13追加報酬と休息
条件の一部をかえたか。
でもダメ。全然ダメ。
どんな条件でも僕は納得しない。
ナイルと僕は根本的に同等じゃないんだから。
日にパン一切れで育った僕と同等の筋力じゃないんだから。
手足を失った僕と同等のハズがないんだから。
世界は不公平なんだから。
僕はなにがなんでも反発する。
決して同等だなんて認めない。
「無駄だよ」
僕は新しい脚で床をしっかりとつかみ、体重が逃げないように拳へのせる。
個人的に恨みはないけど思いっきりいくね。
「さあ、こい!」
意思の固さを象徴するように真っ直ぐ放たれた僕の拳はナイルの腹部にめり込んだ、背中の肉が押されて盛りあがる。
痛みをかばい降りてきた顔面へ、ガンバスの怒りを体現するように続けて義手の一撃が炸裂。
苦痛に顔を歪めながらもナイルは笑う。
勝利を確信した色をみせる。
全力を浴びせたつもりだが、所詮は子供の力。
身体能力の向上までしている職業持ちに致命傷はあたえられない。
たがそれでいい。
次は簡単そうな精神攻撃だ。
「ナイルはなんでスラムにいるの? 交渉人なんて職業があればもっといい生活ができるだろ?」
「お前には関係ない」
ナイルは自尊心の塊みたいな色。
僕は同じような人間を他にひとり知っている。
奴隷商人ヤンの相手をしてきたんだ、コントロールしてみせる。
「使役されるのが嫌なんでしょ?」
「さあな」
息づかいが変わった。
図星をつかれた顔をしているよ。
「で、スラムに逃げたんだ。猿山の大将にくらいはなれると思って。頭の足りないナイルにはお似合いだね」
「条件は整っているんだ、生きて帰れると思うなよ!!」
「ほら顔が赤くなってほんとうの猿みたいだ。ふふっ」
「殺す!」
怒りを燃料に矢のような速さで放たれた拳は、僕に届かない。
感情をあらわにすればするほどよくわかる。
いつ放ってくるのか。
どこを狙ってくるのか。
心底驚いた色のナイルの顔面へ再び拳を向ける。
とっさにガードをするナイルはもう僕しか見ていない。
「なーんてね」
後ろには鬼の形相をした魔導具職人とその娘がいるというのに気づかない。
「二度と娘にちかづくんじゃねぇえええ!!!!!」
今日一番の大声とともに頭を砕かれたナイルの意識は彼方へと消え去った。
「さて、追加報酬だけど」
場所を魔導具屋に移して、ビジネスの話を切り出す。
「いやしいやつだな」
「好きにいっていいよ。僕の希望をいうね」
いまだ僕に残る問題は稼ぎだ。
無職の僕は稼ぐ手段がない。
となると適切な要望は
「ガンバスの家に住まわせてほしいんだ」
「飯は出せんぞ」
「やっぱり? じゃあそこはなんとかする……それじゃあ……おやすみ」
限界。
見世物小屋をでて約12時間。
いろいろありすぎた。
奴隷時代で過酷な環境にはなれているけど、それでも空っぽ。
正直ナイル戦で使い果たしたけど、命を繋げる約束をするまではと根性で保っていた。
バランスをとることもできず視界が回る。
鈍痛が僕を起こそうとするが、まぶたは重くのしかかった。
次に目を開けられる保証はない。
しかし、意識の手綱はスルリと僕の手から離れた。
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