第94話 国王との謁見です
私はブランにエスコートされて国王との謁見の間に向かう。
再び王宮ダンジョンを歩いていたがそんなに謁見の間は遠くはなかった。
「あら? 意外と謁見の間って近いんですね」
「ああ。今回は内部者用の謁見の間だからね」
「内部者用?」
「国王と謁見する場合は外部者用と内部者用の二か所の謁見の間があるんだ。外部者の者は王宮の奥まで入れるのは危険だからもっと王宮の外側に近い場所にあるが内部者用は王宮内で働いているような人物たちとの謁見用だから王族の住居の近くにあるんだ」
私の問いにブランが答えてくれる。
なるほどね。私はこれから王宮で働くことになるから内部者に分類されるということね。
「さあ、着いたよ」
ブランが扉の前に来ると警備の兵士が扉を開けてくれる。
「ブラント王太子殿下、ゼラント王子殿下、アリサ・ホシツキ・ロゼ・ワイン様、クリスタル・ロゼ・ワイン様がお着きになりました」
どこからか私たちの名前を呼ぶ声が聞こえる。
それと同時に開けられた扉から私たちは中に入る。
中は広くて赤い絨毯が玉座と思われる場所の近くまで敷かれている。
私は頭を下げて国王の顔を見ないようにしてブランにエスコートされて玉座の前までゆっくりと進む。
国王が頭を上げていいと言うまで私とクリスは頭を上げられない。
やがて玉座の前に来るとブランとゼランが私とクリスから離れて玉座の隣に立つ。
「面を上げよ」
国王の声が聞こえて私は頭を上げた。
そして私は初めてこのダイアモンド王国の国王の顔を見た。
国王は金髪に茶の瞳で50代半ばくらい。
イケメンまではいかないけど整った顔のおじ様って感じ。
その隣に座っている女性がおそらく王妃だろう。
王妃は金髪に緑の瞳をしていてとても美人だ。
う~ん、ブランとゼランは王妃に似たのかな?
「待ちかねておったぞ。そなたがワイン伯爵の娘のアリサか?」
国王の言葉に私は自己紹介をする。
「はい。ワイン伯爵の娘のアリサ・ホシツキ・ロゼ・ワインでございます」
私は国王に一礼する。
すると国王はニコリと微笑んだ。
「アリサはワイン伯爵領の改革をしてワイン伯爵領の収入を上げた手腕の持ち主と息子たちから聞いておる」
「私の力は微々たるものです。皆で改革に取り組んだ結果でございます」
ブランとゼランが私のことをどのように国王に説明しているか分からないから私は無難な言葉で答えた。
変に過大評価されても困るもんね。
「謙遜するそなたの性格も素晴らしいな。美人で女性ながら文官の才能があるなど息子たちがそなたに夢中になってる気持ちが分かるな」
いえ、夢中になられ過ぎて困ってるぐらいです。
それより国王から見ても私は美人に分類されるのね。
やっぱりこの国の美の基準は分からないわ。
王妃の方が私より何倍も綺麗じゃない。
「そなたは王宮の文官として働きたいと希望していると息子たちから聞いてな、息子たちと相談した結果、アリサには「首席総務事務官」としてこの国のため働いてもらいたい」
首席総務事務官って何をする事務官かしら?
首席ってついてるぐらいだからたぶんそれなりに高い身分なんだろうけど。
「ありがとうございます。国王陛下」
とりあえずここでは国王にお礼を言っておいて後でクリスに聞こうかしら。
「アリサの弟のクリスタル・ロゼ・ワインにはアリサの副官として総務副事務官の役職を与える」
「ありがとうございます」
クリスも国王の言葉に頭を下げて答える。
「失礼ながら申し上げます。陛下。王宮での実績のない者をいきなり首席総務事務官の役職を与えるのはいかがと思いますが」
その時私たちの側にいた男が国王に声をかけた。
この人、誰かしら?
「ハウゼン宰相は反対か?」
「反対というわけではありませんが、見ればまだアリサ殿は若い女性でありますのでいきなり宰相の次の位である首席総務事務官は荷が重いのではないかと」
え? この人が宰相なの?
それに今この人言ったわよねえ。首席総務事務官って宰相の次の位なの!?
それっていきなり大臣級の役職よね!?




