表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/72

6 悪女は冷徹騎士(悪魔)に立ち向かう


 イッタイナニガキニクワナインダ


 酔っているせいか、いまいち理解出来ない。

 とりあえず「ナニモ?」と返してみると、一段と冷たい……氷の塊みたいな声に殴られる。


「用意した部屋では寝られないと、あてつけがましく野宿をしているそうだな。食事も口に合わないと拒んだ上に、毎日食料庫に忍び込み、大量に盗みを働いているとか。……来客用の貴重なワインまで」


 ヨウイシタヘヤデハ……ショクジモコバミ……ヌスミヲハタライテ……ワインマデ……


 ダメだ。何も入って来ない。

 答えられないでいると、酒で火照った顔に強烈なブリザードが突き刺さった。


「そんなにここが気に食わないなら、今すぐにでも荷物をまとめて出て行け」


 ソンナニココガキニクワナイナラ……にもつをまとめて……出て行け?


 急速に酔いが冷めていく。

 シャキッと身体を起こすと、見た目の割に筋肉質な柱をべシッと叩きながら言った。


「あのね、わらしはね、絶対ぜっらいに出れ行かない! ハイジのベッドは最高だし、ご飯も……ひっく、酒も毎日美味しい! だから、絶っっっ対に出れ行かない!!」


「……何だと?」


 とにかくこの綺麗なCGが、私に対して好意的でないことだけは分かる。瓶に直接口を付け、残りをぐいっと飲み干すと、拳で口を拭いながら立ち上がった。


 くうっ……サツキもメイリーンも、どうしてこんなにチビなの?

 食料庫から拝借した椅子兼テーブル代わりの木箱を引きずって来ると、CGの前に置きよいしょと登る。

 ふう、まだ微妙に低いけど、見下ろされることはなくなったわ。


「ところであんら、わらしが誰だか知っれるの?」

「……誰だ?」

「冷徹騎士の奥さん! この家で二番目に偉い人なんだから」


 腰に手を当てフンとふんぞり返るも、本当にひっくり返りそうになり、手をぐるぐると回してバランスを取る。何とか元に戻り汗を拭ったその時、急激な気温の低下に背筋が震えた。


 寒っ……何これ、初夏の陽気だったはずなのに。

 むき出しの二の腕を擦っていると、その冷気の発生源に気付き、ひいっと叫びそうになった。

 氷のひびにも負けない、立派な青筋をピシピシと立てたCGは、薄氷みたいな唇をふっと歪ませる。


「そうだな……お前は確かにこの家で二番目だ。……俺が一番なんだから」


 オレガイチバン……いちばん……一番。

 全身が凍りつく。


「あの、もしかしれ、あんらが冷徹騎士?」


「……ああ、どうやらそうらしいな。その呼び名にふさわしく、今すぐにでもお前を放り出したい所だが……ひとまず部屋へ入れ。処分はそれからだ」


 …………部屋!!


 木箱からぴょんと飛び下りると、自分でも信じられない速さで、寝室(ガゼボ)までダッシュする。柱にしがみつくと、私を天国から引きずり落とそうとする悪魔に向かい叫んだ。


「いやだ! 絶っっっ対に部屋には入らない! 絶っっっ対に掃除なんかしらくない!」


 長い足ですぐにやって来た悪魔は、「掃除?」と首を傾げる。


「掃除も料理もしらくない! もう働きらくないの!」


 悪魔はますます首を傾げるも、次第に顔が険しくなっていく。


「とにかくここにいる! 外で暮らす! お外が一番!」

「……うるさい。とにかく一旦部屋へ入れ!」

「いやだ! いやだあ!」

「黙れ! ガゼボを草だらけにしやがって!」

「草じゃない! ハイジのベッドだもん!」


 コアラみたいにしがみついて抵抗する私を、悪魔はめりっと引き剥がす。肩に担ぐと、暴れる私の尻を容赦なく叩きながら歩き出した。

 しばらくすると、悪魔はふと足を止め、くんくんと息を吸いながら言う。


「お前……風呂は?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
木山花名美の作品
新着更新順
総合ポイントの高い順
*バナー作成 コロン様
― 新着の感想 ―
はて? 旦那はサツキというかメイリーンの部屋を知らない?
コドモだ。。。(^^;) 酔っ払ったコドモ。 とりあえず、介抱するしかない。‥‥手のかかる‥‥。
外で何日も……。まあ当然そうなりますよね。笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ