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第14話 変革する世界(中編)

これは、とある男が世界を支配するまでの物語である。

「おい! 我が国だけでなく、世界中で起きているというのは、一体どういうことだ!?」



 首相の鬼気迫る表情に、部下は一瞬引き攣った顔をすると、すぐにタブレットに目を落とした。



「はっ、はい! テレビ報道でもありましたが、世界各国で保有している兵器や戦闘機に戦艦、それを作る製造工場……さらには、それに関わる書物やデータも消え去っております!」

「なにっ!? 書物やデータまでも!?」



 工場や兵器そのものが無くなるのはまだいい。

 また愚民どもを働かせて作らせればいいだけだから。

 だが、それを作るデータや書物すらも無くなっているとなると、兵器自体を製造するのは困難……



「なぁ、本当に海外でも同じことが起こっているのか?」

「はい! 先程、各国の報道機関から情報収集をしましたが、我が国以外でも同様のことが起こっているのは間違いありません!」

「そうか……」



 本当に、他国でも同様のことが起こっているのか……だとしたら、今頃、他の首相達も対応に追われているということだろう。


 他国の事情を聞いて一安心した首相は、安堵の溜息をついた。

 すると、報告に来た部下が深刻そうな顔で俯いていることに気づいた。



「おい、他に何かあるのか?」

「はっ、はい! それが、その……」



 何かを口に出すことを躊躇っている部下が、冷汗を掻きながら視線を彷徨わせる。

 そんな部下の態度に苛立った首相は、小さく舌打ちをすると酷く面倒くさそうな顔で部下のことを睨んだ。



「いいからさっさと言え。これでも忙しい身なのだぞ!」

「はっ、はい! でっ、では……」



 首相以外の閣僚達がつまらなそうにスマホを弄っている中、再び顔を引き攣らせた部下が姿勢を正して小さく深呼吸をすると、目を閉じて大きく叫んだ!



「そっ、それが! 兵器が消え去った直後、破壊されているオゾン層が急速に修復され始めているのです!」

「「「「「「はあっ!?」」」」」」





「破壊されているオゾン層が、急速に修復されているだと!?」



 そんな、バカなことがありえるのか!?


 部下から齎された事実に、首相と閣僚達が驚きの声を上げると室内が再び沈黙に包まれた。

 すると、環境大臣を仰せつかっている酷く肥え太った男が、眉を上げながら立ち上がった。



「うっ、嘘だ!! あっ、あれは! 今の発達しすぎた現代では、修復不可能だと大昔に提唱されて……」



 そうだ、化石燃料を主流としている現代社会で、破壊されたオゾン層を修復するなんて無理だ。


 狼狽えている環境大臣に同調するように首相や他の閣僚達も深く頷いた。

 しかし、怯えきった顔をタブレットを覆い隠した部下が、肩をビクビク震わせながら声を上げた。



「しっ、しかし! こちらに来る直前に届いた緊急連絡で、『広がりつつあったオゾン層の穴が、徐々に小さくなっている』報告があったのです! 証拠はこちらに……」



 そう言って、部下は他の部下達と共に部屋の奥にあるプロジェクターを使い、タブレットの中にある画像を映し出した。



「なっ!?」



 そこには、塞がる前のオゾン層の画像と塞がり始めているオゾン層の画像が並べられた。


 確かに、穴が少しだけ小さくなっている。だが……



「ねぇ、これ本当に定期報告で来た画像なの? もしかして、手柄を上げたいがために適当に画像を加工して送ってきたやつじゃないの?」



 暗くなった部屋に映し出された画像に目もくれず、つまらなさそうな顔でスマホを弄っていた女性の閣僚に対し、タブレットを持っていた部下は大きく首を横に振った。



「いっ、いえ! これは、我が国の観測所から届けられた定期報告ですから、報告用の画像に加工なんてしたら、間違いなくクビになります! そっ、それに! 最悪、国家反逆罪で……」

「そうだな。バレた時のリスクを考えれば、ここにいる俺たちを騙すメリットは無いな」



 まぁ、歴代首相の中で最高の頭脳を持つ俺を妬んで加工した画像を送った可能性もあるが……それにしても、考えが無さすぎる。

 それに、俺自らが選んだ優秀な人間が我が国の観測所で働いているので、俺を騙すなんて思考に至るはずがない。

 だから、この画像は間違いなく本物だろう。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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