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ただの日本のヒラ公務員(事務職)だった私は異世界の最弱王国を立て直して最強経済大国にします  作者: 脇田朝洋


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第56話 前例がないなら前例を作ります

 私はジャッカルと「職業紹介所」に向かいながらも考えていた。

 先ほどおばあさんの家におばあさんを送って家族の姿を見た時に思い出したこと。


 それは今の日本でも大きな問題になってる「介護」についてだ。

 今回のおばあさんには家族がいておばあさんが寝込んでいる間は家族がおばあさんの面倒を見るだろう。


 この国にだってお年寄りはいる。

 ならばそう言った人間が高齢になり介護が必要な場合はこの国ではどうしてるのか。


「ジャッカル。この国で高齢になったお年寄りを介護するのは誰?」


「え? お年寄りの介護ですか? まあ、普通は家族がするでしょうね」


 やっぱりそうなるわよね。


「家族がいない場合は?」


「そうですねえ……。『老人院』っていう施設で面倒みることはありますが……」


「老人院?」


「はい。家族が面倒をみれないお年寄りを面倒見てくれるところですが、希望者が全員入れるわけじゃありません」


「それはなぜ?」


「老人院自体が数が少ないですし費用もかかるので……」


 その老人院ってところはいわゆる老人ホームみたいなところね。

 でも数が少なくてお金もかかるから入れる人が限られているってことか。


「では基本は家族が面倒をみてるのね?」


「はい。そうなります。自分は警備隊の隊長とも仲がいいんですが一人暮らしで介護する家族がいなくて家で亡くなってる老人を見つけることもあるみたいです」


「そう」


 どうやら子育て支援も大事だが介護支援も必要らしい。

 日本でも問題になっていた「介護離職」の問題もきっとあるに違いない。

 仕事をしながら介護をするのは大変だろう。


 でもいずれは介護支援を充実させるにしても事業には優先順位というものがある。

 ワイン伯爵領の事業に使えるお金は無限ではない。


 助けないといけない人たちがいるのは分かっていても予算が無限じゃない以上、より優先順位の高いものから事業を行うのが普通のことだ。


 老人院があるというなら少なくても老人院の使用料の一部を助成することはできるだろうが施設の増設などは今のワイン伯爵領の予算では無理だ。


 優先順位はまずはワイン伯爵領の収入を上げること。

 そうすれば他の事業に使えるお金も増える。


 今現在介護で困っている人からみれば「なぜ私たちを助けてくれないのか?」と思うだろうし苦情もくるかもしれない。

 しかし、現実問題、どんな事業もお金がかかる以上全てを一度にできない。


 それにダイアモンド王国の法律書ではワイン伯爵の権限でできない事業もある。

 国王の決定が必要な制度を改革するのには国王や国の官僚たちを納得させる「理由」が必要だ。

 そしてワイン伯爵の権限でできる改革をすることで「前例」というものができる。


 この「前例」こそ公務員が新事業を行う時に目安にする判断材料である。

 ワイン伯爵領で事業を行ったらその事業を国の規模で導入した場合にどれだけの費用対効果を期待できるかが予測できる。


 公務員は「前例」があるものについてはその「前例」を根拠に事業を始めることが多い。

 逆に言えば「前例」のない新事業には公務員は導入することに慎重になる。


 「前例」がないとどのくらいの費用対効果が出せるか未知数だからだ。

 なので本格的にその事業を行うために試験的に一部の地域でその事業を行いその結果を見て本格的に導入するか決めることが多い。


 実際に需要があるだろうと見込んで始めた事業が思っていたとおりに需要がなく事業が廃止されることは珍しいことではない。


 だがそうなると上から「事業の見通しが甘かったのではないか」と言われてしまう。

 事業を行う費用は基本的に税金だ。

 その事業を行って廃止にした場合、その経費は100%とは言わないが基本的に無駄になってしまう。


 つまり住民から見れば「自分たちの税金を無駄遣いした」と見えてしまうのである。


 もちろんその事業を使って利益を得た住民もいるので完全に無駄とは言えないがこういうことに対して住民から苦情を言われないように役所が「費用対効果」に拘るのだ。


 これから先、自分が国を動かせるということはあまり考えられないがワイン伯爵領が「前例」になればそれに越したことはない。

 この国の官僚たちがレベルの高い官僚が揃っているかは分からないがこのワイン伯爵領の改革はこの国にも多からず影響を及ぼすだろう。


 少しでも救われる住民を増やしたい。

 私はそう思った。


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