第64話 中身はやはりモンスターです
なんでこうなったのだろう……。
いくら考えても分からない。
私は応接室のソファに座っている。
私の右側にブラント王太子が座り左側にはゼラント王子が座っている。
二人の王子は「自分が隣に座る」と譲らなかったので私は超絶イケメンにサンドイッチにされて座ることになってしまった。
私の前のソファにはワイン伯爵夫妻とクリスが座りワイン伯爵は明らかに動揺している。
そりゃ、そうよ。二人の王子がいきなり自分の娘に同時にプロポーズされるのを見たら動揺するわよね。
一番動揺してるのは私よ!
「ワイン伯爵に娘がいるとは知らなかったな」
ブラント王太子がそうワイン伯爵に言うとワイン伯爵は緊張しながら答える。
「は、はい。アリサは私の養女でして、まだ養女になって間もないんです」
「そうか。では私たちが知らなくても仕方ないな」
今度はゼラント王子が答える。
「こんな美しい姫が社交界にいたら私が気付かないはず無いしな」
ブラント王太子が私を見つめる。
うう! その輝いてる緑の瞳で見つめられると心臓が痛いわ!
「あ、あの。私の名前はアリサ・ホシツキ・ロゼ・ワインと言います。姫ではなくアリサと呼んでくれませんか?」
姫なんてガラじゃないからさ。
「ああ、そうだね。美しい名前があるのに呼ばないのは失礼だよね。アリサ、私はブラント・ジュエル・ダイアモンドだ。ブランって呼んでくれ」
え? ブラン? いきなり愛称で呼んでいいんですか?
って普通はダメだろ。
「アリサ。私はゼラント・ジュエリー・ダイアモンドだ。私のことはゼランと呼んで欲しい」
今度はゼラント王子が私に向かって言う。
右見ても左見ても超絶イケメンってこのシチュエーションは何なの?
私に萌え死にしろというの!
「アリサは珍しい黒髪をしているが生まれはこのワイン伯爵領なのかい?」
ブラント王太子がそう聞いてきたので私はチャンスだと思った。
私が異国人だと分かれば王太子や王子の妃にはなれないと思ってくれるに違いない。
だって王族とかって血筋とか重要視するもんね。
超絶イケメンのプロポーズを断るのは悲しいが私はまだワイン伯爵に恩を返していない。
そんな状態で王太子や王子と結婚なんてできない。
だいたい私が王妃なんてなったら美紀に爆笑されるわよ!
「私は遠い島国の出身でそこの平民なんですけどちょっと家族とはぐれてしまってワイン伯爵様に助けていただき養女にしてもらいました」
私の話にブラント王太子もゼラント王子も驚いた表情をしている。
これで分かったでしょ? 私は異国の平民出身だからこの国の王子の妃には相応しくないのよ。
「それは大変だったね。これからは私がアリサを守るから安心して私のもとに嫁に来るがいい」
「いや、王太子妃になるといろいろ大変だ。私の妻なら自由に生活できる。私と結婚して欲しい」
ブラント王太子とゼラント王子はそう言って二人とも譲らない。
もしもし? 私の話を聞いてましたか?
「いえ、ブラント王太子様、ゼラント王子様。私はお二人の妻になれるような身分でもないし得体の知れない人間ですよ?」
「ブランだ!」
「ゼランだ!」
私は二人に両側から突っ込まれて震え上がる。
ひい、ご、ごめんなさい!
これからはブランとゼランと呼ばせていただきます!
「ブラン様、ゼラン様。私は身分的に王太子妃や王子妃にはなれないんです」
私は慌てて言い直す。
「生まれはそうであっても今は我が国の伯爵令嬢に違いないだろう? 何も問題ない」
ブランの言葉に私は唖然とする。
「で、でも国王様とか宰相様とかは許さないんじゃ……」
「気にすることはない。父上も宰相も黙らせる方法はいくらでもある」
「ゼランの言う通りだ。安心して嫁いでくればいい」
ブランもゼランもそう言ってニヤリと笑う。
ひえーーー!!! この王子様たちって見た目は超絶イケメンで笑ってれば天使にしか見えないけど実は中身は悪魔とかなの!?
国王も宰相も黙らせるとか怖いんですけどーーー!!
そうよ。やっぱり中身はモンスター王子なんだわ。
これは何か逃げ道探さないとこのまま二人のどちらかと結婚させられてしまう。
いや、超絶イケメンと結婚なんて鼻血が出るくらい嬉しいけど、とにかく今はワイン伯爵に恩を返すのが一番優先よ。
この二人の王子を納得させる理由を考えないと。
それに同じ顔の超絶イケメンのどちらかを選ぶなんて無理だし!!




