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第3週 1-1


第3週



―――1―――



 体育祭当日、長縄の朝練の為にいつもより早く家を出たが、校庭には既に多数の生徒の姿があった。

 防球ネットには学級旗ならぬ派閥旗が掲げられ、校庭の其処かしこでは騎馬戦の練習に熱を上げる派閥も見受けられた。

「あーずっ! おはよう!」

「お、真唯ちゃんだ! おはよ」

 手を振って駆け寄ってくる真唯ちゃんは、どうやら体育祭スタイルのようで、いつもは肩口に流している髪を二つ結びにしている。

「今日も可愛いね」

「ありがと。あずは髪、結ばないの?」

「んー、結ぶつもりだったんだけど、ピン忘れて来ちゃって。あたし髪が短いから、ピンがないと遅れ毛が出ちゃうんだよねぇ」

 肩をすくめて見せると、真唯ちゃんはカバンの中をごそごそとやりだした。

 何?と覗き込めば、目の前にヘアピンを突き出された。

「はい、貸したげる。まだうちのクラス揃ってないみたいだし、今結びに行こ」

「ほんと? ありがとーっ!」

 ぎうと抱きつく。真唯ちゃんは大袈裟だなあと笑うけれど、彼女のこういう気遣いは本当に嬉しいのだ。

 並んで歩き出すと、とりどりの派閥旗が目に入ってくる。『絶対優勝!!』や『風になれ!!』などという爽やかなものに混じって、黒い生地に赤抜きの文字で『天上天下唯我独尊』と書きなぐられた奇妙なものまである。

 思わず笑ってしまいそうになった折、その旗の下で談笑する朝霞大翔の姿が目に入ってきた。―――確かに、あの人の派閥にはお似合いだ。

 それにしても、普段は仏頂面がトレードマークのような人なのに、同じ派閥の人とはあんなに楽しげに会話するのか、と思うと、何だか妙な心地がした。珍獣を見た時というのは、こんな気分なのかもしれない。




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