第47話 この国にもモンスターがいました
「では即応予備自衛官制度についてはどうですか?」
「そうだね。これもとてもいい案だと思うよ。村の男手を確保しながら軍隊としての役割も果たせるし名案だと思う」
「そうですか。ではこれは軍隊長のジャッカルの意見も聞きつつ制度を早急に導入しましょう」
「ああ。それがいいだろう。王国軍のトップは王太子だから私に王国軍の軍人はどうこうできないが私軍は私の権限で出来るからね」
ワイン伯爵の言葉に私はこの国には二人の王子がいると以前ローズ夫人に聞いたのを思い出した。
そういえば王子が二人いるんだったわよね。
王太子が王国軍のトップなのか。
「お父様。この国には二人の王子様がいらっしゃるんですよね?」
「うん? ああ、双子の王子様がいるんだ」
え? 王子って双子なの?
私は日本にいた時の双子の弟たちのことを思い出した。
小さい頃は可愛かったが高校生にもなると弟たちは生意気になって私とも喧嘩することもあった。
でも私にとっては大事な弟たちだ。
「王子様って双子なんですか?」
「ああ、そうだよ。第一王子がブラント・ジュエル・ダイアモンド様で第二王子がゼラント・ジュエリー・ダイアモンド様だよ。お二人とも姿が似ているから私もどっちがどっちか分からないよ」
「……ブラント・ジュエル・ダイアモンド?……ゼラント・ジュエリー・ダイアモンド?」
私の脳裏にはあのゲームのあのモンスターの姿が浮かんだがその事を責めることは誰にもできまい。
最近は人の名前で驚くことはなかったがこの名前にはさすがに「キターーーーーー!!!!」って感じだわ。
ここで異世界らしくモンスター登場ですか!?
「すごい素敵なお名前ですね……」
「そうかな。普通だと思うけど。まあ、双子だし名前も似ているから私も間違えないように気をつけなくてはならないから大変だけどね」
ワイン伯爵は「ハハ……」と苦笑いをしている。
確かに双子で名前も似てたら臣下としては間違えないようにするのは大変だろう。
だが、私は久しぶりの人名での衝撃にすぐには立ち直れなかった。
これってネーミングセンスが無いってよりこの世界の神様は完全に遊んでるわよね?
そうじゃなかったらこんなモンスター王子の名前なんて思いつかないわよ!
一応、考えた末に出た名前なんですが。
まったく逆にそんな名前を付けられた王子様たちに同情するわ。
私はまともな名前で良かったわ。
いずれそのモンスター王子とも会ってみたいが私が王子様に会うことはないわね。
さすがに私も王子様でもモンスター王子様は願い下げよ。
「では次の子供たちの義務教育の件はどうですか?」
「教育関係のことは国が決めることになっているから私にはその権限は残念ながらないんだよ」
ワイン伯爵は申し訳なさそうに言う。
私はそう言われて法律書を確認すると確かに「教育制度」に関することは国王が決定することになっている条文があった。
これではワイン伯爵の権限では「義務教育」を制度化することはできない。
う~む、いずれはワイン伯爵に国王様へ進言してもらおうかしら?
とにかく今の法律では対応は難しそうだ。
未来の人材確保は大事なんだけどなあ。




