第61話 採用者が決まりました
私たちは新しい事務員候補たちの面接を終えて話し合った。
「私はこのドナルド・シャンパンっていう人とターニャ・レインボーって人が好印象だったけど」
「そうですね。僕もそう思います。あと、このアダム・シェパードっていう人物ですね。筆記試験はトップの成績でしたがそれを自慢するわけでもなく腰の低い丁寧な話し方をしてましたし」
私は一番最後に面接したアダム・シェパードのなる人物のことを思い出す。
イケメンではないが確かに性格は穏和そうなイメージだった。
「お父様はどう思いましたか?」
「うん。アリサやクリスの言う通りこの3人でいいんじゃないかな」
「そうですか。ではこの3人に決定しましょう」
私たちはシラーとシャルドネを呼んでこの3人に採用通知を送るように指示する。
さてとりあえず一仕事終えたわね。
もう夕方の時間になっていた。
明日もジャッカルと即応予備自衛官制度の導入の話し合いを予定している。
因みにこの世界に馴染むように「即応予備自衛官制度」は「即応軍人制度」という名前にした。
自衛官ってこの世界に馴染まないからね。
その日はその後何事もなく就寝した。
次の日、私とクリスとジャッカルで即応軍人制度について話し合い、素案ができた。
「これで、あとはお父様の意見を聞いて大丈夫なようなら私軍の軍人に通達を出せば終わりね」
「でも最初に聞いた時は驚きましたが軍人と農民の仕事を両立させるなんてアリサ様は素晴らしい考えの持ち主ですね」
ジャッカルが感心したように私に言う。
まあ、私が考えたってより兄が即応予備自衛官だったから思いついただけなんだけどさ。
お兄ちゃんは元気にしてるかなあ。
私はもう会えないであろう自分の家族のことを思い出す。
寂しい気持ちは当然あるが今の私にはクリスやワイン伯爵という新しい家族がいる。
クリスに会えて本当に良かった。
だってイケメンだしさ。
どこまでもお前の判断基準はそこなのか。
こんなイケメンが弟なんてそうはできない経験よ。
そこにワイン伯爵が部屋に飛び込んできた。
「大変だあ!!!」
「わ!! ビックリさせないでよ! お父様」
「す、すまん。でも大変なんだよ! アリサ! クリス!」
「落ち着いてください。父上」
クリスはワイン伯爵にコップに入った水を渡す。
ワイン伯爵はその水を飲むと少し落ち着いた様子だった。
「それで何があったんですか?」
「そうだ! 実は我が家に王太子様と第二王子様が来るって言うんだ!」
「え?」
なんですって!? あのモンスター王子たちがここに来るの!?
それってモンスター王子と戦えってこと!?
「どうして王子様方が来られるんですか?」
クリスは落ち着いた様子でワイン伯爵に尋ねる。
「それが王子様方は他の領地に用事があったらしいんだが王都に戻る途中でこのワイン伯爵家を宿にしたいと連絡が来たんだ」
ここは宿屋ではないんだけど。
あ、でも王子様が滞在するなら町の小さな宿ってわけにはいかないか。
「理由は分かりましたが王子様はいつ来るんですか?」
「明日の夕方らしい」
「え? 明日ですか?」
それはさすがに急な話ね。
ワイン伯爵が取り乱すのも分かるわ。
それに王子様たちの機嫌そこねて「死刑」とか言われても困るしね。
「とにかく準備をしましょう」
ワイン伯爵家総出で王子様たちを迎える準備が始まった。
さあ、いつでもいらっしゃい! モンスター王子!




