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――4――
「まぁ入れ」
入れというわりに依然腕を掴んだままの朝霞。わたしに有無を言わせず椅子を差し出す。わたしは素直に椅子に腰掛けた。朝霞もわたしの正面に椅子を持ってきて座る。
「単刀直入に言おう」
朝霞が真顔になる。凄まれるのも怖いが、真顔も真顔で怖い。わたしは朝霞大翔のオーラのようなものに圧倒されっぱなしのような気がした。
「俺の派閥に入れ」
「イヤです」
――えぇっ?! マジで?
反射的に答えてからわたしは自分に聞き返す。
「何故断わる?」
朝霞が不機嫌そうな表情をした。何故、と言われても困ってしまう。
「わたしがどこの派閥に入るかはわたしが決めます。松本良平……先輩も派閥によってカラーがあるって言っていたし、わたしはわたしに合う派閥を探します」
「お前、良平のトコロに入るのか?」
「入りません。…………あそこだけは、絶対に」
わたしは力強く首を横に振って答えた。朝霞が少し表情を和らげた。
「それなら、ひとまず安心だな。――水野梓、お前自分の意思をはっきり表現するやつだな」
「黙っていたら自分の思っていたことと違っていたりするじゃないですか。そういうの、嫌いなんです」
わたしは朝霞の顔を初めて正視した。こうして見ると、わりと整った顔立ちをしている。
―――なんだ、結構かっこいいじゃん。
だけど、ときめいたりなんかしていない。ときめくには、あまりに酷すぎる初対面だったもの。
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