表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ホラーシリーズ(短編投稿)

ヤンデレがいっぱい!!

作者: 七草 折紙

 誰か……




 バキッ、メキッ

「チェストォォオオオオォォォォォォッ!」


 シュッ、シュッ

「ウフフ」




 誰でもいいから……




 ブゥオンッ、ブゥオンッ

「キハァッ!」


 ブシュッ、グチャッ

「クフフ」




 僕を……




 ブツブツ

「呪・殺……」


 ジュワッ、シュボンッ

「フヒヒヒ」




 この地獄から……




 カァ~ン、カァ~ン

「ヒヘヘヘ」


 ザクリ、ザクリ

「翔ちゃん……翔ちゃん……」




 助けてください……




 僕は皆の中心で震えていた。

 それしか僕にできることはない。


 僕は無力だ。






 僕の名前は木崎翔。そんなことは些細な情報だ。今重要なのは、この状況。

 ここで僕の危機を分かって貰うために、先程の彼女らの紹介をしよう。




 バキッ、メキッ

「わたし最強ぉぉおおおおおおッ! ケハハハハハハハハハハハハッ!」


 まず最初に、"最強"と叫びながら拳で木を薙ぎ倒している、道場着姿の美女。やたらと声が大きいのは体質故か。

 彼女は世界屈指の拳法家にして空手部のエース、『破壊姫』の異名を持つ霧香先輩だ。


 鍛えられたスタイル抜群の豊満ボディは、男子だけでなく女子をも惹きつける。

 僕は暴力反対デス!




 シュッ、シュッ

「ふぅっ、これくらい磨げば良く刺さるかな?」


 次に、念入りに刀を研いでいた、袴姿の大和撫子。屈託のない笑顔が逆に怖い。

 彼女は実家が剣術の名門で、剣道ではなく、殺傷を目的とした実戦型剣術の使い手――『斬り裂き姫』こと紗也香さん。


 同級生ナンバーワンの人気を誇る、冷静沈着な和風美女。その凛とした雰囲気がそそるそうだ。

 それならば何故にここにいる?




 ブゥオンッ、ブゥオンッ

「死すべし! 死すべし!」


 その隣で鎌を振り回している黒マントは、鎌をこよなく愛する謎のストーカー女。

 正体不明の侵入者、僕命名で『人間界の死神様』。


 生徒らしいが、誰もその正体を知らず、名前も分からず。それでも可愛いから許すそうだ。

 誰なんだ、コイツは?




 ブシュッ、グチャッ

「何よこれ、脆いわね。あの子達みたいに……クフフ」


 一番奥に陣取っている、スーツ姿の煌びやかな派手目美人。一定ノルマでナニカを潰している。怖いのでナニカは聞かない。

 彼女は生徒会長にして大財閥のご令嬢。最先端の抹殺機械をこれでもかと持ち出してきた、最大権力を誇る『女帝』、金城先輩。


 学生の身分で既にとある会社を任される有能さで、美しさだけでなく知的でもある社交界の華。これまた嫉妬を煽る僕の天敵。

 取り敢えず、その無駄使いはヤメロ!




 ブツブツブツブツ

「呪・殺・悪・毒・邪……血・滅・死・溶・爆……」


 隅っこで呪いの言葉を吐いている、黒マント第二弾。普段は暗幕で隠された儀式を、この場で惜しげもなく披露している。

 超常現象にどっぷり嵌る彼女は、黒魔術研究会の会長にして怪しい世界の崇拝者、『死滅魔女』の貞子ちゃん。下級生だ。


 誰とも話さない内向的な性格と、神秘的な美貌が売りだそうだ。一部ではコアなファンが存在し、僕の抹殺を企んでいるらしい、とも聞く。

 僕は無関係だ。




 ジュワッ、シュボンッ

「ヒィシィシャァァアアアァァァッ! 毒薬かんせぇーーーーーーいぃぃ!」


 毒々とした色の液体を狂喜乱舞で眺める眼鏡美人。こちらは対照的な白衣を着ている。

 彼女は我が校に誕生した稀代の天才で、科学部の麒麟児とも呼ばれている、『スーパーマッドサイエンティスト』の三葉先輩。


 IQ200という噂もあり、趣味が実験と解剖というえげつなさ、副作用を気にしないその薬の豊富さは、もはや世界一。トチ狂った自殺志望者達のマドンナだ。

 僕で実験はしないデネ。




 カァ~ン、カァ~ン

「チッ、釘が足りないわね。まだたったの百本しか打ってないじゃない」


 巫女服を着て、原型を留めない釘だらけの呪いの藁人形を睨みつけているのは、さる神社の跡取り娘。

 下級生のアイドル、おっとりにして隠れ系虐殺嗜好の『狂い巫女』結子ちゃん。


 この子が一番怖い。良妻度数ランキングナンバーワンという話だが、結婚したら後ろからブスリとかないよね? だって既に目がイっちゃっているんだもん。

 そんな怖いギャップはいらないぞ!




 ザクリ、ザクリ

「翔ちゃんは私のもの……翔ちゃんは私だけのもの……邪魔者は撲殺、排除、抹殺、拷問、解体……」


 最後は、肉屋の娘っ子にして我が幼馴染、あかり。

 一番の安心感だが、最近悪寒を感じるのは何故だろうか。っていうか、この子だけが唯一制服を着用している。ここって学校だよね?

 巷では彼女は『最速の包丁乙女』として名を馳せている。商店街限定の異名だ。


 解体の腕はプロ顔負け。人間を捌くのはヤメようね。

 せめて君だけはまともでいて欲しかった。




 と、まあ皆が怖い形相で円を作り、僕を囲んでいる。完全包囲網だ。

 逃亡は不可能と考えるしかないだろう。






 僕は昔から間違いを犯してきた。

 人助けなどするべきではなかったんだ。


 困っている人を見ると、つい手を差し伸べてしまう。

 人に言わせると、それはフラグという奴らしい。

 そんな気はなかったんだけど。

 気付けば、最凶メンバー八人衆が勢揃い。この異常事態だ。


 ともかく、既に手遅れ。

 もう始まってしまうのだ。




『校内対抗・木崎翔独占権利争奪・サバイバルバトル』




 ご丁寧に誰かが作成したパンフレットにはルールも書いてある。


 ルールその一。

 殺傷は当人の自由・本人の自制の問題であり、口出しは一切しない。


 しろよ!

 殺人事件勃発だよ? そこは頑固として拒否しようよ!

 犯罪なんだよ。皆、騙されてるよ!




 ルールその二。

 武器は何でも使用可。暗器、爆薬なんでもござり。もちろん自作も可能。


 どんだけ物騒な展開に持ち込む気!?

 明らかに時代錯誤の考え方だよね。

 侍? 忍者? 闇の末裔でもいるのかよ!




 ルールその三。

 見物は自由。ただし被害を負った場合、責任は本人にある。賠償は一切行わない。


 関係ない皆にはごめん、としか言いようがない。

 けど、煽っている奴らがいるのも事実なんだよね。

 文句はソイツらに言って欲しい。




 ルールその四。

 優勝者は木崎翔のあらゆる権利を有することができる。アンナコトやコンナコトもやりたい放題!


 …………

 もはや何も言うまい。

 一瞬、舌舐めずりが聞こえてきた気がした。

 僕の意思はどこに行ったの? 普通は本人の両諾が必要だよね?

 何で強制的なの? 基本的人権はどこに行ったの? 国家崩壊の危機だよ!




 あまりの理不尽さに涙が止まらない。

 取り敢えず、この場から逃げたい。んだが、雁字搦めのこの縄が僕を逃がさない。包囲されてるし……。

 っていうか、観客(生徒、教師全員)までもがその気になっている。

 青褪めているんなら、止めようよ! 職務怠慢だ! 抗議する!




「それでは皆さま、大変長らくお待たせしました。

――彼女らの奏でる血みどろの愛の結末、迎えるのは果たして破滅か絶望か、それとも混沌か。

木崎翔君、意気込みをどうぞ!」


 放送部のエースがマイクに向かって叫んでいる。さすが滑舌は抜群だね。

 それはともかく――


 全部ダメじゃないか! 一個くらい幸せな未来を用意しておいてくれよ!

 それに猿轡されてどう喋れってんだ! お前らやることが支離滅裂なんだよ!

 僕の伝えたい叫びは届かない。




「…………」


「おーっとーっ、これは無言のアピールかぁ! 照れている?

いや違う、男は黙って見守るという意思表示だぁ!

何というナイスなクールガイ! 何というイケメン男! とっとと死んじまえ!

これが校内中の美女を虜にする腐れ男の実態だぁ!」


 さりげなく悪意の言葉が混じっているが、この際、どうでもいい。

 何故、男だけでなく女連中までもが、僕を睨むのさ。

 羨ましいなら、是非とも代わってくれ!




 どうやら賭けまでしている輩までいる。

 この流れは止められない。


 ああ、始まってしまう……




「それでは、サバイバル・ザ・ブラッドパーティー、開始だぁぁああああああッ!」


 カァァァアアアアアアァァァン……




 もう一度、言おう。


 誰か助けて!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、お返事ありがとうございます。とても面白く続きが気になる作品なので、勝手に楽しみにさせていただきたいなと思ってます(^-^)
[一言] 続きがかなり気になります
[一言] 出来れば、連載してほしいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ