表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/72

49 悪女はボイコットする

 

 ああ、顔を合わせたくないのかな。

 不本意な上に生臭いキスなんかしちゃったから。


 うんうん、酒飲み放題なら一日くらい引きこもってもいいわよ。風呂はさっき入ったし、トイレも部屋に付いてるから。問題ないわね。


 私は「オッケー」と軽く了承し、この日は一日中豪華な酒盛りを楽しんだ。


 ところが……



「え、今日も出ちゃダメなの?」

「はい。今日と申しますか…… “ 風呂以外、しばらくは部屋から一歩も外へ出るな ” と」


 今朝も朝風呂を終え食堂へ向かおうとしたところで、同じことを告げられる。

 しかもナガディアではなく、侍女達のドンであるクニコから。


 しばらく? 何それ。

 軟禁? 監禁? ちょっと感じ悪いわよね。


「離れに行きたいんだけどな。ハイジのベッドで寝たい」

「あちらはご不浄がありませんし、軟き……奥さまが生活されるには不便な場所です。どうかこちらのお部屋でお過ごしくださいませ」

「……ご主人様と直接話すわ」


 返事を待たずに、立ち塞がるクニコをすり抜ける。

 へへっ、ちょろいもんよとドアノブを回すが、びくともしない。


「無駄だと思いますよ。屋敷中の兵総出で押さえていますから」


 背後から響くクニコの冷淡な声に、メラッと闘志が燃え上がる。


 ぬあにを!?

 ようし! 何としてでもこじ開けてやる!


 ドアにタックルしたり、足でガンガン蹴飛ばす私。

 少しずつ隙間が開き、向こうの兵と睨み合っていると、クニコが恐ろしい言葉を放った。


「 “ もし命令に従えないなら、例のぐるぐるを部屋に放り込む ” とのことです」


 例のぐるぐる……

 ひいいっ!


 飛び退いた反動で、床に尻もちを付く。いててと尻を擦っている間に、開きかけていたドアは再び固く閉ざされてしまった。



 酷い……辛かった前世を脅しに使うなんて、なんて残酷なの。

 鬼! 冷徹! 悪魔!


 私はゆらりと立ち上がり、悪魔の手先(クニコ)へ向かう。


「……鬼で冷徹な悪魔に伝えて。私を閉じ込めるなら、一生風呂には入らない。屋敷中を強烈な納豆臭で覆ってやると」




 ꩜♰꩜♰꩜♰꩜♰꩜♰꩜♰


「……アイツがそんなことを?」

「はい」


 食堂でクニコからの報告を受けた冷徹は、額を押さえため息を吐く。


「とりあえず閉じ込めておけ。今朝風呂に入ったのなら、一日二日放っておいてもそこまで臭くはならないだろう」


 さすがに非難の色が浮かぶクニコの顔から、冷徹は目を背ける。



 ……分かっている。自分が酷いことをしているのはよく分かっている。だけど……


 オニが暴走しかけたあの時、唇だけじゃなく、他の場所へも触れたいと思ってしまった。

 手を伸ばす前に気絶してくれた為、事なきを得たけれど。


 ……いや、違うな。大事おおごとだ。

 愛してもいないのにキスしてしまったのだから。

 魚臭いのに何故か甘い、奇妙な唇に夢中になってしまったのだから。


 顔を合わせたら、今度こそ暴走してしまうかもしれない。抱き締めて、唇を寄せて、そして……


 やはり、オニが落ち着くまで閉じ込めておこう。



 ふらふらと食卓へ戻った冷徹へ、王子が探るような視線を向ける。


「夫人はまだ体調が悪いのか?」

「……ええ。まだ安静が必要だそうです」

「そうか。早く良くなるといいな。……でもまあ、食欲はあるようで安心したよ。酒やらオードブルやら、昨日は一日中、大量のワゴンが夫人の部屋へ向かってたから」


 フォークを握る冷徹の手が、ピクリと震えたのを王子は見逃さない。


「あ、王子が滞在しているのに、夫人がもてなさないなんて無礼だ! ……なんて咎めるつもりはないよ。こちらが勝手に押しかけたんだし。ただ、団長も色々と大変そうだなって」


「……どういう意味ですか?」


 王子は水をコクリと飲むと、含みのある言い方で問い返す。


「いわゆる……アレ、白い結婚なんだろう? 君達夫妻は」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
木山花名美の作品
新着更新順
総合ポイントの高い順
*バナー作成 コロン様
― 新着の感想 ―
メイリーン監禁計画概要。 ・お風呂以外は部屋から出さない ・飲み食いし放題 ・全ての手勢を軟禁に使用 ・いざという時にはナルト
それが愛です。
もうヤってしまえ(笑) ガマンは身体に良くないゾ冷徹(*´ω`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ