第二話 下水道と巫女服
連続投下!!いやぁ、実は一話と二話は一纏めにしていたんですけど、長すぎたので二話に分担しました。
多分、次回から、プロローグに沿った内容になると思います。
人生初めての鬼ごっこは命がけだった。
逃げても逃げても893さんは群がる蝿のように沸いて来る。って、いつの間にか100人以上に増えてるんじゃないか?高校生相手にこんな大群を用意するなんて、ホントジジイはいくら借りたんだ!?
車まで持ち出されて逃げ場もどんどんと狭まれてる始末だし……もう詰んでないですか、これ?
本気に人生を諦めかけていた俺だが、捨てる神あれば拾う神もいるようだ。
なんと俺の目の前には漫画やアニメでおなじみの脱出の王道、マンホール様がおられたのだ!!
これはチャンスとマンホール様を持ち上げようとするが、うんともすんとも動く気配が感じられない。
アニメのように簡単に開けられるんなら子供が危険な事するから当然かぁ。マンホール様、流石です。
だが、俺はマンホール様の壁を乗り越えなければ先に進む事が出来ない!!
今こそ俺は人間の持つ最後の力、火事場の馬鹿力を使うのだ!!ぬおおおおおおおおおおおお………!!おおおおおおお……!!!!
「って、出来るかあああああああああああああああああああっ!!!!!」
やばっ!?思わず大声出しちまった……相変わらずよよく響く声だなぁ……893さん達に場所を教えちまったよ……このままじゃ捕まるのも時間の問題だな、ハハ♪……終わった、俺の人生はも終わりだ……
「ガタッ」
……?あれ、今なんかに当たったような………ふと、自分の足下を見るとそこには……………マンホール様が重い腰を動かされていた!!あれか?大声が馬鹿力を呼ぶキーワードだったのか!?
とにかくマンホール様が動いて下さったおかげでこのピンチを切り抜けられる!!
俺は迷わずマンホール様の動いた隙間を潜り、893さん達がここに駆けつける前に急いでマンホール様を元の位置に戻した。
サラバだ893さん達、もう会う事もないだろう。フフ……勝った、勝ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
893の追撃から逃れて1時間……もう893さん達は追って来ないだろうとマンホール様を再び玉座から動かそうとするが、一度動いたマンホール様は完全なる不動の王と化し、仕方なく出口を捜す事に……
馬鹿力使わなきゃ動かなかったんだから当然か……
臭い下水の流れる道を歩いて約1時間経過。道中、DOBUNEZUMI達との死闘を迎え、傷つきながらも絶えず休む事なく歩いていると俺の目の前に2時間振りの光が差し込み、ようやく俺は薄暗い地獄から抜け出した!!
……と思ったら、そこは見た事のない新天地………ここ何処?
コンビニで地図を見せて貰おうと思ったが、俺の体は長時間下水道に居た所為か下水道の臭気を纏っている。
こんな体で店に入りでもしたら、店にかなりの迷惑だし、臭いのお陰でバスに乗ったり人に話しかける事も出来ない。
そんなこんなで自力で目的地を目指すしかなく、5時間も浪費し、辺りもすっかり夕焼け色に染まった頃、やっと俺は目的地に辿り付く事が出来た。
ジジイの書いた場所だから古ぼけた洋館か幽霊屋敷みたいな場所だろうと思っていたが、案外普通の5階建ての白壁塗りのビルで、安心したようなちょっと残念なような…
…どっちやねん。
でも、このビル全部が同じ会社のってのも凄いな……早速中に入ろうとドアを開けたがドアには鍵がかかっている。
どうやらここはドアの前にあるインターホンを押して、係の人に鍵を開けて貰うシステムみたいだ。
つーか、インターホンあった事に気がつかなかったな。見つけるのに3分も使ってしまったよ。
ドア自体にインターホンが付いてるとは盲点だった……
インターホンを押すとBGMに『ドナドナ』が流れてくる。俺は市場に売られるのか?
気持ちを鬱にさせるBGMが流れる中、ようやくBGMが止まり係の人が応対に……
「はいは~い。辰無君やっと到着したんだね。もう長くて長くて、月日は待ちくたびれちゃったよ~」
……出たと思ったら何故か出来ることなら会いたくない同級生の姿が見えてくる。
あれ、幻影かな?何でここでエターナルロリと言う言葉が似合う、ストレートな黒髪を足までかかる程伸ばし、一部分を除いて小学生に間違われるちんちくりんな小娘、柏葉月日の姿が見えるんだ?
まさか…実は俺は月日の事が好きで、つい係の人の姿が月日に……いや、そんなわけないだろ!!
つまりこれは……月日がここで働いているって事だよな……
最悪だ、よりによってクラスで一番の変人と評判の奴と一緒に働くなんて……そういや、何で月日は巫女服で俺の目の前にいるんだ?
朱い袴に白衣を纏ったその姿は神社でよく見る典型的な巫女装束だ。
なにか?ここは普通の会社に見せかけたコスプレパブだったのか?
いや、ジジイがそんな場所に俺を行かせるはずはないし、こんな胸だけが成長したちんちくりんを見て欲情する奴なんざこの世にいな……
「てい、月日ちゃんえるぼ~」
「げぼっ!?」
か…考えに浸っていたら……隙を突かれて…鳩尾に、エルボーを…食らわされた………みぞ、鳩尾は地味に痛いというのに…あいつは鬼か?
「辰無君、誰が胸だけが成長したちんちくりんなのか教えてほしいな~?それに、何に関しては本気で嫌なのかも教えてくれるよね~?」
……前言通り奴は鬼だった。溢れんばかりの怒気を放出させるその姿はまさに鬼と言ってもいいだろう。
それどころか月日は読心術まで持ち合わせてやがる。俺の心を読むなんて…今度から学校でも注意しなければ。
「いや、辰無君普通に声に出してるんだよ。」
「そうなの!?」
先程までの怒気が呆れに変わった月日。俺ホントに考えてる事声に出るんだな、気をつけないと……
「ちなみにそれも声に出てるからね。それより辰無君、ここで立ち話もなんだし事務所に入ろっか。あ…でも、その前にしなきゃいけない事があるね。」
「マジかよ……で、その前に俺は何をするんだ?」
どうやらこの癖は簡単に直らないらしい……ショックで項垂れる俺に、月日はかわいらしい笑顔を満面なく向けて言う。
「お風呂入って、今の辰無君臭いから。」
……………どうやら、下水道の臭気はまだ残っていたらしい。
ヒロイン(?)の月日にはまったくといっていいほどモデルがありません。なぜだろう……一応、他にも出てくるキャラにはモデルがいるのにこいつだけいないなんて、不思議だ。
ちなみに作者はロリ巨乳も巫女も大好物ですww