第49話 これでも日本では若いんです
私はジャッカルと約束した後にクリスの部屋を訪ねる。
クリスだけには明日お忍びで出かけることを伝えておきたかったのだ。
それに一日不在にするならそれをカモフラージュする協力者は必要だ。
「クリス。話があるんだけど」
扉をノックしながら声をかけると扉が開いた。
「アリサでしたか。どうぞ中へ」
「ありがとう」
私が中に入るとテーブルには紙が散乱していた。
「ごめん。何か作業中だった?」
「あ、たいしたことではありません。アリサの言っていた即応予備自衛官のことや契約書の義務化のために領民に通達する書類の下書きをしていたんです」
「そうなの? クリスも私の言うことを真剣に聞いてくれてありがとうね」
「いいえ、領民により豊かな生活をさせることは領主として当然ですから」
うう、その言葉日本の政治家たちにも聞かせてあげたいわね。
12歳の子が人の上に立つ者としてこんだけ頑張っているのよ。
自分の利益を追求したがる政治家たちに見習って欲しいわ。
「それで僕に何か用事でしたか?」
「実は……」
私は明日ジャッカルと町に出かける話をした。
クリスはやはりいい顔はしなかった。
「アリサが一人では危険です」
「一人じゃないわよ。ジャッカルも一緒よ。それにクリスを連れて行くとクリスの顔は領民は知ってるでしょ?」
「うっ……。確かにそうですが……」
クリスは自分も行くと言いたかったのだろう。
だから私は先にクリスは連れて行けない理由を話す。
だってさ。クリスみたいなイケメンはそうそういないから領民だってすぐに分かるはずよ。
「分かりました。でも無茶はしないでくださいね。留守中のことは父上と母上にはうまく隠しておきます」
「ありがとう! 助かるわ、クリス」
これで明日私のお忍びを邪魔する者はいないだろう。
私はその日は明日に備えて早くに就寝した。
次の日に私はジャッカルの待つ私軍のいる建物にやってくる。
ジャッカルは入り口で待っていて私を軍隊長室に連れて行き町娘の服を私に渡す。
私はそこで着替えて自分の髪をまとめて帽子を被る。
この世界では黒髪は目立つからだ。
でも黒髪が目立つなんて不思議な気分よね。
だけど確かに未だに黒髪の人に会ったことないし。
黒髪のおかげで美人だって言うならこの世界はちょろいわね。
イケメンかどうかで判断するお前もちょろいだろ。
私が軍隊長室を出るとジャッカルが軍服ではなく前に町で見かけた男性たちが着ているような服装で待っていた。
でも腰には剣をつけている。
「では出発しましょうか」
「ええ、行きましょう」
私とジャッカルは二人で町に向かった。
ジャッカルと二人で歩いていると私はふとジャッカルのことが気になった。
ジャッカルは見た目は30歳くらいだけど、結婚とかしてるのかな?
別にジャッカルに恋心を持っているわけではないがこの国の成人は12歳だ。
そう考えると30歳近くのジャッカルは普通に考えて結婚している可能性は高い。
「ねえ、ジャッカル。貴方は結婚しているの?」
「え? 私ですか?」
「そうよ。他に誰がいるのよ?」
私がそう言うとジャッカルは私から少し視線を逸らす。
「私は結婚はしてません。軍隊長なんて仕事をしていると危険なこともありますから女性の方が敬遠するでしょう」
「そうかしら? ジャッカルは充分「優良物件」だと思うけどな」
「優良物件ですか?」
「ええ。じゃあ、この国では皆何歳くらいで結婚するの?」
「そうですねえ。平民と貴族でだいぶ違いはありますが……」
ジャッカルはチラリと私を見る。
何よ? 私がなんかした?
「平民の男性は20代後半くらいで貴族の息子は20歳前後が多いですね。女性は平民も貴族も10代が多いです」
さっきの視線の意味が分かったわよ! 私は既に結婚適齢期過ぎてるって言いたかったのよね!




