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15大銅貨と弟子入り


 僕が見世物小屋をでるきっかけをくれたじいさん。

 名前は……



「ボーズさん?」

「確かにワシは禿げとるがボトムズじゃ」



 そうだボトムズだ。

 腰を曲げて杖をついた姿。

 4日前のままなにも変わっていない。



「お前さん見世物小屋から逃げ出したのか?」

「お陰さまでね。ほら、手足も手に入った」



 ひらひらと義手を揺らしてみせる。



「そりゃよかったの」

「ただ無職だから稼ぎがなくて――――」



 まてよ?

 見るからに無職の年寄りが目の前で生きている。

 奴隷落ちもせずにだ。



「ボトムズって無職?」

「商人だったらもっといい暮らしをしとるわい」



 「はい」といえば済むのに、ひねくれたボトムズは真っ向から回答しない。

 しかし幸運。

 ボトムズなら知っている、無職が稼ぐ方法を。



「ねぇ、僕をボトムズの弟子にしてよ」



「どうやら耳の調子が悪いようだ。そろそろ帰るから大銅貨を離してくれんか?」

「弟子にして。稼ぎかたを教えて」

「聞いとるか?」

「日課とか生きるコツとかを知りたいんだ。弟子にしてよ」

「お前さん人の話を聞かんタイプか」



 まともに会話をすればボトムズの見た目どおりフラフラとかわされそうな気がした僕は強引に話を進める。



「弟子なぞ余計な負債じゃ、他をあたれ」

「嫌だ。そうだ弟子にしてくれたら大銅貨はボトムズにあげる」



 道端に落ちていた大銅貨を交渉材料にボトムズを揺さぶる。



「この大銅貨はワシが落としたもんだ。交渉には使えんぞ」

「僕に嘘は通用しないよ」



 大銅貨をつかむ力を強めるとボトムズがよろめく。



「な、なら大銅貨なんぞいらんわい」

「じゃあ手を離したら?」

「…………」



 心臓をつかまれたように苦しそうな表情で大銅貨から手を離そうとするボトムズ。

 しかし結局ボトムズの手が離れることはなかった。



「わかった。わかったから、弟子にするから」

「逃げたりしない?」

「逃げるものか。老人が若人から逃げられるハズもないじゃろ?」

「嘘は通用しないっていったよね」



 狸ジジイめ逃げるつもり満々じゃないか。

 しかも逃げきれる確信までもっている。



「お前さん心が読めるのか?」

「職業柄ね」

「いやお前さん無職じゃん」



 他愛ない無職トークを結びにボトムズが折れた。



「仕方ない。ワシはお前さんを利用する。そして質問されたら答えるだけ」

「ボトムズの弟子になれるならそれでいいよ」


「師匠と呼ばんか!」



 ぐるりと返った手のひらは僕から大銅貨をひったくった。



「これを持て」



 渡されたのは袋。

 肩にかけて運ばなきゃ地面に擦れてしまうくらいの大きさだ。


 ところどころに小さな穴の開いた袋に赤くて丸い果実が放り込まれる。



「ボトムズ師匠、これは」

「決まっとるじゃろ食料じゃ」



 それはわかる。

 問題は果実の出所だ。

 僕の目が悪くなければ店頭に並んでいる果実を詰め込んでいるように見える。


 ひとしきり詰め終えるとボトムズ師匠は僕に近づき、こっそりと指示をだす。



「太陽に向かって走れ」

「え?」

「泥棒! 果実泥棒じゃああー!」



 急かすように僕のお尻を杖でつついた師匠は僕を指さしている。

 集まる視線。

 高まる怒気。

 全て僕に向けられている。


 クソッはめられた!

 脱兎のごとく走り出した僕は昇っていく太陽に向かって叫ぶ。



「弟子入り先を間違えたぁああ!」



 それから走り続けた。

 とにかく走り続けた。



「はぁはぁはぁ」



 無我夢中で走りつづけた僕は気街の最東端へきたようだ。

 めまいがする中で担いだ袋からひょいと果実を抜き取られる。



「お前さん体力ないのう」

「はぁはぁ、なんでそんな元気なんだ。それに速さも異常だ」



 陽が攻撃的に僕を照らす。

 滝のような汗をながし、乾いた喉の悲鳴を無視して、僕は質問をとばす。



「山育ちだからかの?」



 疑問系で返してくる師匠。

 ダメだ感覚で物を言うタイプだ。

 「AをするとDになる」と説明する人種。

 BとCが抜け落ちている、教えるに不向きな人間。


 でも逃げなかった。

 約束は守るようだ。

 ならなんでもいい。


 BとCは観察して盗むことにしよう。


面白くなりそう!

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