第79話 盗賊団ゲットしました
その日、私はウルフと夕飯を一緒に食べていた。
ウルフという名前のせいか肉料理が多い。
私も食べてみたがなかなか味もいい。
だけど肉ばかりでは全部食べることはできない。
私がお腹いっぱいになって「ごちそうさま」をするとウルフが私に言う。
「なんだ、もう食べないのか?」
「もう充分食べました。美味しかったわ」
「もう少し食べて肉をつけた方がいいんじゃないか? 特に胸の辺りとか」
ウルフは面白そうに笑いながら私に言う。
こんにゃろ! 私が胸がないって言いたいのか!?
確かにあまり胸が大きいとは言えないけどさ。
「いえ。もうお腹いっぱいなので。それにしてもうちの料理人にも負けないぐらいのいい味だったわ」
私は勝手に盗賊の食事ってなんか素材をそのままがっつくようなイメージがあったが今回出てきた料理はちゃんと調理されて貴族の食卓に並べてもいいくらいだ。
「ああ。貴族の家に勤めたこともある元料理人が作ってるからな」
「へえ、そうなのね」
まあ、生まれながら盗賊になったわけではないだろうからいろんな事情で盗賊になった人がいてもおかしくない。
「ねえ、ウルフ。貴方はなぜ盗賊になったの?」
私は興味を引かれて聞いてみた。
「そんなこと聞いてどうしようっていうんだ?」
「別にどうしようとも思ってないけど、今まで人殺しをしないで盗賊をしていた理由がなんでかなと思っただけよ」
ウルフは少し考えていたが話し出した。
「俺は元軍人だ」
「え? 軍人?」
「ああ、今から約10年前に俺はある領主貴族の私軍にいたんだがその領主貴族が汚職で捕まり俺は職を失った」
へえ、元軍人だから剣の腕が立つのかしら。
「あちこち転々としていた時にこの盗賊団の先代の頭と知り合いになって盗賊団に入った。人を殺さないのは先代が人殺しを禁止にしていたからだ」
「まあ、そうなのね」
「先代は三年前に亡くなって俺が後を継いだが俺もあまり人を傷つけることは好きじゃなかったから部下の者にも人をなるべく傷つけることはしないようにと命令してある」
ふ~ん、そういう経緯があったのか。
「盗賊団の剣の腕がいいのも貴方が教えたの?」
「ああ、そうだ。相手を傷つけない倒し方を教えた」
ウルフはそう言って肉にかぶりつく。
そうか、ウルフが頭だからこんな軍隊みたいな盗賊団ができたのかもね。
私は夕飯を終えてベッドに横になった。
さて、明日は盗賊たちを説得しないとね。
次の日、ウルフが盗賊たちを集めて私が言った内容を説明した。
盗賊たちは目を丸くして驚いている。
まあ、それは当たり前よね。
「その警備員になったらどんな仕事をするんだ?」
一人の男が質問する。
「今、考えているのは囚人たちが働いているのを見張ったり、市場の警備をしたりすることよ。町の警備は警備隊がやるけど警備員は警備隊の手が届かない部分を補ってもらうことになるわ」
「警備隊とは違うのか?」
「ええ、警備隊になるにはある程度の身分も必要だし、警備隊は基本的には国に属する組織だけど、警備員の契約相手はワイン伯爵よ」
そして私はワイン伯爵領では雇用契約書を結んで働いてもらうことになることを説明する。
「アリサの言ったとおり、盗賊を辞めて警備員になれば町で堂々と暮らせるようになる。お前たちは一生盗賊でいたいか?」
ウルフの言葉に盗賊たちは黙ってお互いの顔を見合わせる。
「お頭、俺はお頭も警備員になるならお頭について行きたいです」
一人の男がそう言うと「俺も」という声が上がり始める。
「お前たち……。自分の一生を決めることなんだぞ。分かっているのか?」
「はい。俺たちも普通に働いて町で生活できるならそうなりたいです」
「そうか……」
どうやら盗賊たちの意見はまとまったようだ。
「アリサ。俺たちはワイン伯爵と契約を結ぶことにする」
「ありがとう! ウルフ」
やったわ! 盗賊団ゲットだぜ!




