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1 悪女は掃除なんてしたくない

ゆるっとさくっとお楽しみください♪

 

「こちらが奥様のお部屋です」


 はあ、やっぱりねと私はため息を吐く。

 屋敷の外れの、更に外れにあるその部屋は、想像以上にパンチの効いた部屋だった。

 埃の積もったゴミが無造作に押し込められているそこは、ハロウィンでもないのにあちこち蜘蛛の巣や虫の死骸で飾られている。家具らしきものはゴミが置かれた小さなテーブルと椅子、扉が片方外れたクローゼットに、綿の飛び出したシングルベッド。それだけ。


 この部屋を何日も掛けて掃除(&修繕)したヒロインは、本当に偉いわ……

 とある小説の何話目かを思い出し、私は首を振った。



 ここは生前、私が愛読していたロマンス小説『男狂いの悪女だったのに、慎ましく暮らしていたら冷徹将軍に溺愛されちゃいました』の世界だ。

 中華料理屋に嫁ぎ、姑と小姑らに散々こき使われた挙げ句、多分過労で死んでしまった私。気付けばヒロインの、『メイリーン』に転生していたのだ。


 嫁ぐ馬車の中で、私は突如前世の記憶に目覚めた。初めは異世界転生なんて本当にあるんだなとわくわくしていたが、先のストーリーを考えると憂鬱になってきた。

 だってこのヒロイン、本当はいいなのに悪女だって誤解されている、悪女モノの典型的なタイプで。最初は嫁ぎ先の使用人達から意地悪される(ヒーローは無関心で何も知らないパターン)んだけど、得意な家事ですいすい躱しちゃうの。で、その健気な姿に段々誤解も解けて、『旦那様、奥様はいい方ですよ。もう少しお心を開いて……』とかなんとか助言されちゃったヒーローが、ヒロインを気にし始めて溺愛するようになるんだけど。


 …………いや、無理。

 死んでまで家事なんてやりたくない。絶対にやりたくない。

 朝早くから家事や開店準備に追われ、閉店してやっと一息吐けると思ったら、夫と姑のお夜食作りまで。奴隷も同然の日々を思い出しゾッとする。

 悪女のままでいいし、溺愛なんてされなくていいから、とりあえず休ませて欲しい。


 私はくるりと振り返ると、侍女長に向かいこう言った。


「せっかくいいお部屋ですけど、私は外で寝ます」


「……は?」


 目を見張る侍女長。実家から持って来た小さなボストンバッグを胸に抱えると、私はにこりと微笑んだ。


「星が綺麗だから、外で寝たいの」



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― 新着の感想 ―
本来の「奥様の部屋」はどうなってるんだろう? 流石に嫁を迎えるのに部屋を用意しない貴族はいないだろうし、館内に存在するはず…………。 侍女長さん、勝手に使ってる?
確かにこの部屋で寝るくらいなら、屋敷の敷地内で野宿した方がまだ良さそうですよね。 埃で気管支を傷めそうですし、ノミやダニが居そうですし、寝て起きたら大きな蜘蛛におはようございますをされそうですし。 初…
型破りなヒロイン! テンプレの大事な要素のひとつ、使用人にも虐げられる……。よく考えると、使用人が勝手に采配するのってどうよ? という。笑 どうなってゆくのか楽しみにしてます♪ すぐに新連載! すご…
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