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戦国サバイバルゲーム!?
教室の中に沈黙が広がる。これが漫画なら、疑問符で教室中が埋め尽されていただろう。そんな空気を、松本良平は楽しんでいるようだった。
「お決まりなリアクションだねぇ。うん、素直で何より!」
言いながら頷いた松本良平は、いきなり、パンと手を叩いた。クラスが緊張する。教室のドアが開いて、二人の男女が入ってきた。
「お呼びですか、殿」
「うん、いろいろ説明するからそこにいて」
「御意」
男女は会釈をすると、ドアの側に控えた。まるで、松本良平の家来であるかのように。
「このゲームはね、学校全体がひとつの国だと考えていい。ひとつの大国の中にいくつかの小国があって、互いに競い合って暮らしている。
小学校の歴史で習ったかな、戦国時代? 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、毛利元就、真田幸村、今川義元、伊達政宗………。他にもたくさんの武将がいたね。
―――君たち一人一人は、武将であると思ってほしい。原則的にはどんな立場をとるかはそれぞれ個人の自由だ。僕のように『殿』と呼ばれる派閥の頭になるのも構わない。そこの、美紀や波のように大きな派閥の一員になって過ごすのも構わない」
松本良平は控える男女―――『波』と『美紀』を一瞥して言う。二人はわたしたちに向かって、軽くお辞儀をした。
松本良平は続ける。
「あと……、ごく少数だけどどこの派閥にも入らず、競争を傍観している人や、派閥ではなくて友人たちと同盟を組んで助け合う人たちもいたかな。
―――基本的には本当に自由なんだ。だけどまぁ君たちは、最初はどこか大きな派閥に加わっているのがいいと思うな。ゲームのルールも見えてくるし、――――下剋上だって可能なんだ」
そこで、松本良平はにやりとした。横で、『波』と『美紀』も薄く笑っている。
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