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第7話 大陸共通語は日本語でした

 私は自分に与えられた部屋をじっくりと観察した。

 置時計があったので確認するが日本と同じ作りをしている。


 つまりこの世界も24時間で一日が終わるのだろう。

 家具を見るとやはりどこか中世ヨーロッパ時代を思わせるような家具だ。


 う~む、貴族が出てくるだけあって中世ヨーロッパ時代のような感じではあるけど、さっきの話では役所とかも存在するみたいだし……。


 そしてカーテンを開けてみる。

 窓から外の景色を見ると空は青い。太陽もある。


 鳥の鳴き声が微かに聞こえておそらく伯爵家の庭であろう場所には様々な植物が植わっていて花が咲いている。


 パッと見た感じおかしな植物は無さそうだ。

 日本にもよくある植物たち。


「やっぱり、異世界感が足りないわ、この世界。空が血のように赤かったり人間食べちゃうような植物があったりしないなんて」


 私は少しガッカリする。

 こんな長閑な所で伯爵令嬢になって暮らすなんて贅沢なようで刺激が足りない。


 職場で上司に怒られるようなことの方がいいとは思わないがそれにしてもこの世界ってあんまり地球と変わらなくない?


 そうだ、この世界の文字はどうなってるのかしら。


 私は部屋にあった小さな本棚にある本を手に取り開いた。


「え?」


 私は我が目を疑った。

 本の文字は「日本語」だったのだ。


 マジで!? ここまでのご都合主義ってある!?


 これでは文字の勉強することなく文章が読めてしまう。

 しかもひらがな、カタカナ、漢字なども完璧だ。


「ハハ……。この世界の神様ってどれだけご都合主義なのよ。これじゃあ、私は何もすることないじゃない」


 いや、待って。ここまで神様が私に優しいことがあるだろうか。

 美紀の言葉が蘇る。

 「楽な仕事には気をつけなさい。必ずウラがあるわよ」


 伯爵令嬢が「仕事」かどうかは分からないが衣食住の心配はなく、新しく覚えることもなく、生活していける……って絶対何かあるんじゃない!?

 私の勘が何かを感じる。


 そこにクリスがやってきた。


「遅くなってすみません。アリサ」


 クリスは申し訳なさそうな顔をする。

 そんな顔もイケメン予備軍のクリスが浮かべれば思わず見悶えして抱きしめたくなる。


 いけない、こんな子供相手にそんなことしたら犯罪ね。

 ところでクリスの年齢を聞いてなかったわね。


「私は大丈夫よ。ところでクリスって何歳なの?」


「僕ですか。12歳です」


 12歳ってことは小学6年生くらいか。

 芸能界では充分デビューできるわね。ってここは日本じゃなかったわ。


「さっそく質問していい?」


「はい。何でしょうか?」


「この本の文字は『日本語』?」


 私は自分が持っていた本のページを開きながら質問する。


「にほん語……?これは『大陸共通語』ですよ」


「大陸共通語……」


 さすが神様、やるわね。

 大陸共通語ってことはこの国以外でも通用する言葉ってことでしょ。

 その言葉が日本語なんて素晴らしいじゃないの。


「アリサはどこの国から来たんですか?大陸共通語を話せるんだから大陸のどこかの国ですよね?」


 クリスは不思議そうに尋ねる。


 そうね。ここは私は遠い異国の民ってことにしないとね。


「言葉は話せるけど、私の国は海に囲まれた島国なの」


 日本は海に囲まれた島国なのは本当のことだ。

 私は嘘は言っていない。


「島国ですか。じゃあ、随分遠くから来たのですか?」


「そうね。めっちゃ遠いわ」


 異世界と地球の距離がどんだけあるか分からないけどさ。


「そうですか。だからアリサはあまりこの国のことを知らないんですね」


「そうなの。大陸とかもよく分からないし。良かったらこの国や大陸のことを教えてもらえると助かるんだけど」


「いいですよ。僕が知っていることは教えてあげます。アリサには早くこの国に慣れて欲しいですし」


 私は自分の嘘を信じたクリスに若干罪悪感を感じるがここはこの世界を知るチャンスだもんね。


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