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「生徒会長からのあいさつ」
司会の声がふいに響く。わたしはステージの方に目を向けた。
登壇してくる長髪の男子生徒。まるで女の子のように美人さんだ。
「うわぁー綺麗なひとー!」
「生徒会長、春日井廉士。征辰の中で、いちばん大きな派閥のリーダーなんだよ」
真唯ちゃんが解説してくれた。
「詳しいんだね?」
「うん。うちの兄貴がここの卒業生でさ。生徒会長は、大抵いちばん有力な武将がなるんだって」
「へぇーっ」
わたしは再び生徒会長に目を移した。柔らかな微笑を浮かべてあいさつを述べる姿が目に優しい。あんなに繊細そうな人が一番有力な『武将』だなんて、信じ難い話だ。
「―――それじゃあ、明日は実力テストだからな。しっかり勉強してこいよ。あと、弁当を忘れないように!」
「きりーつ! 注目、さようなら」
「さようならぁーっ」
小学校の時と何ら変わりないあいさつに、ほっとする。
中学校はどんなに恐ろしいところかと思っていたが、それほどでもないと今日一日で実感した。……といっても、まだ何をしたわけではないのだけれど。
ただし突然の実力テストには閉口してしまう。今日の放課後だけで小学校の全範囲の復習をしろ、とはなかなかの宿題だ。
「最悪ーっ。テストなんて聞いてないよぉ」
真唯ちゃんが嘆きながら溜め息をつく。
「このテストもゲームの内容なのかなァ」
「多分ね。あーもうっ横暴だよー」
わたしは苦笑したけれど、気分は真唯ちゃん並に最悪だった。
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