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18小鬼と盗賊

【ボトムズ視点】



 50年前。

 口減らしのためだったんだろう。

 ボトムズと名付けられたワシは親に売られ奴隷となった。


 反抗すればムチで躾られ、痛みに負けていうことを聞いていた。


 奴隷となって2週間が経ったころ、次は貴族に売られた。

 貴族はワシをどんな風に拷問するのか説明した。


 爪を剥ぎ、水に沈め、身を焼く。


 恐怖に震えるワシをみて、醜悪に満ちた顔で貴族たちが笑う。


 奴隷となって日が浅かったからだろう。

 ワシは人生を取り戻すと決意した。

 生まれた家が違うだけで主従がきまる。

 価値が決まるなんぞおかしいと世界に反抗した。


 貴族を殺してワシは逃げ続ける。

 寝泊まりする街を変え、盗みを働き、また逃げた。



 盗みは危険だと学んだ。

 追っ手が増えると身を潜めるのが難しくなる。


 なんとか稼ぐためにワシは定住の必要がない冒険者となった。


 ゴブリンと互角程度のワシに冒険者の才能はなかったが他の職にはつけない。


 なんども危険な目にあった。

 同じ冒険者を見捨てて囮にしたこともある。


 それでも生きてきたのは生まれた意味を知りたかったから。


 生まれ、捨てられ、殺し、見捨て、そんなワシはなぜ存在するのか。

 存在価値がないのか。

 そんなハズはないと。


 そして1ヶ月前。

 金も払わず忍び込んで見世物を見にきていた。

 自分より下の者をみて生きる価値があると信じたいからだ。


 するととんでもないやつがいた。

 左腕しかないやつ。


 ボロボロのガリガリが必死に客を笑わせている。

 なんでそんなに必死なんだと不思議じゃった。


 死んだほうがましだろうと。


 だからつい、ききたくなった。

 ワシの存在価値を知るヒントになるかもしれないと思って。


 話を聞いたらなんのことはない、ただのバカだった。

 だからいってやった。



「そりゃ、生きてるって言わねぇぞ? 死んでねぇだけだ」



 しまった。虚空を見つめていやがる。

 コイツの生きる希望を奪ったかと思った。

 したら、コイツは「教えて」といいやがる。

 「僕のなにが死んでいるのさ」と聞いてきやがる。


 こいつはワシと同じだ。

 絶望の淵で自分を言い聞かせるために無理やり死ねない意味を作っているだけ。


 思わず逃亡の手伝いをしてやった。

 とはいっても錠を外しただけ、それ以上のリスクは犯せない。

 死んだほうがマシな環境で生き続けたコイツをもう少しみてみたかったんだ。


 錠を外すのは朝飯前さ。ワシは『盗賊』だからな。



 数日たってから奴隷の子供は手足をくっつけてワシの前に現れた。

 生意気にも弟子にしろと交渉してきた。


 初めての経験。

 誰かがワシを必要としたのだ。


 最初は面倒だった。

 しかし奴隷の子供は覚えがよくて、次々に習得していくさまがなんだか面白かった。


 師匠、師匠とついてくるさまが面白かった。


 幸せそうに笑うさまが面白かった


 だから浮かれていたのかもしれない。

 赤黒い皮膚をもった鬼の姿が目にはいるまで気が緩んでいた。



「伏せろっ。……不味いなゴブリンじゃ」



 まだ気づかれていないか?



「師匠! 右だ!」



 声に弾かれたようにとび、死角から迫っていたゴブリンの一撃をかわす。


 どこで拾ったのか斧なんてもってら。


 初めにみたゴブリンも集まってくる。

 わざと気づいていないふりをしていたのか。


 そーかい。

 羽織っていたローブのフードを深く被り、杖を武器代わりに構える。



「お前さん、先に山を降りろ」

「でも師匠じゃ勝てないでしょ」

「逃げるくらいはできるさ。お前さんがいなけりゃな」

「足手まといだってこと? 僕だって1匹くらいならひきつけられるよ」


「……果実を盗んだ日のことを覚えているか? お前さんは脚が遅い。かばいきれん」


「でも」


「さっさといかんか!」



 奴隷の子供は行ってしまった。

 慣れない大声を出したからか、それとも緊張からか喉が痛む。


 ジリジリとワシを囲むゴブリンどもは子供を追わない。

 老人を狙ったほうが確実だとわかっているんだろうか。



「月に一度しか使えん技能だが、斧は危ないからな」



 『盗賊』のワシが唯一使える技能は持ち物交換。

 ゴブリンの斧が瞬時に杖に代わり、ワシの手に斧が握られる。


 ゴブリンが2匹、倒すか? 逃げるか?

 子供を追われると厄介だ。


 慣れない手付きで斧を構える。



「ちぃとばかし老体の相手をしてもらおうかのう」



 先に動いたのは杖をもったゴブリン。

 斧を取り戻したいのだろうか、掴むような動作を向けてくる。


 後ろへ1歩下がり斧を振り上げると。

 石が右目に飛び込んできた。

 犯人は無手のゴブリン。


 ひるんだワシに杖が横なぎに振るわれる。

 横っ腹にめり込んだ杖を抑えながら、斧を振り下ろす。

 首を狙ったつもりだが、杖ゴブリンの左腕がとぶ。



「ぐっ」



 杖と喧嘩したところを無遠慮に痛みが走る。

 骨が折れたか?


 怪我を負ったが無手と杖の2匹ならなんとかなるかもしれない。

 そう値踏みした時。

 木の影から新手のゴブリンが2匹。

 ニタニタと卑しい笑いを浮かべて現れた。


面白くなりそう!

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