表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただの日本のヒラ公務員(事務職)だった私は異世界の最弱王国を立て直して最強経済大国にします  作者: 脇田朝洋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/257

第55話 急病人です

「ああ、美味しかった!」


 私は久しぶりのラーメンに感動すらしていた。

 けして伯爵家の食事がまずいわけではない。


 伯爵家の料理は貴族の料理としては質素だが味は料理人の腕がいいのか美味しい。

 だがどんな料理でも毎日食べていると飽きて来る。


 ラーメンがあるってことは他にも日本と同じ料理があるかもしれないわ。

 だって採れる農産物だってあまり日本と変わらないしさ。

 楽しみが増えたわ。


「次はどこへ行きますか?」


「そうねえ……」


 ジャッカルの言葉に私は少し考える。


「じゃあ、仕事を紹介してくれる場所に連れて行ってくれる?」


「ああ、『職業紹介所』ですね」


 この世界ではハローワークは「職業紹介所」って言うのか。


「こっちですよ。行きましょう」


「ええ」


 私がジャッカルについて歩いていると道端にうずくまっている老人を見つけた。


 あら?この人、体調でも悪いのかしら?


 私は気になりジャッカルに声をかける。


「ジャッカル。あの人具合が悪そうよ。ちょっと声をかけてみましょ」


「え? ああ、あのおばあちゃんですね」


 私はおばあちゃんに近付き声をかける。


「おばあちゃん。どうかしたの?具合が悪そうだけど」


「ああ。心配ありがとう、お嬢ちゃん。ちょっとお腹が痛いだけで」


「お腹が痛い? 大変だわ。お医者様に見てもらう?」


「いいや。少し経てば良くなるよ」


 おばあさんはそう言うが額には脂汗が滲んでいる。


 やっぱり放って置けないわ。

 ここの世界の医療がどうなってるか分からないけど医者はいるだろうし医者に診てもらった方がいいだろう。

 でもさすがに救急車はないでしょうね。


「ジャッカル。この人を医者に見せたいんだけど……」


「医者はやめとくれ!わしには医者に払う金がないんだ!」


「え?」


 おばあさんは強い口調で私にそう言った。


 医者にかかるお金がない?

 この国では医者にかかるお金が高額なのかしら?

 そのことは後でジャッカルに聞くとして今は苦しんでいるこの人を助けることが大事だ。


「大丈夫よ。おばあちゃん、医者代は私が出すわ」


「え? お嬢ちゃん。あんたはいったい?」


「気にしないで単なる通りすがりの者だけど病人は放って置けないの」


 医者代がいくらか分からないが伯爵家に支払えないほど高額なわけはない。

 ワイン伯爵家のお金を使うのは気が引けるが人の命には代えられない。


「ジャッカル。この人を医者のところに運んでちょうだい」


「分かりました。おばあちゃん、ちょっと失礼」


 そう言ってジャッカルはおばあちゃんを抱き上げる。


 さすが軍隊長。力があるわね。


 そして私たちはジャッカルの案内で近くの病院におばあさんを運んだ。

 病院に着くと医者がおばあさんを診てくれた。


「これは食あたりですね。この薬を三日間飲めば大丈夫でしょう」


 良かった。大きな病気じゃなくって。

 おばあさんは薬を飲んで痛みが引いてきたみたいで顔色も良くなってきている。


 とりあえずおばあさんの医者代を払わないとね。


 診察代金と薬の代金で金額はなんと一万二千円もした。


「え? 一万二千円もするの?」


「俺が立て替えておきます」


 ジャッカルがそう言って支払ってくれた。


 ジャッカルには後で伯爵家に戻ったらお金を払わないとね。

 だけどこの国の生活水準でいったら食あたりの診察と薬で一万二千円は確かに庶民からみれば高額よね。


 今回は食あたりだったから良かったけどもっと大きな病気だったらいくらかかるのか見当もつかない。


 日本には「健康保険」があるから自己負担は基本は三割で済むのよね。

 う~ん、この国にも健康保険とかの制度があればいいのにな。


 でも「風邪ひいたから」って気軽に医者にかかれる日本って恵まれている国よね。

 この国では貧乏人は風邪もひけないって感じよね。


 いずれは医療改革もやりたいわね。

 でも医療改革はおそらくワイン伯爵領だけでは改革できないだろう。


 この国の国王ってこの現状を知ってるのかな?


 私はそう思いながらジャッカルとおばあさんを自宅に送り届けた。

 おばあさんの帰りが遅いのを心配していた家族に事情を話し、お金は既に支払ったから心配しないでと伝えるとすごく感謝された。


 私にも分かってる。

 おばあさんを一人助けたところで根本的に改革しなければ問題は解決しないことは。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ