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借り物競争の中に、ゴミ袋ジャンプという競技がある。その名の通り、ゴミ袋に両足を突っ込んで、ひたすらジャンプするという何とも体力を浪費するものだ。
体力をやたら使うだけではない。これがなかなか難しいのだ。
ゴミ袋ジャンプで50メートルなんて冗談じゃない。わたしは1メートルも進んでいなかった。でも、真唯ちゃんは得意なようだ。遥か彼方を飛び跳ねている。
「何で……こんな競技が……っ借り物競争に……っあるのさ……ッ!」
息も絶え絶えに文句を言うと、またこけた。七転八倒状態だ。
あー、もう。馬鹿馬鹿しい……。
溜め息をつきながら呟く。もう起き上がるのも面倒くさい。そうも言っていられないので立ち上がる。
背後で笑い声。東山だ。さんざ恥をかかされたものだから、わたしのこの姿は、愉快でたまらないらしい。
うつむいて歯を食いしばると、わたしはまた跳んだ。
―――ちくしょう……っ。わたしだって、好きで転んでるんじゃないやいっ。
普段の運動不足が祟って膝から下がだるい。感覚がなくなりそうだ―――……。
「あッ」
バランスが崩れる。どうして、こんなものが出来ないのだろう。頭ではどうすればいいか分かっているのに、体が動いてくれない。
「―――っ……ぁっ、」
不意に、腕が掴まれる。ボキボキッ、と肩が派手な音をたてた。
「さっきから見てたけど、お前、運動神経ニブイなぁー」
呆れた声。
わたしは地面に膝と片手をついて、声のした方をみた。
「―――朝霞先輩……、」
茶色い髪が太陽に透けてより赤い。学校指定のTシャツをこの人が着るはずがないが、今まとっている黒いTシャツはどうかと思う。
青春ドラマのヒーローみたいな行動をとった不良を呆然と見つめながら、わたしの頭はせわしなく回転していた。
―――相変わらずやることが極端な人だなぁ。こんな黒いTシャツを着ていて怒られないのかな? あぁ、でも武将だし……、怖いしね………
あれ、今朝霞はわたしを助けてくれたの? いや、でもすごく気に障ることを言われたような――……。
「……何してるんですか?」
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