第81話 悪役令嬢は運命のようです
「それにしても盗賊団を警備員にスカウトするなんてアリサも無茶をするね」
ブランはそう言いながら用意された紅茶を飲む。
あれから事の顛末をブランとゼランに話した。
一緒に聞いていたワイン伯爵の顔が真っ青になっているのが私にも分かった。
そりゃ、そうよね。私に何かあったらワイン伯爵の首が飛ぶかもしれないものね。
今はブランたちの要望で私の部屋にブランもゼランもいる。
部屋の中には私を含めて三人だけだ。
「でも盗賊団の頭を説得したなんてさすがはアリサだね」
今度はゼランが私を見つめて言う。
因みに私たちはソファに座っているが私の右にブラン、左にゼランが座っている。
なんかこれが定位置になりつつあると思うのは私だけかしら。
「ええ。盗賊の頭が話の分かる人で良かったですわ」
私がそう話すとブランもゼランも不機嫌そうな顔になる。
あれ? 私、もしかして地雷踏んだ?
「まさかとは思うがその盗賊団の頭には何もされていないよね? アリサ」
ブランの冷たい瞳が私を見つめる。
ヒョオオオオオーーーー!!!と吹雪が吹いたように部屋の温度が下がった気がした。
「もちろんです。盗賊の頭さんはイケメンでしたけど私の話を聞いてくれただけです!」
私は慌ててブランに弁明する。
「へえ? イケメンなんだ」
今度はゼランが低い声で私の左手を握ってくる。
いけない、イケメンなんて余計なこと言っちゃった!
また、地雷を踏んじゃったわ。
私のお馬鹿さん!
「いえ、ゼラン様やブラン様には到底負けますよ。お二人以上のイケメンなんて私は会ったことありませんし」
私がそう言うとブランもゼランも途端に笑顔になる。
「そうか。アリサは私たちをイケメンだって思ってくれているんだね」
「それは嬉しいな」
な、なんとかやり過ごせたかな。
まあ、事実この二人が超絶イケメンなのは本当だし。
「はい。お二人のような優しくて頼りになって素敵なイケメンはそうはいません」
私は二人を賛美する言葉を続ける。
だって、こんなところで死にたくないし。
それに嘘は言っていない。
手紙のやり取りで二人にも優しい面があることは分かったし自分のことを愛してくれてることも分かってる。
そこで私はふと気になっていたことをブランとゼランに聞いた。
「そういえば、ブラン様とゼラン様は婚約者がいたそうですが婚約破棄したとは聞きましたけどどんなお相手だったんですか?」
ブランとゼランは顔を見合わせる。
「それを知ってどうするんだ?」
「いえ。今後の参考までにと……」
元婚約者が誰か知っておいたほうが王宮に行った時それなりに対処できるかもだし。
「私の相手は私とイトコに当たる王族の姫だ」
ブランは何でもないかのように答える。
王族の姫ですか!?
高位貴族であることは覚悟の上だったけどまさか現王族の姫とは!
「私の相手は宰相の娘だ」
今度はゼランが答える。
宰相の娘!?
文官のトップの宰相の娘なんて王宮に文官の身分で行くつもりの私の上司の娘ってことになるんじゃないの!?
そんな二人の令嬢からは私は憎まれているでしょうね。
やはり私は悪役令嬢決定だわ。
私のキャラってそういう設定だったの!?神様!!
これも運命だと思い頑張れ。
なんか今、他人事のように神様に突き放された感じがしたのは私の気のせいかしら。




