14目的と目標
「これなんか似合うんじゃないかな?」
「そ、そうっすかね! じゃあ買っちゃおうかな!」
「てメェ娘に手をだすなら覚悟しろよ」
ざわざわとした喧騒が僕の意識をゆっくりと連れ戻す。
自然と開いた目には客らしき男を脅すガンバスがうつる。
目を泳がしていると嬉しそうに呆れるグレースと目があった。
「おはよう。やっと起きたんだね」
「どれくらい時間がたった?」
「ったく、挨拶くらい返しな。アンタが倒れてから1日半ってとこよ」
1日半。
窓から差し込む暖かな光は僕の意識を覚醒させ時間を教えてきた。
丸一日なにも入っていなかった僕の胃袋が「ぐぅ」と抗議してくる。
「あのー、早速約束とは違うんだけど」
「いいよ。命の恩人だからね。ただし一食だけ。ウチもまだまだ貧乏だからさ」
「助かります」
深々と頭を下げた僕は、湿らせなくても噛みきれるパンを食べながら活動方針をねる。
早急に確保が必要なのは食事だ。
パンを食べなきゃ死んでしまう。
できればグレースがくれたような白いパンを食べたい。
いいかえれば稼ぎが必要だ。
そして暴力に屈しない力。
ナイルの件は相性がよかっただけ、決して自分が強いだなんて勘違いは起こさない。
冷静な人間に囲まれたら素人相手でもどうにもならない。
感情的なバカが単騎でくるぶんにはなんとか凌げる。
その程度でしかない。
しかし、無職の僕には稼ぎも強さもそう簡単に手にはいらない。
「どうしたもんかな。ガンバス~無職でも稼げる方法知らない?」
「職業の持ちの俺だって稼げてねぇんだから無理だな」
「頭の固いガンバスに聞いた僕がバカだったよ」
とは言うものの、街の人間はほとんどガンバスと同じ意見だろう。
現実として無職は奴隷かスラムに落ちる。
親や友に捨てられみじめに死んでゆく。
「ちょっと外の空気でも吸ってくる。それとガンバスが稼げていないのは客を威嚇するからだよ」
行き詰まったせいか少し意地悪をいってからコツコツと義足を鳴らしながら街へでた。
身体を動かすことはとても大事だ。
身体が固いと頭まで固くなる。
僕の場合ウォーキングは運動にならないようにも見えるが、義肢装具は僕の魔力を使い動いている。
そして魔力は体力と関係性があるそうだ。
現に走れば心臓の鼓動は数を増し、疲労も感じる。
「あっちは商店街か」
一昨日は気づかなかったが店の近くに他の店がずらりと並んでいるのが見えた。
なにかヒントがないかな。
僕は期待を胸に義足動かし店頭を眺めていく。
黒パン・ 銅貨1枚
白パン・大銅貨2枚
さっきグレースにもらった白パンは大銅貨2枚で買えるらしい。
奴隷時代に食べていた黒パンの20倍の価値。
「奴隷の維持は安上がりだったんだな」
数日に一度しか食べられなかった黒パン。
こいつを食べるために媚びへつらい、嘲笑を受けながらも芸を売った。
よし。
目標は毎日白パンを食べられるようにする。
つまり大銅貨2枚の30倍、月に銀貨6枚分の収入源を作るということだ。
パンから目線をはずし歩を進めると、あしもとでチャリッと音が聞こえた。
大銅貨だ。踏まれた大銅貨が「僕はここだよ」と訴えかけている。
「ラッキー」
あと一枚拾えたら明日の食事代ゲットだなんて皮算用をしながら伸ばした手は、見知らぬ手とぶつかる。
見知らぬ手のもとを視線で追っていくとギョロ目のじいさんが僕をみていた。
「「あのときの……」」
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