。


しかしヒロインの負傷イベントか・・・乙女ゲームのキャラならここで怪我した指をくわえたりするのだろうが俺はそんなことはしない。

ククク、見事なフラグブレイクだろう。

というか言わせてもらうと他人の身体の一部を口に含むのははしたないと思うんだ。


欲を言えば消毒もしておきたかったがさすがに消毒液は携帯していないので諦めた。

むう、念のためこれからは消毒液も携帯すべきだろうか?

いや普通に邪魔だな。絆創膏だけでいいや。


その後も懲りずに紫苑はポスターに画鋲を刺したがったが三枚目の絆創膏を使用したあたりでようやくやめた。

つかなんで三枚のポスター貼る間に三枚の絆創膏を消費してんだよ。うっかりにも程がある。

ちなみに残りのポスターは俺が貼ったのだがその途中で画鋲が指に刺さるようなアクシデントはやはりなかった。

やっぱり紫苑のうっかりはとんでもないと再認識しつつ、さらに絆創膏の数を増やすべきか検討するのだった。

あ、絆創膏補給しとかないとな。

次で赤海先輩復帰かな?

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