♭1「新入部員」
3年生が卒業して、1月がたった。
ぼくたちはとうとう3年生だ。
そして、始業式も入学式も1週間まえに終えて、ぼくたち吹奏楽部は部室でのんびりと過ごしていた。
「まじクラス最悪。まずあいついるし・・・」
部長の川村ひかりと、トロンボーン担当の河野春香が愚痴っている。
「ほんと嫌だ。でもひかりちゃんと同じクラスになれてよかった」
春香がおっとりという。
しつこいようだけど、ほんわかした可愛い春香は急に切れだす意味不明な女子なのです。
その怒りはたいていぼくのところに回ってくる。
「あたしもはるちゃんと同じクラスでよかったあ」
ひかりが和むー、と言って足をがばっと開く。
やめてよ、まったく・・・。
ぼくたち吹奏楽部は、見事にみんなクラスばらばら。
ひかり、春香が4組。
ななみとぼくと拓弥が2組。
涼太が3組になった。
あ、亜樹も3組(忘れてた・・・)。
ぼくはななみと同じクラス。
結構、うれしかったりする。
へへへ。
いひひ。
きもいからやめよう。
「あ!」
1年生から2年生に進級したパーカスの長野潮音が声を外を見て声をあげる。
潮音が何組かはまだ分からない。
「なんかいっぱい来ましたよ!」
潮音が細すぎる腕をぐるっと外に伸ばす。
「あ、まじだ!え、何!入部希望!?」
ななみが小さな背をいっぱいに伸ばして外を見ている。
ぼくもななみの隣に行く。
外には、4人の1年生女子が!!!!!!!!!!!!!!!!
少しぽっちゃりは人が二人、ななみと同じくらい背の低いのがひとり、なかなかの美人がひとり。
「見学っていうか、体験入部したいんですけど、いいですか?」
なかなかの美人の子が、はきはきとそういった。
すごい、堂々としてる・・・。
「大歓迎!大歓迎!入って入って!」
ひかりがドアを全開にして1年生たちを招く。
「かばんはそこらへんにおいていいからね!」
ななみが笑顔で言う。
忘れられがちだけど、ななみはすごく可愛いんだよ。
目がくりくりしてて、顔がほんとに小さい。背が低くて、髪の毛はショートカットだけど、さらさらしている。
でも毒舌+超ボーイッシュ+男のぼくよりも男らしい(らしい)ななみ。
なんか、複雑・・・。
ま、ななみはすごく可愛いんだ。
いろいろとね。うん。
「じゃあ、まず自己紹介から行こう!ね!」
ひかりが満面の綺麗な笑みで言う。
ひかりも美人なんだから、ものすごい下品なのと口の悪さを直せばなあ・・・。
「じゃあ、1年生からでいい?」
「じゃあ、わたしからでいいですか?」
なかなかの美人な子が手を上げた。
「牧野です。牧野美羽。1年2組です」
少しぽっちゃりの、髪が綺麗な子がつづける。
「上村雪奈です。1年4組です」
背の低い子が、小さな声で言った。
「小原です。小原美菜。1年2組」
そして最後に前髪を真ん中から分けた、すこしぽっちゃりな子。
「粟野千尋です。1年3組です」
ひかりは満足げにうなずいて、
「じゃ、次は3年からね!部長でユーフォ担当の川村ひかりです!じゃ、次なな」
「崎川ななみです。副部長です。ホルンです。はい、次春香」
「河野春香です。トロンボーンです。次りょたー」
「大橋涼太です!チューバです!はいおっさん」
「おっさん言うな。及川拓弥です。パートはパーカッション。おっさんでもお父さんでもありませんっ!」
拓弥がずばっと言う。
次はぼくか・・・。
「トランペットの立花稔です。れっきとした男です」
とりあえず、ぼくも言った。
次は潮音!
「2年生の長野潮音です。パーカスです。亜樹先輩!」
あ、亜樹いたんだ・・・。
「風野亜樹。トロンボーン。終わり」
早。
「ま、これでOKですね?じゃあ、まずやりたい楽器は!?」
「でも、あんまわかんないんじゃん?あまってる楽器だしたほうがよくない」
ななみが副部長らしきことを言う。
ななみが裏側に入って、トロンボーン、トランペット2個、ホルンを持ってきた。
「じゃ、吹いてみて!」
なかなかの美人改め、牧野美羽がトランペットを取った。
吹いてみる。
「あ、美羽上手!これでいい?」
ひかりが手を叩いていった。
「あ、はい!」
美羽はうれしそうにトランペットを吹く。
「こっちやってもいいですか?」
すこしぽっちゃりで、髪が綺麗な子改め上村雪奈がトロンボーンを手にとる。
ひかりが構え方を教えて、吹く。
「よし。雪奈もこれでいい?」
「はい!これ楽しいです」
にこにこと笑いながら雪奈がスライドを動かす。
「美菜ちゃんは?」
背の低い子改め、小原美菜(名前にも「小」が入っている!)が、ホルンをつんつんとつついている。
ななみがホルンをとって、美菜ちゃんの手に押し付けた。
「吹いてみて」
美菜ちゃんはぶー、とホルン特有のやわらかい音を出した。
「なあ美菜ちゃんはこれで決定!千尋は?」
ひかりは千尋に笑いかける。
「でもトランペットしかなくない」
ななみが美菜ちゃんのホルンをつつきながら言った。
「うん。そうだね。じゃあ、これでいい?」
「はい。トランペットー」
千尋がトランペットを構える。
なんか、結構いいじゃん。
「立花先輩立花先輩」
美羽がぼくを呼んだ。
「音階ってどんなするんですか?あ、どうやってやるんですか?」
美羽はなぜか、ちゃんとした敬語に言い直した。
「あ、えっと、それはちゃんと音を出せてから教える」
「じゃあ、頑張ります」
美羽は、トランペットを頑張っていた。
「じゃああたし美菜ちゃん教えてくる!」
「なんかおれ暇なんですけど」
涼太が腕組をしてすらりとした長い足をばたばた。
涼太は喋らなければ、かなりかっこいいのに、喋ったらアホみたい・・・。
「じゃあ、りょったはチューバ練習しとけば?」
春香が涼太の足で遊びながら言った。
「春香はゆっきー教えないの?」
「じゃあ教える」
じゃあ、ってなんだよ・・・。
まあ、ぼくはなぜか二人教えないといけなくなりましたからね!
とりあえず、頑張ります!