第50話 どこにでもダメ領主はいるようです
ジャッカルの失礼な視線はこの際忘れてあげるわよ。
私は心の広い伯爵令嬢ですから。
「それでジャッカルってこのワイン伯爵領のどこかの村で育ったの?」
「いえ。私が生まれ育ったのは別の領内です」
「ダイアモンド王国の中の別の領内ってこと?」
「はい。そうです」
これは別の領内のことを聞くチャンスだわ!
「それでそこはどんなところだったの?」
「私がいたのは小さい村で私の父親は農民だったんですけど、私は農民が嫌で成人するとすぐに王都まで行って王国軍に入りたいと言って王国軍のあるところまで行ったんですが……」
「成人してすぐって……12歳の頃ってこと?」
「はい。当時は王国軍が15歳以上じゃないと入れない規則になってることを知らなくて門前払いでした」
「え? 15歳以上じゃないと入れないの?」
「はい。そうなんです。領主の私軍だったら成人してれば入れるんですけど……」
そうか。王国軍は15歳以上って年齢制限があるのね。
私軍は成人してたら入れるのね。
「じゃあ、どうして自分の村のある領主の私軍に入らずワイン伯爵家の私軍になったの?」
「あまり大きな声では言えないんですが私の村のあった領主はあまり領民に気を配る人間ではなく領民に重税をかけては贅沢な暮らしをしていたので好きになれなかったんです」
「なるほどね」
典型的なダメ領主だったわけね。
国はその領主のやっていたこと知っていたのかしら?
「国王様はその領主が横暴なことやってるって知らなかったの?」
「その領主は宰相様の親戚にあたり、今の国王様は宰相様にほとんど政治のことを任せてますので気が付かないのかもしれないですね」
ふ~ん、国王にも問題ありか。
いわゆる宰相がこの国では実権を握っているってことかな。
「それでワイン伯爵家の私軍を希望したの?」
「実は……。最初からワイン伯爵家の私軍を希望したわけではなく、王都で王国軍に門前払いをされて所持金もつき、道端でうずくまっていたところをワイン伯爵様に声をかけていただいたんです」
「お父様に?」
「ええ。たまたま王宮への用事で王都にいたらしく、道端にうずくまってる私を見捨てておけなかったみたいで声をかけて私の事情を聞いたら、自分のところの私軍に入ればいいよって言ってくれて」
そうよね。ワイン伯爵ってそういう人間よね。
そういうところはワイン伯爵の魅力のあるところだと思うわ。
「なので私にとってはワイン伯爵様は命の恩人なのでこの命をワイン伯爵様に捧げると誓っています」
「そう。でもお父様のために命を粗末にしちゃだめよ。お父様は貴方が自分のために死んだらきっと大泣きするわ」
「そうですね。ワイン伯爵様を泣かせるようなことをしてはいけませんよね」
ジャッカルは真面目な顔で言う。
ワイン伯爵様、ここにも貴方を慕う味方がいるわよ。
ジャッカルのためにも良き統治者になってね。
そんな話をしているとだいぶ町の中心街に来た。
いろんなお店がある。
とりあえずお店の中でも見てみようかな。
私はまず本屋らしきところに入った。
店の中は本棚にギッシリと本が並んでいるがお客さんは3人程しかいない。
私は本棚の本を手に取って開いてみた。
やはり「日本語」で書かれている。
特に変わった本は無さそうだ。
だけど何でこんなにお客さんが少ないのかな。
私は本屋を出てジャッカルに聞いてみる。
「ねえ、ジャッカル。本ってあんまり売れない物なの?」
「ああ、それは領民全員が文字を読めるってわけではないですし、本は貴重なモノなんで値段が高いんですよ」
「え?そうなの? ワイン伯爵家にはたくさん本があったわよ」
「そりゃあ。伯爵家ですからお金を持ってますし……」
ああ、そうか。そりゃ、そうだわ。
自分が伯爵令嬢って普段は忘れてるから気付かなかったけど、腐ってもワイン伯爵家は領主貴族ですもんね。




