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第2週 1-1


第2週


―――1―――






 五月に行われる体育大会で、わたしは借り物競走に出場することになった。借り物競走といってもただ物を借りるだけではない。途中に縄跳びあり、網くぐりあり、フラフープ回しあり……と、障害物競走も兼ねているのだ。ちなみに、松本良平の傘下に入った真唯ちゃんも一緒だ。

 クラス競技は長縄とびだ。その他派閥ごとの競技に、騎馬戦があるらしい。

「真唯ちゃんは騎馬戦出るの? 松本良平担いで?」

 わたしは一時間目の授業の用意をしながら答えた。

「良平先輩を担ぐのは2、3年生だよ。派閥の威信を賭けた対抗戦だからねェ」

 真唯ちゃんは肩をすくめて笑う。でも、いかにも残念そうな表情なのだ。わたしなら、松本良平を担ぐくらいなら自分が騎乗したほうが余程マシだと思ってしまうのだが。

「あずは結局どこにも派閥に入らなかったの?」

「んー。なんか入りそびれちゃったかなぁ。でも最初からどこにも入らないつもりだったんだけど」

「じゃあ、自分の派閥作るの?」

「まさか。ゲームに参加しないつもりだってこと。面倒臭くって

 肩をすくめながら言って、わたしは立ち上がった。

「あずって、真面目なのか不真面目なのかよく分からないよね」

 真唯ちゃんが苦笑する。わたしは口を尖らせて言い返した。

「それは、学校の方だよっ。学校ぐるみでゲームしてるんだから」

「そうだけどさ。あたしはこういうの好きだな。なんか楽しいし」



―――真唯ちゃんは、松本良平の派閥だもんねェ。



 幸せそうな真唯ちゃんを尻目にわたしは深い溜め息をつく。真唯ちゃんが松本良平に並々ならない好意を抱いているのは火を見るより明らかだ。普通なら好きな人って分からないように隠さないか、とは思う。可愛いので構わないが。

 好きな人と同じ派閥で一緒にいられるのなら、さぞかし楽しいだろう。


「あずもさぁ、一緒に良平先輩のとこ入ればよかったのに」

 惜しそうに言う真唯ちゃんに、わたしは激しく首を振った。

「それは勘弁!」

「良平先輩、いい人だよ?」

「それは分かるんだけどねぇ………………」

 わたしは渋い顔をした。

 彼が悪い人間でないことは分かっている。人当たりがよくて、優しくて、勉強もそこそこできて。わたしに対する態度に悪意が感じられるわけでもない。それなのに彼にかけらの好意も感じることができないのは、やはり第一印象の問題なのだろうか。



―――あぁ、あたしって結構根に持つタイプだったんだ。



 そんなことを考え、再び溜め息をつく。

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