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    4-2




「お前の意見が聞きてぇ」

 不意に朝霞が口を開く。

「はい?」

 思わず構えて聞き返すが、朝霞は気にもせず続けた。

「俺の派閥に入りたがる一年が少ねぇ。……つか、体験にすら来ねぇし。はっきり言って、存亡の危機だ。水野、お前俺んとこどう思う?」

 そりゃ怖いからなぁ。

 うっかり思ったままを口にしかけて、わたしは思案顔をつくる。否、考えるまでもなく理由は明白だ。恐らく朝霞のガラの悪さに怯えている一年生が多いのだ。わたしだって怖い。出来るならばお近づきにはなりたくないし、一刻も早く逃げ出したくて仕方がないのだ。



―――でも、そんなこといったら朝霞大翔は逆ギレしそうだ。



「正直なところを聞きてぇ。キレたりしないから、本音言えよ」

 葛藤するわたしに気付いたのか、朝霞はふぅと溜め息をついた。観念するしかないようだ。

「……あの、すごく怖いです」

「怖い?」

「たぶん、その……茶髪とかが……近寄り難いっていうか……」

 眉尻を上げた朝霞にしどろもどろになって言う。

 嫌な汗が出た。心臓が高鳴る。わたし、無事にここから帰れるのだろうか―――?

 ふとそんな疑問が頭の中を駆け抜ける。

「この髪は地だ」

 わたしの心配をよそに、朝霞は不機嫌そうな顔をしたものの声音はそのままで答えた。少し意外だ。

「他に何かねぇのか」

「うーんと、……やっぱり松本良平……先輩とか、生徒会長さんとかと比べて印象が……」

「悪いか?」

「悪いっていうか……入学したての一年生には強烈かなぁ、と…………」

 あえて強烈、と言葉を変えて言ったのは細やかな自己防衛措置だ。――もう遅い気もするが。

「俺には良平のようなことはできねぇ。そもそも、お前なら年下のやつらに媚びるようなことできるか?」

「……いや、媚びるってちょっと違うと思いますけど」

 真顔で問われたけれど何処かズレている。

 不器用な人だ。

「でも、松本良平のマネをする必要はないと思います。……ちょっと怖い感じが、先輩の特徴だと思いますし」

 とても誉め言葉とは捉えがたい言葉だったが、朝霞は照れ臭そうに、そうか、と笑った。


 この素直なところを知れば他の一年生も朝霞を恐れなくなるのではないだろうか。そう思ったけれど、一方でまだ目の前の『武将』に恐怖を抱いている自分にも、わたしはまた気付いていた。

 とりあえず、怒らせないに越したことはない。


「あの……頑張って、くださいね」

「サンキューな。――カリは、必ず返す」

 ニッと、朝霞はとろける笑顔で言う。女殺しの笑顔だ。




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