プロローグ 追憶
初投稿です。
よろしくお願いします。
「よっこらっしょと……」
「いやー、まいった。座るだけでも体痛むよ」
特に膝がな……いやー、年には敵わん。
「はっはっは」
そんなことないって、そんなわけないのにな。
「おっと、まずは挨拶からだな」
んん……線香は、相変わらずいい香りだ。
さて、と。
チーン
結菜。
また、今日も、目が覚めたよ。
ボケることもなく、こうしてまた、君に挨拶ができる。
今日も、見守っててくれ。
「うん、相変わらず、いい顔で笑ってる」
遺影は、これにしてと言っていたが、写真まで若作りとは。
女性の美意識には、敵わんな。
おっと、忘れておったな。
「ほら、これはいつものな」
これを置かないと、怒られてしまう。
「ふんわり堂のどら焼き。
今は夏だが、エアコンが効いてるから問題ないだろ?」
いたた……背筋を伸ばすのも、大変だ。
ふう、今年のひまわりは、良く咲いたな。
「君が亡くなってから、もう2年か……。
この寂しさは、言葉では表現できないな」
「はは、ノベル作家のくせにと、君は笑うかね。
まぁ、元ノベル作家だから、許してほしいな」
それに、君が私を、そうさせたのだからね。
元の私は、何にもない普通の人間だった。
……。
「君がいない時間は、あの頃の孤独が戻ってきたような気分だよ」
……いかんな。
毎日、毎日、涙ぐむとは。
孤独と言っても、本当の独りじゃないからな。
「ああ、心配しなくていい。
華と楓君や、聡と美月さん、優司や杏奈、夏希と修治がいる」
「相変わらず、幸せなのは変わりないな……少し物足りないが」
やはり、君がいないとな。
「そうだ。やっと、君と同い年だ。
私もそろそろお迎えが来てもいいと思うがね」
おっと、これは言ってはいけなかったな。
「ただ、家族にまだ死なないでねと言われてしまったよ。
数年で2人も死んだら迷惑なのかもな」
「ふ、なんての」
少し、不謹慎だったかな。
「なに、冗談さ。
ブラックジョークというやつだ。この冗談は、君の前でしか言えないよ」
シーっ、みんなには、内緒だよ。
「この冗談を言うと杏奈と夏希が涙ぐむんだよ。ほかのみんなにも、そんな事言うなときつく叱られてしまったな。子供と孫に叱られるとは、いやはや、幸せなことだな……ちょっといい男になり過ぎたか」
「はっはっは」
「……ふう。久しぶりに、こんなに笑ったな」
いや、さっきも笑ったの。
……のう、結菜。
「……毎週、誰かが顔を見に来てくれる。
こんな幸せなことがあっていいのかな。まぁ、いいか。頑張ったしな、俺」
「ワッハッハ」
おっと、そうだ。
まだ、伝えてないことがあったな。
「今日は、みんなが来てくれるよ。
お盆だからね。君を迎えに行かないと」
胡瓜と茄子の馬。
今年は、なかなかいい出来だな。
来年は、翼でも生やしてみるか。
ふふ、にしても、相変わらず不釣り合いだな。
このどら焼きは。
ん、なに。まだ店があってよかったって?
ああ、確かにな。
「ふんわり堂が、まだ続いててよかったよ。
ほら、想い出の味も永遠ではないからね。運がいいのかもな」
「それにのう」
「これを食べると、君との思い出が蘇るからね。
それに美味しいしな。幸せの味とは、こういうことを言うのだろう」
四分の一個、いただくぞ。
「どら焼きといえば、君だからな。
昨日、夢に君が出てきたとき、そういえば、ふたりきりで食べてなかったことを思い出してね」
「ふふ、久しぶりに、ここで食べちゃおうと思ってな。
本当は、みんなと一緒に食べるから我慢してねと言われてるが……まあ、もう一回食べればいいしな」
「なにせ……」
「もう一度、君と、どら焼きが食べたくてな」
甘さ控えめの生地とあんこ。
柔らかい甘みのクリーム。
どら焼きを通して、思い出す。
結菜との、日々を。
過去の記憶が、思い出の味と共に、鮮明に蘇る。
第一話18:10
第二話18:20
投稿します。




