3-2
眉根を寄せて尋ねる。朝霞はもう一方の手を差し出してわたしを立たせながら渋い顔をした。
「そりゃないだろ。イモムシみたいになってるお前に手ェ貸してやろうと思ってわざわざここまで出向いてやったのに」
「イモムシ……?」
「よしっ。この前のカリを返す」
わたしが返そうとした言葉は、朝霞の元気な声にかき消された。わたしは溜め息をついて、即座に首を横に振る。朝霞がしかめっつらになってにらんできたが、前言撤回のつもりはない。
東山たちの目がある中で朝霞に助けてもらうのは何故か癪だったのだ。気恥ずかしい感じもする。そもそも、わたしは朝霞の派閥の人間ではない。気にかけてくれるのは嬉しいけれど、本来なら敵同士なのだ。―――もっとも、わたしはゲームに参加するつもりなんてないと心に誓っているのだけれど。
「先輩も、まだ授業中でしょう? わたしは平気です先輩はちゃんと授業に出てください」
「まったく……真面目だな、あんたは。疲れねぇの?」
「真面目といわれても…………これが地ですから」
わたしは肩をすくめて見せた。
「まぁいいや。頑張れよ。これから、もっとしんどくなるぜ」
「……はぁ」
わたしは疑問符を抱えて朝霞を見る。わたしを立たせた朝霞は、黒いTシャツをなびかせながらクラスに戻った。
真唯ちゃんがゴミ袋ジャンプをしながらこちらに跳んでくる。上手いものだ。わたしはまた、溜め息をついた。
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