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ただの日本のヒラ公務員(事務職)だった私は異世界の最弱王国を立て直して最強経済大国にします  作者: 脇田朝洋


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第68話 相乗効果を期待します

 とりあえず超絶イケメンのモンスター王子を送り出し、ワイン伯爵を始め私たちは溜息をついた。


「アリサ。ブラント王太子もゼラント王子もアリサのことが気に入ってしまって半年後に王宮に行かせるなんて約束してしまったがアリサの気持ちも考えずすまない」


 ワイン伯爵は私に申し訳なさそうに謝る。


「いいえ、お父様。半年後に王宮に行くと承諾したのは私ですのでお父様が気になさる必要はありません。それより時間が半年間しかないので時間を有意義に使いましょう」


「そ、そうだね。いろいろ決めることがあるし……」


「そうですね。アリサの言う通りです。時間内にできる限りのことをしましょう」


 クリスも私の意見に賛同してくれる。

 そう、クリスも半年後に王宮に行くのだから私やクリスがいなくてもワイン伯爵たちが改革をやっていけるようにしなければならない。


 さあ、そうと決まれば今日は市場の問題をワイン伯爵と話さないとだわね。


「お父様。町の市場の件についてお話したいのですが」


「市場? うん、分かったでは執務室に行こうか」


 私たちはワイン伯爵の執務室に向かった。

 シラーとシャルドネも出勤して来たから私たちの話し合いの議事録を作りがてら一緒に話し合いに参加してもらう。


 私とクリスがいなくなったらワイン伯爵を支えるのはシラーとシャルドネになるから私たちがどのような話し合いをしていたかを二人にも知っていてもらう必要があるのだ。


 もちろん、シラーとシャルドネとは既に雇用契約書によって契約を結んでいて通常の事務作業にプラスしてワイン伯爵の補佐する仕事もしてもらうことになってる。

 その分給料は少し多くした。


 シラーとシャルドネは今までの給料でいいと言ってくれたが元々は事務作業で雇った二人なのでそれ以上の仕事をさせるのにはそれ相応の対価を払うのは当たり前だと二人を納得させた。


「実は以前にも話しましたがこの町の市場は町の中にバラバラに存在しているのでそれを植物園のある広場に集めて市場を開いてはいかがと思いまして」


「市場を一つにまとめるのかい?」


「はい。そうです。そうすれば商人同士の売買もいちいち町を歩き回らず済みますし、民が市場に買い物に来るのも一か所で用事が足ります」


「ふむ。なるほど。確かにあの土地は私の財産だから使うのは自由だが、場所代を取っている各組合長がいい顔しないんじゃないかな?」


 ワイン伯爵は私の案に意見を言ってくる。


「クリス。各組合長が場所代を徴収してるの?」


「はい。そうです。市場に店を出す場合はその品物によって市場を所有する組合長に場所代を払って店を出すのが普通です。場所代が入らないとなれば組合長は怒ると思います」


 なるほどね。その組合長たちを説得しないといけないのか。

 そうよね。市場がまとまることで自分たちの収入が減ると組合長たちは思うでしょうね。

 市場をまとめることで組合長にも利益をもたらす方法を考えないとか。


「市場をまとめても場所代自体は徴収するわ。でもそれはワイン伯爵家が徴収するのよ。そしてその一部を組合長に市場の責任者としての給料として渡すことにしたらどう?」


「それでは逆に場所代は高くなりませんか? ワイン伯爵家にも組合長にも収入が入るようにすると」


「いいえ。クリス。場所代は安くしてその分出すお店を増やすのよ。一つのお店からの収入は安くてもお店が多ければ今までと同じ金額ぐらいは稼げるはずよ」


「お店は増えるでしょうか?」


「相乗効果を計算に入れるの」


「相乗効果ですか?」


 クリスは首を傾げている。


「例えば今まで果物の市場では果物しか買えなかった。野菜の市場では野菜しか買えなかった。これではお客から見たら目的の物を買ってしまえば買い物は終わりでしょう?」


「まあ、そうですね」


「でも市場にいろんな食物や生活用品が売ってたら買い物に来たお客さんは「ついでに」目的の物以外の物も買うこともできるわ」


「ついでに他の物も買うということですか?」


「そうよ。つまり相乗効果で市場全体の売り上げが上がれば市場にお店を出したいと思う商売人は多くなって店が増えるわ」


「なるほど」


 そう、よくスーパーに卵を買いに行って「ついでに」特売のお肉を買ってしまうという人間の心理に皆も心当たりない?


 そのお店が卵しか売ってなければ卵以外を買うことはないがスーパーのようにいろんな物が集まっていると人間は目的以外の物も買ってしまう傾向にある。

 目的以外の物が一品でもお客が買えばスーパー全体の売り上げは上がるのだ。

 まさに市場は巨大なスーパーマーケットよ!


「それだけではなく個人のお客を相手にするお店と商売人同士の売買をする場所を分けるのよ」


「そうするとどうなるのですか?」


「今までは商売人はいちいち市場を回って商談していたけれど商談が一か所でできるなら商売人たちも余計な時間がかからず物流のスピードも上がるわ。それにね、そのことが商売人の間で広まればワイン伯爵領に来る商人も増えるはずよ」


「なぜ商人が増えるんですか?」


「彼らはね、『時は金なり』っていうことを知ってるからよ」


 どこの世界でも商売をする人間は『情報』と『時』を大事にする。

 いち早く情報を得て適切な時期を見て商売する。


そのために商談にかける時間はなるべく短くしたいはずだ。

 それが一流の商人である。


 私の友人の会社を経営している人物がいつも言っていた。「商売は『情報』と『時』を制した者が勝利するんだよ」ってね。





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